第13話 初めてのデート? 2/2

僕達はイルカショーへと来た。


冬野さんが前の方から見たい、というので水が飛んで来ないさそうなギリギリのところに座る事にした。


「イルカショー見てみたかったんだぁ」とワクワクしている冬野さん。


今の彼女はまるで好奇心旺盛な小さな子供のようだ。


『それではイルカショースタートです』と飼育員の人達が出てきてショーが始まった。


三頭のイルカが挨拶をするかのように手を振る。


「うわぁー!!」と手を振る冬野さん。まだまだこれからだというのにすでにテンションが高い。


そんなに楽しみだったんだ。と僕は微笑ましく思った。


そうして飼育員さんがイルカの紹介をした。


『右側からレイちゃん、カイトくん、ケイくんでーす!』


そうして本格的にショーが始まった。


『レイちゃんとケイくんのジャンプです!!』


水槽から飛び出し空中で一回転する二頭のイルカたち。


「すごーい!!」と目を輝かせる冬野さん。


やっぱイルカショーはいつ見てもすごく良いなぁ。僕もそう思った。


冬野さんはずっと楽しそうな様子で僕はなんだが嬉しい気持ちになった。



そうしてイルカショーも終盤になった時だった。


「立花くん今日誘ってくれてありがと水族館がこんなに楽しいところとは思わなかったよ」と唐突に笑顔でそう言う冬野さん。


『カイトくんの力強いジャンプです!』


「そっか。それなら....」と僕が話していると


「立花くん....!」と前を指さした。


急に冬野さんの顔色が変わり何か焦ってるようだった。


前....?僕は反射的に前を向いた。


───っえ.....。僕は唖然とした。


視界いっぱいに広がる水。まるで波が押し寄せて来ているようだった。


バシャァァン!!


僕達は逃げる暇もなくその水を被った。


災厄だ.....。全身ずぶ濡れになってしまった。


すると冬野さんが急に笑いだした。


「こんなに水来るんだね。びちゃびちゃだよ」と言う冬野さん。


どうやら変なツボに入ったらしい。


僕は冬野さんの方を見て微笑んだ....。


───っ!!すぐさま僕は彼女から視線を逸らした。


す、透けてる───。


その様子に違和感を覚えた冬野さんが俯く。


「うわぁっ!」と言い手で体を覆い屈む冬野さん。


(見られた!絶対見られた....)と顔を真っ赤にしてそう思う冬野さん。


「立花くん....見た?」と赤くなった頬膨らます冬野さん。


「み、見てないよ.....」と僕は彼女を横目で見ながらそう言った。


「変態...」とまるで犯罪者を見るような目でそう言う冬野さん。


仕方ないだろ僕も男なんだ。と僕は言いたくなった。


「タオル貰いに行こっか」


「そうだね」と冬野さん。


僕は出来るだけ彼女を見ないように歩いた。


そうしてタオルで水を吹き大分乾いた後冬野さんが僕にこう言った。


「ごめんね。前の席に行きたいって言って」と申し訳なさそうな顔をする冬野さん。


「良いよ別に。僕もどこまで水くるかわかってなかったからさ。そんな事よりお土産でも買いに行こうよ」


僕はそう提案した。


「うん!ありがと立花くん」と笑顔になる冬野さん。


僕達はお土産売り場へと向かった。


「あぁ!イルカのぬいぐるみ!」と言って僕にそのぬいぐるみを見せつける冬野さん。


「イルカショーはどうだった?」


僕はそれを聞いてみたくなった。


「すごく良かったよ。また見たいなぁ〜」と本音をこぼす冬野さん。


どうやら彼女は水族館を気に入ったらしい。


そうして冬野さんと少し離れ家に買って帰るものを探していた時だ。


冬野さんがイルカのキーホルダーを

凝視していた。


欲しいのかなぁ。と僕は思ったが彼女は少ししてその場を離れた。


僕は彼女の見ていたキーホルダーの方へと行った。


冬野さんこういうの好きなのか。と少しの間そのキーホルダーを見ていた。


(立花くんあれ欲しいのかなぁ)


と冬野さんに見られていたことに僕は気が付かなかった。


そうして僕はお土産を買うためレジに行った。


すると店員の人が「プレゼント用のお包ができますがどうしますか?」と言った。


「大丈夫です」


ま、家族のだしな....。


レジがすみ一足先に店の外にいた冬野さんと合流した。


「お待たせ」


「ごめん立花くん私トイレ行ってくるよ」と冬野さん。


「あ、僕も行きたい」


すると冬野さんが少し驚いた顔をした気がした....。


僕はトイレに入った後少しして外へ出た。僕は最初からトイレに行く気はなかったのだ。


まさか冬野さんと来るとは.....。

あんまり時間ないな。


僕は急ぎ足で店へと戻りイルカのキーホルダーを手に取った。


ピンク色の方がいいか。


そう僕は冬野さんにこれを買ってあげようと思っていたのだ。


一緒にきてもらったお礼であげるのはいいだろう。何となくプレゼントとするのは少し恥ずかしかったのだ。


僕はレジへと急いだ。


「すみませんこれ包んでください」

「すみませんこれ包んでもらえませんか」


隣の人と言ったことが被った。ただ何か引っかかるところがあった。


聞き覚えのある声がしたのだ。


僕はその声の方へと視線を向ける。


「冬野さん.....?」


隣のレジにいたのは冬野さんだったのだ。


「た、立花くん何でここに」と驚いた顔をする冬野さん。


もしかして何か買い忘れたのかな?と僕は思った。


そうして僕達は揃って店を出た。


「立花くんトイレ行ったんじゃなかったの?」と頬膨らませる冬野さん。


「それは冬野さんもじゃん」と僕は言い返す。


「それで何買ったの?」とそわそわする冬野さん。


「冬野さんこそ何買ったんだ?」


お互いに睨み合う。


すると冬野さんが急に目を泳がせて


「はい....」と僕に買ったものを渡してきた。


───っえ....。僕に


「立花くんのください」と言う冬野さん。


「───えっ....」


何でわかったんだ....。


「わかった....」僕は冬野さんに渡した。


「やっぱり私のだったんだね」とニヤつく冬野さん。


「冬野さんも僕に何買ったんだ」と言い返した。


そうして袋を開け中身を確認した。


───これ....。中に入っていたのはなんと同じイルカのキーホルダーだった。色は青色だ。


僕は冬野さんの方に視線を向ける。


冬野さんも驚き顔を上げたので僕達はお互いに目が合った。


同じの.....しかも色違い。


こんな偶然あるか?と僕は少し頬が熱くなった。


「な....何で同じ....」と顔を真っ赤にして言う冬野さん。


「いや、冬野さんこれみてたから欲しいのかと思って....違った?」


「確かに欲しかったけど....もぉーだからあの時立花くん見てたんだ」とあたふたする冬野さん。


「見てたって...?」


「立花くんこのキーホルダー手に取ってずっと見てたから欲しいのかと思って....」


まさかの冬野さんも同じことを思っていたらしい。


お互いに恥ずかしさが込み上げ少しの間話せなくなってしまった。


どうするこの状況───。

僕は頭を抱えた。


すると冬野さんがキーホルダーを取り自分のカバンに付け始めた。


「ど、どうかな....?」とカバンを僕に見せる冬野さん。


「う、うんすごく良いと思う」


気に入ってくれたなら良かった。


「ありがとう冬野さん大事にするよ」


僕はそう言いカバンの中にキーホルダーをなおそうとした。


すると冬野さんがその手を取り


「立花くんもつ、付けなさい....」と恥ずかしがりながらそう命令してきた。


「───っえ!」僕は思わず声が出た。


お揃いのキーホルダーをつけるとかまるでカップルだ。


胸がドキッとし鼓動の音が酷くうるさかった。


「いや僕は良いよ...」とそう言ってしまった。


「ダメだよ、付けて」と冬野さんは引く気がないらしい。


(何やってんだろ私───!でももう引けないよぉ.....)と冬野さんは勢いでやってしまい引けなくなっていたのだ。僕がそれを知ることは無かったけど。


僕は仕方なく付けることにした....。


「お、お揃いだね...」と恥ずかしさからか震えた声になる冬野さん。


「う、うんそうだな」と僕は返す。


これは誰にも見せられない....。


「それじゃあそろそろ帰ろっか」と僕は提案する。


「うん、そうだね」と冬野さん。


僕達は少しの恥ずかしさもありながら一緒に話しながら帰った。


エレベーターに乗った時冬野さんがこうな事を言った。


「今日はありがとね誘ってくれて」


「僕も来てくれて嬉しかったよ」


「そんなの当たり前だよ....」と小さく呟く冬野さん。


「私、ずっと立花くんと遊びに行きたかったから」と満面の笑みの僕へと向ける冬野さん。


「───え....」


心臓の鼓動が急に大きくなった。


「また遊びに行こうよ。私、立花くんといるとすごく心地良いんだ」と笑顔の冬野さん。


「.......」


僕はその言葉に何も返せなかった。

嬉しくて恥ずかしくて、胸が苦しくて声が出なかった。


「それじゃあね立花くん」


笑顔でそう言いエレベーターを出る冬野さん。


「うん、またね....」


エレベーターが閉まり上へと上がり始める。


「はぁー....その笑顔は反則だ...」と僕は一人呟いた。





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