第5話
005
翌日、地元駅の裏。
「おい、報告はどうした」
「ほ、報告?」
「舞い上がって連絡見過ごしてんじゃねぇよ、カフェでの顛末を送ってこいって言ったろ」
「あぁ、ごめん。ちょっと、文章考えてる間に寝ちゃってた。授業中に送るよ」
朝から呆れさせてくれる女だな、本当に。
「お前、まだ晴田に告らせたいとかヌルいこと考えてんだろ」
「ま、まぁ、そりゃ女の子だし。男の子から言ってくれる方が何となくロマンチックだから」
「そんな夢見てっから手に入らねぇんだよ。それは別の男に惚れた時ように取っておいて、今は自分から告白すること考えろ」
「……なにそれ」
「あいつが自分から女に告白するワケないだろ、他にも候補がいるんだし。関係を保留したって文句いう奴もいねぇんだから」
俺は、彼女の目の前でエクセルをPDF変換した書類を送った。
「マニュアルだ、出会った場所と好感度を得られやすい選択肢をパーセント毎に振ってある。対面して臨機応変に話せるよう頭に叩き込んどけ」
ちゃんと月野自身の人気による暇のタイミングも合わせたバージョン1.0。抜かりはない。
「50ページもあるの!?」
「告白は3日目後だ、死ぬ気で覚えろよ」
「みっかぁ!?」
「お前には既に下積みがあるし、チンタラやってると他のメンツに強力な恋愛イベントが起きかねない。連中の幸運を封殺するためにも、密度を濃く攻略するんだ」
そして俺は踵を返しホームへ向かった。いつも通りなら、晴田は次の電車の6両目に乗ってくる。そこに居合わせて会話を弾ませれば今日のスケジュールを合わせられて一歩リードという寸法だ。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんだよ、電車は5分後だぞ」
「あ、あのさ。最近、町家繁華に新しいケーキ屋さんが出来たんだよ。お礼もしたいし、一緒に行かない?」
町家繁華とは、俺たちの地元から一番近い繁華街だ。地方都市ながら、一通りの店は揃っている。
「お礼なんていらない、もう少し考えてから発言しろよ。他のヒロインズに見つかるだけでメチャクチャダメージになるんだぞ」
「ぶぅ、なにかお礼したいよぉ」
「するな。晴田を誘うなら、電車の中で済ませておけ。『一日目、朝C』を応用すれば自然と繋がるハズだ」
「……わかったよ」
月野ミチルは勝つために何でも使うダーティな女かと思いきや、変に義理人情を重んじるところがある。これ以上俺と関わって何か綻びが生まれないようにした方がいいかもしれない。
晴田の過去を調べて次のデートでヒントを伝えたら俺は引っ込んだ方がいい。心配かもしれないけど、俺の思惑通りなら今日の昼休みで絶大な効果を実感するイベントが起こるハズだ。
そして、そのイベントがこの恋愛が成功する証拠になる。月野が自分に
俺に任せろ、こんなショボい男くらいすぐに手に入れさせてやるからよ。
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