第22話 一学期終業式

あれから冬野さんには毎日弁当を作ってもらっている。料理のレパートリーは豊富でいつも違う具が入っており毎日の楽しみとなっていた。そしてどの料理もうまいのだ。


負担になっていないか心配になって一度聞いてみたのだが冬野さんも冬野さんで楽しんでいるらしい。


そうして今日で一学期が終わる。思えばあっという間だったような気がする。冬野さんのお弁当ともしばしのお別れだ。


「おはよう立花くん」


「おはよう冬野さん」


あれから毎日冬野さんと一緒に登校している。


「立花くん期末テストは大丈夫だった?」と心配そうな顔をする冬野さん。


「成績下がりすぎて先生に少し言われたな....」


期末テストは冬野さんが負けたくないと勝負は無しになった。当然僕は一夜漬けに戻ったので目に見えて順位が下がった。


今回は多分勝負をしていても勝てる気はしなかった。


「そっか....じゃあやっぱり勝負した方が良かったかな?」とニヤリとする冬野さん。


「やめてくれそこまでモチベは続かん」


「そっか」と笑う冬野さん。


「もう一学期終わるんだね。何だか今までになく早かった気がする」と冬野さんは続けた。


「だな...」


そんな話しをしている間に学校についた。


席に荷物を置いたと同時に綾香がこちらに来た。


「おはよう千里」


「おはよう綾香」


「明日から夏休みだね。楽しみ〜」と嬉しそうな綾香。


「そうだね...」と冬野さんが言う。


「あれ?あんまり嬉しそうじゃないね」と綾香が言った。


「嬉しいよ....でも家だとずっと一人だから....」と寂しそうな顔をする冬野さん。


すると綾香がニヤリとした。


なんか嫌な予感がするな....。と僕は思った。


そしてその予感は的中した。


「それなら毎日和樹家に呼んだら?」


「───えぇっ!」と言い顔を赤くする冬野さん。


何言ってんだこいつは....。


「冗談だよ」と笑う綾香。


「もぉー変なこと言わないでよ」と頬膨らませる冬野さん。


「ごめんごめん。でも千里安心して夏休みは絶対楽しくなるよ」と綾香。


「どうして分かるの?」と首傾げる冬野さん。


「だって私が千里と遊ぶもん」と言い笑顔を見せる綾香。


すると冬野さんは驚きで目を見開いた後「ありがと....」と言い嬉しそうに微笑んだ


それを見て僕もつられて微笑んでいた。


「お前ら何の話してんだ?」と健吾が教室に入ってきた。


「えぇー教えない」おニヤリ顔をする綾香。


「和樹何の話してたんだ」と綾香をスルーする健吾。


ついに健吾も綾香の使い方を理解したようだ。


「心配するな健吾には関係ない事だ」


「いや何で教えてくんないの....?」と疑問そうな顔をする健吾。


「だって私の話しだもの」とワントーン低い声になり不気味な笑みを浮かべる冬野さん。


「───えっ....」と青ざめる健吾。


「な、なんだそんな事か....そ、それじゃあまた後でな」と言い逃げるように僕らから去っていった。


「ふふっ」と不気味に笑う冬野さん。


冬野さんは健吾のリアクションが面白いからか少し圧のある話し方をする。健吾も遊ばれてる事はわかっているが冬野さんのあの笑みが意外にトラウマになっており結構ちゃんと怖がっている....。


僕らもそれが面白くて乗ってしまっているところはある。



終業式が終わり下校の時間となった。


今日は部活もないので全員揃って帰ることになった。


五人揃って学校の門を出る。


「明日から夏休み何すっかなぁ」と健吾。


「お前部活あるんじゃねぇのか?」と悠真が言った。


すると健吾がため息を着き肩を落とした。


「悠真それを言わんでくれよ....」


「健吾、部活嫌いなのか?」


僕は気になりそう言った。


「嫌いでは無いけどよ部活が無いお盆に溜まりに溜まった宿題に追われる日々になるのがやなんだよ」と悲しそうな顔をする健吾。


「いや土日とかあるじゃん」と綾香がツッコミをいれる。


「土日は部活で溜まった疲れを癒すために使わなきゃいけないんだ」と健吾。


「要するにサボってるんだろ」


僕がそう言うと健吾は体をビクつかせまさに図星だった。


「部活もしてない和樹にはい、言われたくないなぁ」と動揺して声が少し震える健吾。


「確かに僕は家でずっとゴロゴロしてるな。お盆含めて」と僕はニヤリとした。


「───くっ、俺.....夏休みだけ部活やめよっかな....」とそう言う健吾。なぜか本気で言っているように思えた。


「でも確かにどっか遊びに行きたいってのはあるな。海とかプールとかよ」と悠真が言った。


「海....!」と冬野さんが反応した。


「冬野さん行きたい?」と僕は尋ねた。


「うん、行ってみたい....」と珍しく素直にそう言った冬野さん。


「なら行こうよ!!」と目を輝かせる綾香。


「で、でも私水着とか持ってない.....」と冬野さん。


「確かに私も持ってないかも....」と綾香。


「綾香は中学の時ので良いだろ。何も変わってねぇしな」とニヤリ顔する悠真。


悠真が見ていたのは綾香の胸だった。


「どこ見てんのよ変態」と頬膨らませる綾香。


「見るもんねぇじゃねぇか」と笑う悠真。


「あるしっ───!」と言い悠真をパンチをする。


「痛い痛い」と嘘っぽく言う悠真。


「水着無いなら明日買いに行くか?ちょうど土曜だし」


このままだと話が進まない気がしたのでので僕はそう提案した。


「おお、良いじゃねぇか」と綾香のパンチを受けながらそう言う悠真。


「俺も賛成....」と少し元気のない健吾。


「じゃあ私も」と嬉しそうな冬野さん。


「私も行くよ」と少し不機嫌そうな綾香。


こうして夏休み最初の予定が決まった。


この時は知らなかったこの夏休みが忘れられないものになるとは....。



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読んで頂きありがとうございます。


これにて一章完結です。


これからも読んで頂けると嬉しいです(*^^*)





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