第2話

 その言葉に、仲間たちは三者三様に別れの言葉をかけてくる。

「分かってくれたんですね。感謝します、ロイドさん」

「最初からそう言ってればいいのよ。本当にトロいんだから」

「これでやっと、役立たずのお守りから解放されるぜ。ま、雑魚は雑魚らしく底辺で頑張れよ」

 最後まで心をえぐるような言葉に胸を痛める俺に、締めくくるようにジェイクが口を開く。

「じゃあな、ロイド。今日から俺たちは赤の他人だ。俺たちはしばらくしたら拠点を王都に移すし、もう二度と会うこともないだろうよ」

 その言葉で、俺は長年連れ添った仲間を全て失くしてしまった。

 残ったのは、今日の依頼で使うために買い込んだいくつかのアイテムだけ。

 彼らが去った後、俺はただテーブルに突っ伏して現実から逃避することしかできなかった。

 そうやってどれくらい時間が経っただろうか。

 もう今日は何もする気のなくなってしまった俺に、微かな足音が近づいてきた。

「ロイドさん?  大丈夫ですか?」

 そう声を掛けられて顔を上げると、そこには顔見知りの受付嬢であるリースさんが立っていた。

 このギルドで一番人気と言っても言い過ぎではない彼女は、俺が冒険者になった時から何かと気をかけてくれている優しい人だ。

 その可愛らしい顔で向けられる満面の笑みで、何度胸を高鳴らせてしまったか分からない。

 そんな彼女が、心配そうな表情を浮かべながら俺に声を掛けてきてくれている。

「どうしたんですか?  銀翼の双竜の方々は、もう依頼に出発してしまったようですけど……」

 どうやら事情を知らないらしい彼女は、今の俺が最も聞きたくない言葉を口にする。

「……銀翼の双竜はクビになっちゃったよ。俺はもう必要ないんだってさ」

「そんな……!  どうしてですか!?  ロイドさんは、あのパーティーに必要な人物のはずです!」

 俺の言葉を聞いて予想以上に驚いたリースさんは、そんな風に声を荒げる。

 彼女が俺のことをそんな風に評価してくれていたのは嬉しいけど、今の俺にはどうしてもお世辞のようにしか聞こえない。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、彼らにははっきりと役立たずって言われちゃったからね。なにもできない白紙野郎ホワイトは要らないってさ」

 腰に備え付けていた魔導書をテーブルに置くと、その表紙を開く。

 そこにはなにも書いてなくて、ただ真っ白なページだけが広がっていた。

 パラパラとページをめくっていっても結果は変わらない。

「どうして、俺はこんなに才能がないんだろう。もしもこれになにか文字が書かれれば、変わったかもしれないのに」

 そんな俺の望みをあざ笑うかのように、魔導書は全く反応を示してくれない。

 すでに慣れてしまったその事実に、俺はただ苦笑を浮かべるしかなかった。

 

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