胸がヒリヒリするほど焼ける、アンチハーレムラブコメ。

まず一言だけ言わせてもらいたい。

「舐めてかかって申し訳ありませんでした」

今作の主人公である高槻シンジはガチの陰キャで、天涯孤独で、無敵の人だ。失うものなど何もない。
一方で、青春を謳歌しているハーレムの中心人物である晴田コウは主人公とはすべて正反対で、恵まれた人生を送っていた。
シンジはコウに対して「キモイ」と一言告げ、彼らを完膚なきまでに叩きのめす。そう、幼い頃のシンジ自身と重ね合わせて……。

最初、レビューの筆者は主人公に対して良い感情を持たずに「ふざけんな!」と思い途中で読むのを辞めていたが、改めて読むと今作は青春を謳歌するラブコメに対して「ふざけんじゃねぇ!」と中指を突き立てた怒りに満ちたシリアスなストーリーとなっている。ラブコメというよりは、ミステリー小説に近い。

登場人物が心に重い傷を背負っている今作は、気軽に読むとやけどする。
だが、それをすべて読み終えた時に分かるだろう。ハーレムラブコメの主人公があまりにも優しすぎることを。
ぜひ今作を手に取って、最後まで読んでほしい。そして、ハーレムラブコメを執筆している人も、好き好んでハーレムラブコメを読んでいる人も、ぜひ本作を読んでほしい。
シンジの叫びは、何もかも手に入れることすらできずに日々を過ごしている我々の心の叫びなのだ、と……。

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