第8話 私の幼馴染 (綾香視点)

私には幼馴染の男子がいる。


眉毛が隠れるほど伸びた茶色の髪。髪型にこだわりがないのかいつも寝癖だけ治したようなボサボサの髪にやる気のなさそうな目をしている。そんな彼、立花 和樹と幼馴染だ。


和樹とは小学校で知り合った。教室の隅でいつも一人本を読んでいるよな男子だった。あの時の私はそれを面白がって良くちょっかいを掛けていた。


「ねぇそんなん読んでて楽しいの?」


多分私はすごく腹の立つ顔をしていたのだろう。


彼はめんどくさそうに「面白いから読んでるんだよ」といつと素っ気ない態度をとる。


「ふーん」


「何?」と和樹。


「えいっ!」


私は彼の読んでいた本を取り上げた。


「おい、返せ」と椅子から立ち手を伸ばす和樹。


なるほど、なるほど。


「こんなの読んでるんだぁ」と私はニヤついた顔を和樹に向ける。


頬を赤くし苦虫を噛んだような顔をする和樹。


そんな反応をする彼が面白いと思っていた。


和樹は素っ気無い態度を良くするが根はとても優しく頼まれ事には弱いそんな男子だった。


家が近かったため良く和樹を遊びに誘っていた。

いつも「めんどくさい。一人で遊んでろ」と言う和樹だが

私はそれを聞かず何度も...何度も彼が諦めて出てくるまで誘い続けた。


いつしか諦めた和樹は一回誘っただけで出てきてくれるようになった。


和樹と遊ぶのは楽しかった。彼自身も楽しかったのだろうだんだん友達と関わるようになっていった。


中学に入ってからの和樹は自分からは話しかけないが普通に人と話すようになっていた。


そんなある日だった和樹が友達の悠真に誘われて陸上部に入ったのだ。いつもやる気なさそうな和樹だがそこそこ運動はできる方だ。でもあのめんどくさがりが運動部に入ったのはものすごく驚きだった。


最初は楽しそうにしていた部活の仲間ともうまくやっていて最初に会った時と比べ物にならないくらい良く笑らうようになっていた。


でもそれも長くは続がなかった。何があったのか私は和樹に何度か聞いたが「何にも無いよ」の一点張りで答えなかった。でも明らかに和樹の態度は変わった。部活の仲間と距離を置きクラスにいた友達とも距離を置き、唯一悠真とだけはたまに話すそんなふうになっていた。


まるで最初に戻ったようで私すごく心配した。



高校はたまたま同じ所だった。だから登校初日一緒に行く約束をした。この時、和樹と話すのはだいたい半年ぶりぐらいだった。中学の卒業式は終わった後悠真とすぐに帰ってしまっていた。それほどまでに彼はみんなを避けていた。


マンションから出てきた和樹に私は声をかけた。


「おはよう和樹」


「ああ」と言う和樹。


学校に着くまで私は和樹に話しかけた。話しかければちゃんと答えてくれる。でも全くといっていいほどに彼は笑わなかった.....微笑むことすらなかった。


高一は運悪く同じクラスにはなれなかった。


たまに和樹と廊下ですれ違うことはあるがいつも一人でいる時ばかりだ。部活にも入らず誰とも関わらずそんな一年を過ごしていた。


そうして高二になり私は和樹と同じクラスになることが出来た。


久しぶりに私は和樹に話しかけた。それ時わかった彼は一人で居ることを望んでいると。

人と関わるのが面倒なんだと。私はどうすべきか悩んだでも何も思い浮かばなかった。


このクラスにはもう一人注目を集める人がいる。


冬野 千里、美人でスタイルも良いけど性格が何と言うかとても無愛想な感じだ。そんな彼女と和樹が隣同士の席になったのだ。だからといって何か変わる訳では無いと思い私はあまり気にしていなかった。


でもここ最近あの二人の様子がおかしいのだ。冬野さんがずっと和樹を見つめていや睨みつけていたり、和樹が彼女に紙切れを渡していたりどうも怪しい。


まさか....和樹、冬野さんのことが好きなんじゃ...。何で和樹があんな無愛想な女を.....。

私には自分から話しかけないくせに。やっぱ顔なのかそれとも.....

───スタイル.....。


私は自分の胸を見た。───くっ....絶壁....。

くそ胸か!胸なのか!!和樹のムッツリめ!


そんなしょうもない事を私は思った。


あの冬野さんだ私には和樹が何かしたようにしか思えなかった。


そんなある日のことだった───。


あ、忘れ物した!


「ごめんみんな私忘れ物しちゃった。取りに行ってくるよ」


「明日でいいじゃん」と友達がいった。


「宿題プリントだから無理だよ!」


「それは....わかったじゃあね綾香」と友達。


「うん、ごめんね。また明日」


そう言い私は学校へと戻った。


教室に着いた私はある違和感を覚えた。


話し声?微かに聞こえる男子と女子の会話。


私はそっと窓から中を覗いた。


───嘘....。そこには和樹と冬野さんが楽しく話しているのが見えた。


冬野さんあんな笑顔するんだ。それに和樹も....


私は不思議だった人と関わらなくなった和樹が放課後に残ってまで冬野さんと話しているのが。


同時に知りたくなった二人の関係が。

そうして私はある事を思きカバンからスマホを取りだし写真を一枚撮った。


和樹があんな顔で話してるの久しぶりに見た....。





次の日の朝私は和樹を呼んだ。


「ねぇ和樹最近冬野さんと良く話してるよね」


「そうか?気のせいだろ」と和樹。


誤魔化した、やっぱり何かあるなぁ....。私はますます興味が湧いた。


「じゃあこれは何かなぁ〜」私は和樹に写真を見せた。


すると和樹は驚いた顔をした。


「放課後に二人で何話してたのぉ〜」私は冗談ぽくそう聞いた。


「なぁ綾香このこと冬野さんには言うなよ」と真剣な顔でそう言う和樹。


予想外の反応私は戸惑った。


「え、言わないけど.....」


私はあの放課後を邪魔しようなんて全く思っていない。


「そうか」そう言い立ち去ろうとする和樹。


「その変わり冬野さんに言っといてよ友達になろうって」


でも知りたいと思った。和樹がどうして冬野さんにはあんな顔をするのか。冬野さんもなぜ和樹には笑顔をみせるのか。


すると和樹は悩んだすえ。


ため息を着き「わかった。言っとくよ」と渋々認めてくれた。


冬野さんと仲良くなれればその理由がわかる気がする。


これはただの自己満、私が安心したいだけの。また和樹が楽しそうに笑っていて欲しいのだ。



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