底辺術師のグリモワール〜役立たずと呼ばれた俺が英雄にいたるまで~
樋川カイト
第1話
「なぁ、ロイド。お前もいい加減、俺たちのお荷物になっている自覚を持ったらどうなんだ?」
「え……?」
いつも通りの朝。
パーティーの集合場所であるギルドの一角にやって来た俺は、リーダーであるジェイクの言葉に間抜けな声を上げてしまった。
「いったい、なにを言ってるんだ?」
「そのままの意味だよ。ずっと思っていたんだが、お前はなにか俺たちの役に立っているのか?」
「そんな……、俺だって頑張ってるだろ。必要なアイテムの買い出しとか、武器の修繕とか。荷物だってほとんど俺が持ってるし、それに索敵だっていつも俺の探査魔法を使ってたじゃないか」
「つまり、その程度だろ。そんな仕事は、お前じゃなくても誰だってできるんだよ」
馬鹿にするように鼻で笑われて、俺は目の前が真っ暗になる。
「……他のみんなも、ジェイクと同じ意見なのか?」
すがるように他のメンバーに視線を向けても、帰ってくるのは辛らつな言葉だけだった。
「当たり前だろう。みんな、お前の役立たずっぷりに辟易してたんだよ。これからS級パーティーを目指すためにも、お前は邪魔にしかならない」
重戦士で味方を守る盾となる兄貴分のジークは、そう言って俺に冷たい視線を向けてくる。
「悪いけど、私もジェイクたちと同じ意見だから。というか、最初からあなたは足手まといだと思ってたわ。それに索敵だって、私の方が完璧にできるから。今までは役目を譲ってあげてただけ」
クールで皮肉屋ながら仲間思いな狩人のエリサから浴びせられたのは、悪意のたっぷり詰まった暴言だった。
「ロイドさん。残念ですけど、これからさらに危険な依頼も受ける以上あなたを連れていくことはできません。あなたの命を預かる者として、無駄死にをさせるわけにはいかないんです」
最後の望みであった心優しい聖職者のケイトでさえ、言外に俺が役立たずだということを肯定している。
「これで分かっただろう。これがお前に対する、俺たちの共通認識だ。いつまで経っても一文字も浮かんでこない
突き放すようなその言葉に、俺は思わず膝から崩れそうになってしまう。
「クビ……? 本当に……? だけど、だったら俺が今までやっていたことは誰がやるんだ? さっき言ったこと以外にも、俺はいろんな役目を……」
「うるせぇなぁっ! さっきも言ったが、お前にできることなんて俺たちの誰にでもできるんだよ! 今までは、何の役にも立たないお前のためにわざわざやらせてやってたんだ。いい加減分かれよ。お前は元から、要らない人間だったんだ」
そこまではっきりと拒絶されては、もはや取り付く島はない。
つい昨日まで仲間だと思っていた者たちの突然の裏切りは、俺の理性を崩すには十分すぎるほどだった。
「……分かった。俺はパーティーを抜けるよ」
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