第4話
そう考えたら、やっぱり俺はあのパーティーに必要なかったんじゃないか。
「さぁ、果たしてうまくいきますかねぇ。今までロイドさん一人に押し付けていたことを、あの人たちがいきなりできるとは思いませんけど」
冷めた口調で元メンバーたちが出ていった扉を眺めながら、リースさんは呟く。
「ともかく、私はあのパーティーにロイドさんは必要不可欠だったと判断しています。むしろロイドさんが居たからこそ、たった5年であれほどのパーティーに成長できたと思っています。ロイドさんの居ない状況では、今後は苦労するでしょう」
「それこそ、買いかぶりすぎだよ。だけど、ありがとう。おかげでちょっと元気がでたよ」
「いえいえ、どういたしまして。冒険者さんのメンタルケアも、私たちの大事なお仕事ですから。では、私はこれで。ロイドさんも、負けずに頑張ってくださいね!」
そう締めくくって、リースさんは仕事に戻っていった。
言いたいことを言えてすっきりしたのか、その背中は心なしか機嫌が良さそうだ。
彼女が去ってしまうと、俺はまたひとりになってしまった。
……ひとりになると、やっぱり少し寂しいな。
「とはいえ、これからはソロでやっていかなきゃならないんだ。気合入れないと」
冒険者を止めても、俺に行く場所などない。
だったら、リースさんの言う通りこんなことに負けている場合じゃない。
頭を切り替えるように頬を一度パンッとはたくと、俺は依頼の貼ってあるクエストボードへと向かう。
さて、俺だけでもこなせるような依頼はなにか残っているかな?
「エギナの森でゴブリンの駆除。これ、D級冒険者向けの依頼ですけど、本当にいいんですか?」
悩んだ末に俺が選んだ依頼書を見て、受付に座ったリースさんはそうやって確認してくる。
「うん。今までパーティーで戦ってたけど、ソロになった俺じゃせいぜいD級レベルでしょ」
「確かにA級パーティーである銀翼の双竜からは離脱されましたけど、ロイドさん個人でもB級以上の実力は十分に備わっていると思いますけど」
「いやいや、それは買いかぶりすぎだって。俺は探査魔法の他にはせいぜい初級魔法しか使えない、ただの雑用係だったんだから」
「ロイドさんの言う“雑用係”が、そもそも雑用の域を逸脱しているんですけどね。武器の手入れに備品の補充、それに面倒な手続きも全部ロイドさんがやっていたんでしょう。探査魔法だって、これほどの精度で扱える奴は見たことないって他の冒険者さんが言ってましたよ」
「だから買いかぶりすぎだって。王都に行けば俺レベルの魔術師なんて掃いて捨てるほどいる。そう言った冒険者は、たぶんあまり魔術師を知らないんじゃないかな?」
もしも王都の魔術師を知っているなら、きっとそんなセリフは出てこないだろう。
まぁ、そう言う俺も王都の魔術師なんて見たことないんだけど。
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