第9話 新たな友達と近づく中間テスト
朝、綾香に僕と冬野さんとが話している写真を見せられ一時はどうなるかと思ったがどうやら冬野さんと友達になりたいらしい....。
冬野さんが承諾するか分からないが今日の放課後に言うだけ言ってやることにした。
───すると以外にも冬野さんは「もちろん良いよ」と即決した。
冬野さん綾香は大丈夫なのか。
「じゃあ知らせとくよ。明日から話しかけてくると思うからそれだけよろしく」
「はい!」と嬉しそうな冬野さん。きっと本当はみんなと仲良くしたいのだろう。
彼女も変わりたいと思い始めてるんじゃないかそう思った。
※
そうして次の日朝、早速綾香が冬野さんに話しかけていた。
「おはよう冬野さん」とにこやかな笑顔で話しかける綾香。
一方で不機嫌な顔でしばらく黙る冬野さん。
緊張してるのかな....。
「おはよう」と冬野さんはしばらくしてからそう返した。
どうやら綾香にも素っ気ない態度で接するつもりらしい。
女子同士ならもう少しマシと思っていたのだが....。
すると綾香が僕の方をじっと見つめていた。
まるで(ほんとに良いよって言ったの?)と言いたそうな目だった。
その後も綾香はずっと話しかけていたが冬野さんは一応返すが全て素っ気なかった。
放課後。
「じゃあ二人ともバイバイ」と手を振る綾香。
放課後は残らないのか....。と僕は思った。
「じゃあな」
すると冬野さんが
「ま、またね....」と氷の女王の時の口調と素の自分の時の口調が合わさったような声を出した。顔は頑張って笑顔にしようとしているのか引きつっていた。
「うん!またね千里」と満面の笑みでそう言い教室を出た綾香。
「千里....」と驚いた顔でそう呟き小さく微笑む冬野さん。
「どう冬野さん?」僕は冬野さんにそう問いかけた。
「すごくかわいくて笑顔が素敵な人。友達になれたらいいなぁ.....」と本音を漏らす冬野さん。
「なれるよ。と言うか綾香は欲しいものはゲットするまで諦めないタイプだから」
「そっか」と安心した顔をする冬野さん。
こうして彼女にまた一人話し相手が出来た。
※
あれから一ヶ月ほど立ち冬野さんも綾香になれ口調は変わらないが普通に会話出来るようにはなっていた。
「私家で犬飼ってるんだ。すっごくかわいいんだよ。千里は何か飼ってる?」といつものように元気な綾香。
「私は何も飼ってないわ」と冬野さん。
「和樹は何か飼ってたんだっけ?」と綾香が話を振ってきた。
「姉さんが居た時は金魚飼ってたな。夏祭りに良く取ってきてたから」
「夏祭り....」と小さく呟く冬野さん。
「千里もしかして行きたい?」とその様子に気づいた綾香が言った。
「うん、少し....」と顔を柔らかくして言う冬野さん。
「じゃあ夏休みの時一緒に行こうよ」と綾香。
「良いの?」と驚いた顔をする冬野さん。
「もちろんだよ。金魚たくさん取っちゃお」
「花火じゃないのかよ」と僕は思わずツッコミをいれてた。
「....うん、金魚たくさん取りたい」と呟く冬野さん。
「───えっ!」と冬野さんがその流れに乗ってきたことに驚いてしまった。
「動物より魚の方が好きだわ」とよく分からないことを口にする冬野さん。
「なら行こっか....。もちろん和樹も来るよね」とニヤリ顔で見てくる綾香。
「いや僕は.....」
「来ないの?」と棘のある口調で言う冬野さん。
少し頬を膨らませていた。
「行きます」
だめだ冬野さんの頼みになると断りづらい。
「なら決まり!」と綾香。
こうして夏休みの予定が一つ出来た。
───だが今はそんなことを考えている場合ではない。
ついにこの日が来てしまった.....。そう学生全員が嫌っているであろうもの。
───そう中間テストが始まるのだ。
今日から一週間前....。当然何もしていない。僕は生粋の一夜漬けスタイルなのでまだ焦る時ではないが今回はそうは行かないのだ。
これは先週の放課後のことだ。
「来週からテスト一週間前だから放課後残らず帰るよ」と冬野さん。
さすが毎回一位の優等生は違うなぁ。
「了解。勉強がんばれぇ」とやる気のない僕がそう言うと冬野さんが首をかしげた。
「何でそんな他人事みたいなの?」
「───えっ......それは....」
「それは?」と冬野さん。
「いや何でもない....」
優等生は一夜漬けを知らないのか....。僕はそう思った。
「そうだ、立花くん勝負しよ」とニヤつり顔でそう提案する冬野さん。
何言ってんだ...勝てるわけないじゃん。
「いやいや、勝負にならないよ」
僕がそう言うと冬野さんの雰囲気がガラッと変わった。
「勝てない?そんなことないでしょ立花くん。私こう見えて順位はいつも気にしていたんだ。忘れたことないよ一年の一学期期末....」と少し棘のある声でそう言う冬野さん。まるで魔女のように不気味な笑みを浮かべていた。
「そ、それって....」
僕には一つ心当たりがあった。
「そうだよ。あの時私、一位取られたの確かぁ───立花 和樹って名前だったと思うんだけど」とニヤリ顔で僕を見つめる冬野さん。その瞳からはドス黒い何かを感じた。
久しぶりに冬野さんを怖いと思った。
「よ、よく覚えてるねそんなこと」
あの時は確か親にお小遣いの引き上げを頼んだんだ。それで十位以内に入ったら良いと言われて死に物狂いで勉強をした。
3000円から5000円に上がるんだ。頑張るに決まっているじゃないか。
「それで立花くん。勝負してくれるよね」と威圧感のある声でそう言う冬野さん。
「いや....僕は....遠慮し....」
「して....くれるよね....」と聞き返す冬野さん。
「は、はい...」
今日の冬野さん何か怖い....。意外と負けず嫌いなのかな....。
冬野さんの圧に負けて僕はこの勝負に乗ってしまった。
「それじゃあ勝った方は負けた方に何か一つお願いできるってのはどう?」と明るい口調に戻る冬野さん。
「う、うん良いんじゃないかな....」
断れる状況じゃない...。僕は心の中でそう思った。
「私が勝ったら何してもらおっかなぁ....」とニヤリ顔をする冬野さん。
な、何考えてるんだ....。
「そのお願いって.....何か買って欲しいとか?」
「さ、それはどうかなぁ」と冬野さん。
やばい....これは勝たないと何されるか。と僕は少し恐怖を覚えた。
さっきからニヤつく彼女が悪魔のように見えてしまう。
そんなわけで一週間前僕は冬野さんに勝つために勉強しないといけないのだ。
勉強頑張ろ......。僕は一人心の中で呟いた。
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