第20話 冬野さんの手作り料理
僕と冬野さんは一緒に学校を出て少し離れたスーパーまで向かった。
「とりあえず明日何作るか決めないと.....」と悩む冬野さん。
すると冬野さんが僕の方を見てこう言った。
「立花くんは何入れて欲しい?」
何と言われてもな.....どうしよう。正直冬野さんの作ったやつなら何でも良いんだよなあ.....。と欲丸出しの僕。
「すぐには出てこないなぁ....ごめん」
僕はそう返した。
「そっか....」とまた悩む顔をする冬野さん。
「あ、それなら立花くんの好きな食べ物教えてよ。お弁当に入れれる範囲で」と冬野さん。
弁当に入れれて好きなものか....。それなら───。
「ハンバーグとかはどう?」
「ハンバーグ!良いねぇ。じゃあ立花くんのために入れたげる」とニヤリ顔で言う冬野さん。
僕のため....。なんだか少しむず痒かった。
「あ、ありがとう....」
少し恥ずかしがってるのが顔に出てたのか冬野さんがクスッと笑った。
「そうだ、綾香とか他のみんなが苦手なものとか知ってる?」と冬野さん。
「綾香も悠真も嫌いなものはなかったと思うよ。健吾は....わからん」
多分大丈夫だろう....。
「そっかそれじゃあ行くよ」とカートを取り出す冬野さん。
「カート持つよ」
僕は冬野さんにカートをもらう。
「ありがと」と微笑む冬野さん。
そうしてカートを押しスーパー内を回る。
その間「後は卵焼きと....」と他の副菜たちを決めていく冬野さん。
そうしてどんどんとカートに食材を詰めていく。
「ひき肉と....卵と....後それとこれと....」とカートの中を確認する冬野さん。
こうしてると冬野さんはまるでお嫁さんみたいだ....。べ、別に他意は無い....無いからな。
「よし、これで全部揃ったしレジ行こっか」と冬野さん。
「おっけー」
僕たちはレジへと向かい会計を済ませた。
レジ袋に食材を詰める。袋を二枚つかうほどにそこそこ買った。
「それも持つよ」
冬野さんが片方の袋を持とうとしてたので僕はそう言った。
「大丈夫だよそんなに重くないし」と遠慮する冬野さん。
「冬野さんにはお弁当作ってもらうからさこれぐらいさせてよ」
「.....わかった。じゃあお願いね」と少し悩んだ末もう片方も僕に渡してくれた。
「じゃあ帰ろっか」と冬野さん。
「うん...」
僕達はスーパーを出て帰路に着く。
「そういえばさ冬野さん味見して欲しいって言ってたけど....」
「そうだったね。それじゃあ....」と冬野が何か言おうとした瞬間、彼女は顔をハッとさせた。
「どうかした?」と僕は言った。
(今思えば味見してもらうなら私の家に来てもらわなきゃ行けないじゃん....。全く頭に無かった....。ど、どうしよう家ちらかってないかな?それより立花くん来てくれるかな....?)と冬野さんの頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
すると冬野さんが急に頬赤らめ口を開いた。
「わ、私の家来てくれる?」
つ、ついに来た.....。何ドキドキしてるだ僕は。何も無いただ味見しに行くだけだ....。
僕は小さくため息をつき、落ち着いた後口を開いた。。
「わかった....」
そうしてマンションに着いた僕たちはエレベーターに乗り同じ階に降りる。
冬野さんの家は端の方になった。
そうして僕達はドアの前に立つ。
「立花くんごめんちょっと待ってて....部屋散らかってないか見てくる」と言い先に入る冬野さん。
「わかった」
もしかしてさっき急に顔赤くなったのって....冬野さん家に呼ぶこと忘れてたんじゃないか、そう思った。
少ししてドアが開き「お待たせ」と申し訳なさそうな顔をする冬野さん。
「お邪魔します」
僕は冬野さんの部屋に入った。
冬野さんについて行きリビングに入る。
小さいテーブルにソファー後はテレビとその他は余り物は置いておらず自分の部屋より広く感じた。
冬野さんが何かを察したのか
「何にもないでしょ」と笑いながら言った。
「一人暮らしならこんなもんじゃない」
「私リビングあんまり使って無いんだよね。向こうの一人部屋でだいたい居るんだ」と冬野さん。
「一人だとやっぱりこの広さは寂しく感じる?」
「うん、私はもっと狭い家でよかったんだけどなぁ....」と本音を漏らす冬野さん。
すると顔をハッとさせ。
「立たせたままでごめんね」と言った。
「全然良いよ」
「お茶持ってくるから適当に座ってて」と言い隣にあるキッチンに入る冬野さん。
「ありがとう」
僕はそう言いソファーに座った。
「はい」と言いテーブルにお茶を置いた。
「ありがとう」
「じゃあしばらくここに座ってて料理作ってくる」と言い再びキッチンに戻る冬野さん。
「わかった」
30分ほどたちだんだんリビングにお腹のすく良い香りが鼻に入ってきた。
「出来たよ」と言い料理を運んでくる冬野さん。
そうしてテーブルに並べていく。
「美味しそう」
僕は素直にそう思った。
卵焼きに唐揚げそしてサラダが置かれている。
味見のはずだったのだが普通にご飯を作ってくれていた。
あれ?僕はある事を思い出した。
「冬野さんハンバーグは良いの?」
「うん、ハンバーグは明日のお楽しみ」とニヤリ顔をする冬野さん。
(ほんとはひき肉の量が足りないのわかって作れなかっただけなんだけど....ハンバーグなら大丈夫だよね....)と冬野さんは少し不安になっていた。
そんな事を知らない僕はハンバーグは自信あるんだと思っていた。
「そっか。楽しみにしとくよ」
僕はそう言った後「それじゃあ食べるよ」と言った。
「どうぞ」と言い強い眼差しで僕を見始める冬野さん。
僕は唐揚げを箸でつまみ口へと運ぶ。
───つ!!
「うまっ!」と思わず大きい声が出てしまった。
「ほんと!!」と目を輝かせる冬野さん。
「うん、めっちゃうまいよ」
「そっか。良かった....」と安堵の息を吐き嬉しそうな顔をする冬野さん。
冬野さんやっぱり料理上手なんだなぁ。
卵焼きもすごく美味しかった。
どんどんと箸が進むてる僕を見ていた冬野さんが口を開いた。
「ご飯いる?」
「ご飯もあるの?」
「うん、自分の夕ご飯のためについでに炊いてたの多分炊き上がってると思うけど」と冬野さん。
でもさすがに悪いような....。でも今ものすごく米が食いたい───!僕は心の中で葛藤していた。
悩む顔をする僕を見て冬野さんがこう言った。
「遠慮しないで良いんだよ。いっつもご飯余っちゃうから食べて欲しいんだ」
「じゃあお願い....」
「うん、それじゃあ入れてくるね」と言いキッチンへと走っていく冬野さん。
ほんとに至れり尽くせりだなぁ。冬野さんは絶対良い奥さんになるなとこの時確信した。
そうして米も加わり僕は一瞬にして全てを平らげた。
お腹いっぱい....。
「冬野さんすっごく美味しかったよ」
「ありがと」と言い笑顔を見せる冬野さん。
これは明日のお弁当もものすごく楽しみだ。
「それじゃあ僕はそろそろ帰るよ」
「うん、今日はありがとね」と冬野さん。
「こちらこそありがと。冬野さんの料理僕すごい気に入ったよ」
すると少し恥ずかしそうにしながら「ありがとう」と言う冬野さん。
そうして僕は冬野さんの家を出た。
「それじゃあまたね冬野さん。明日楽しみにしてるよ」
「うん....」と言ったあと冬野さんは何か言いたげな顔をした。
「ね、ねぇ立花くん明日一緒に学校行かない?」と冬野さん急な誘いを受けた。
「良いけど....」
どういう心境の変化だ?と僕は疑問に思った。
「私これからはもっとクラスに馴染めるようになりたいって思うんだ。ずっと過去を引きずる訳にも行かないからさ。だったらもう何も隠したくないんだ」と真剣な顔をする冬野さん。
「そっか。じゃあ一緒に行こっか」
冬野さんが変わりたいと思うなら僕はそれを応援したいそう思う。
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