第12話 初めてのデート? 1/2
僕はテストで冬野さんに勝つことができたのだが......。
頼み事が何も思い浮かばず今ものすごく困っている。
放課後に頬を膨らませて拗ねていた冬野さんに明日までに決めてと言われてしまいかれこれ数十分、必死になって考えているのだ。
何か奢ってもらうのも違うような。駄目だ何も思い浮かばない.....。やっぱり無しってことに....。
いやそれだと勝負じゃないし冬野さんにもなんか悪いしなぁ。
そんな時あることが急に脳裏に浮かんだ。
『デートとかしないのか』と悠真から送られてきたことだ。
デート....いや一緒に出かけるくらいなら.....。
でもどこに行けば良いかだよなぁ〜。
「動物より魚が好きか....」僕はあの意味のわからない冬野さんの言葉を思い出し小さく呟やいた。
水族館とかならいいかな.....。
ちょっと無理がなるが他に思い浮かばないしこれにしよ。
別に下心とか無いし....勝者の権利だし。
僕はそんなことを思いながらスマホを取り『遊びに行こう』と冬野さんに送った。
すると送った瞬間に既読がつき『わかった』と返ってきた。
監視されてたのか.....?と思うほどに。
『いつなら空いてる?』と僕は送った。
『明日行こう』と冬野さんから返ってきた。
え、明日!流石にそれは無いと思っていたので僕は驚いてしまった。
『良いけど....』
『良いけど?』と冬野さん。
いやもう良いや....。
『何でもない。じゃあ明日行こう』と僕は送った。
『うん!』と冬野さんは返してきた。
ま、嫌ではないみたいだし良いか....。
私服の冬野さんかぁ....。───あ、いやいや下心は無しだ。これはお出かけなのだから。
※
そうして約束の日となり僕達はお昼ごろにマンションの前で待ち合わせにした。
僕は冬野さんが来るより早くにおり彼女を待った。
数分後冬野さんが出てきた。
「ごめんお待たせ」と言う冬野さん。
「いや大丈夫.....」
彼女の私服姿に僕は度肝を抜かれた。
『綺麗』その言葉がとてつもなく似合うほどに冬野さんはすごく大人びて見えた。
「立花くん大丈夫?」と心配そうな顔で覗き込んでくる冬野さん。
「───っあ、ごめんぼぉーっとしてた」
やべっ、ちょっと見惚れてた....。
「そっか。じゃあ行こ」と歩き出す冬野さん。
「そうだね」僕も続いて歩き出す。
歩いてる途中冬野さんがこんなことを聞いてきた。
「立花くんど、どう?」と自分を服装を見せてくる冬野さん。
服を褒めて欲しいのか.....。
「う、うん似合ってると思うよ」
僕は何故か恥ずかしいしくて冬野さんに視線を逸らしそう言った。
「ほんと?」と頬を膨らませる冬野さん。
僕は勇気を振り絞り冬野さんの目を見て
「ほんとだって」と言った。
女子の服褒めるのってこんなに恥ずかしいのか....。
「あ、ありがとう」と頬を少し赤らめる冬野さん。
「ね、ねぇ今日はどこ行くんだっけ?」と少し声を大きくして言う冬野さん。
きっとこの雰囲気を変えようとしているのだろう。
「あ、えっと水族館」
「水族館....!!」と目を輝かせる冬野さん。
「行ったことないの?」
「うん、私あんまりそういうとこ行ったことないんだ」と冬野さん。
「どうして?」
「親はあんまり家にいる人たちじゃ無かったから私はいつも一人で」と少し寂しそうな声で言う冬野さん。
「そうなんだ....」
「だから遊びに誘ってくれて嬉しいんだぁ」と笑顔になる冬野さん。
「それなら良かったよ」
※
電車を乗り継ぎ目的地である水族館についたのたが....。
「カップルチケットというのがあるのですがいかがでしょうか?」と受け付けの女性がそう言った。
何とカップルだと言えば少し安くなるらしい。
僕は冬野さんにどうする?とアイコンタクトを取った。
すると冬野さんは僕に近づき....。
「カ、カップルです」と恥ずかしそうに言った。
ち、近い───!!これはそういう意味じゃない....ただ安くなるからだ。僕はそう心で叫んだ。
冬野さんのおかげで安くチケットを買う事が出来僕達は水族館の中へと入った。
「ご、ごめんね」と目を泳がせながらそう言う冬野さん。
「な、何が?」
何となく謝っている理由は分かるが僕はあえて知らないふりをした。
「そ、そのカップルって.....」と顔を赤くする冬野さん。
「気にしないで。安く入るためだってわかってるからさ」
「あ、ありがとう.....」
だめだ冬野さんが恥ずかしそうにしていると僕もなんかむず痒い....。
「冬野さんそろそろ行こっか」
「あ、そうだね」
何とかこの場から離れることが出来た。
水族館に入り最初に待ち構えていたのは大きな水槽だった。
それを見て「うわぁ....」と目を輝かせる冬野さん。
久しぶりに来たけどやっぱすごいなぁ。
「すごく綺麗だね」と微笑む冬野さん。
「だな」
しばらくしてここを離れ他のところも見始めたのだが....。
何だこの視線は....。
周りにいる人達が魚そっちのけで僕達、いや冬野さんを見ているのだ。
そういや学校だと氷の女王とか言われてるからみんな彼女を見ようとしなかったけど今の彼女は美人すぎる女子高生だ。
何だか落ち着かないな。僕はそんなことを思っていたが当の本人は魚に夢中で全く気に求めていなかった。
ま、水族館を気に入ってくれたなら良いけど
「クマノミだ」と小さな水槽を覗き見る冬野さん。
すると手を縦に振り僕を呼んできた。
僕は冬野さんに近づきいた。
「立花くんもあそこ見て」と冬野さんが指を指す。
「どこ?」
僕は極力冬野さんに近づかないよう注意して指さす方を見る。
「そこからじゃ見えないよ。もっと近くで」と冬野さんが場所を開けてくれた。
───ち、近い....。すぐ隣に冬野さんがおり魚に集中する事が出来ない。
「ほら見てあそこ」と何も気にせずまた指をさす冬野さん。
僕は指さす方を向く。
そこにはイソギンチャクの間をくぐる一匹のクマノミがいた。
「他には居ないのかな」と水槽を探る冬野さん。
あれ?冬野さんってこういうの気にしないタイプだった?
そう思うほど躊躇なく近づいてくる冬野さん。
心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
すると冬野さんが....。
「居た!」と言いその方へと勢い良く体を動かす。
「───いてっ!」
「痛た....」
その勢いのまま冬野さんの頭が僕にぶつかった。
「ご、ごめんね」と頭を抑えながら謝る冬野さん。
「うん、大丈夫....」
びっくりした....。
そうして何も無かったかのようにまた二人で水槽を覗く。
するとさっきと違い冬野さんが僕の方をちらちらと見てきていた。
「どうかした?」
僕がそう聞くと冬野さんが少し顔を赤くして
「ち、近い....」と言った。
「ご、ごめん」と考える寄り先に冬野さんから離れた。
冬野さんから来てって言ってたんだけどなぁ。
「そ、そろそろ行こっか」と居ずらくなったのかそう言う冬野さん。
「そうだな...」
僕はそれに賛成した。
そうしてしばらく歩いていると
「あっ、あそこにペンギンがいるみたいだよ」と僕の服を引っ張る冬野さん。
「行ってみるか」
「うん!」と笑顔を見せる冬野さん。
ペンギンエリアを眺めていると冬野さんがある一匹のペンギンを指さした。
「ねぇあれって赤ちゃんかな?」と冬野さん。
その目線の先にいたのは周りのペンギンより一回りも二回りも小さいペンギンがいた。
「赤ちゃんかもな」
「かわいいなぁ〜」と優しく微笑む冬野さん。
そうして一段落付き僕達は何か食べる事にした。
「何にする?」と周りをキョロキョロする冬野さん。
「そうだなぁ」
僕も周りをキョロキョロしていると....。
『カメのメロンパン』というのが売っているのを見つけた。
これ良さそう....。
「冬野さんこれどうかな」
僕は指を差し彼女に提案する。
すると目を輝かせ「それにしよ」と言う冬野さん。
そうして二つカメのメロンパンを買った。
「か、かわいい〜」と冬野さん。
今日ずっとかわいいって言ってる気がするな....。
僕はパンをかじった───その瞬間冬野さんは僕の方を見て
「食べるの勿体ないね」と言った。
あ───。僕は頭から容赦なく丸かじりしていた。
顔をハッとさせ固まる冬野さん。
「何か、ごめん....」
(あ、頭から.....)と冬野さんは心の中でそう呟いた。
「き、気にしないで....」
そう言った後冬野さんはあ、と何か思いついた顔になった。
「写真撮ってよ」そう言いパンを顔に近づけポーズを撮る冬野さん。
「良いよ」僕は自分のスマホを取り出しカメラを彼女に向ける。
カメラに映る彼女はすごく笑顔だ。
絵になるなぁ.....。そんなことを思った。
「ハイチーズ」
僕はそう言い写真を撮った。
「見せて見せて」と良い僕の目の前まで来る冬野さん。
───ち、近!たまに冬野さん距離感バグるんだよなぁ。心臓に悪い....。
「ありがと立花くん」と言い満面の笑みを僕に見せる冬野さん。
───っ!!
「あ、後で送るよ」
僕は冬野さんから目を逸らしてそう言った。
「うん!」と冬野さん。
冬野さんといるとなぜか色んなことが楽しいと感じる。彼女と仲良くなれて僕は本当に良かったと思う。
そうしてパンを食べ終わった後。放送が流れた。
『間もなくイルカショーが始まります....』
イルカショーか....。
すると冬野さんが僕の腕を掴み歩き出す。
「立花くん行こっか」と笑顔でそう言う冬野さん。
「わかった」と僕は微笑み返した。
どうやらこのデー.....。お出かけはまだ続くらしい。
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