6.受付嬢²
「詐欺ですよ詐欺! 一杯食わされました! いっぱい食わされるなら肉のスープがいいのに!」
二人はギルドで報酬を受け取ったが、全員回収できてないとかなんとか色々と文句をつけられ、結局金貨1枚にも届かない金額を手渡された。あの受付嬢もとんだ食わせ物である。
「そんなものだろ」
「ギルドは信用というものを軽く考えているようですね!」
依頼が書かれた紙がずらずらと貼られている掲示板の前で、ステラはプンスカ怒っていた。
「ならもっと手軽な依頼を受けようか」
ジロは1枚の貼り紙を手に取る。そこには薬草採集の依頼が書かれていた。
「草を集めるだけなら命の危険はない」
「嫌ですよめんどくさい。そも貰いも少ないでしょう?」
「それならば、良い仕事があります」
二人の会話に受付嬢が割って入ってきた。以前と同じ何やら企んでいるような顔である。もちろん2人は怪訝な表情をした。
「絶対変な依頼でしょう? 嫌ですよ、報酬を払ってくれるのかもわからないのに」
「報酬は金貨1枚と銀貨12枚。成功すれば確実にお支払いいたします」
「やります、やらせてください」
今しがた騙されたばかりなのに当然のようにステラは安請け合いする。脳の容量が少ないのかもしれない。ジロは呆れた様子でため息をついた。とはいえ流石に無報酬というわけではないはずなので、彼女の話を聞くことになった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
翌日、受付嬢の用意した馬車に乗り、目的地へと向かう。
「はぁ~楽ですねぇ、報酬お金じゃなくて馬車じゃ駄目ですか?」
「金貨1枚あれば馬車を買ってもお釣りがきますよ」
受付嬢ファフラ・カディールはこの地域の貴族の令嬢であった。彼女は半猫人で、猫のような耳と尻尾の生えた人種である。彼女がギルドの受付嬢、割と辛い窓口業務に携わっているのは理由があった。彼女の父が原因である。
「私の父はお人好しでした、困窮したとある領民に、放置された鉱山を買わされたのです」
彼女の父は、その領民と親しかった。鉱山に自身の貯蓄額を超えた多額の支払いをし、没落するまでには至らなかったが、家は借金を背負った。貴族同士の相互扶助によりなんとか体裁は保ったが、それでもファフラやその兄弟は出稼ぎに行かなければならなくなった。
「長女は戦場で指揮を採っていると聞きますし、次兄は金のために新聞記者に……」
「新聞記者ですって!? それは……お気の毒に……」
それはステラでさえも気の毒がるような状態であった。しかし不幸はそれだけではない。
「放置されていた鉱山ですので、魔物が巣を作ってしまい、近づけなくなってしまったのです。調査さえも出来ない」
人間の手が入っていない坑道はすぐに魔物や動物の住処になってしまう。時には野盗が拠点として使うこともあるので、廃坑の調査と処理は重要な課題であった。しかしながら、カディール家は自力での調査が出来ない程に困窮していた。他にも優先すべきことは多いからだ。その点を近隣の領主や領民により指摘されたのだという。
「それで冒険者に任せて安く済まそうというわけですね!? こいつぅ〜〜!」
「ええ、そうなりますね」
基本的にあらゆる武力で解決する難事は冒険者に任せれば安くつく。無論、その仕事の成果の品質については保障は出来ないが。荒くれ者たちを統率する冒険者ギルドの影響力は日に日に増していた。
「だがファフラ、お前までついてくる必要はなかったんじゃないか」
「私には見届ける義務があります」
「俺たちが悪党だったらどうする。御者を殺してお前を手篭めにするかも」
ジロはファフラに凄むように顔を近づけた。すると彼女は顔を赤くして目をそらす。
「そ、その時は……仕方ありません……ね……」
「なんでちょっと満更でもない感じなんですか!?」
「そ、そうか、すまない、下世話な事を言った……」
彼の方も恥ずかしげに顔を横に向ける。
「ジロさん! んもー! ヒロインは私ですからねぇーっ!」
頬を膨らませ地団駄を踏むステラであった。
「ところでその丁寧な喋り方は変えませんか? 私と被っているので作者が混乱してしまいます!」
「作者が混乱しちゃうのか……今後敬語のキャラ出せないじゃないか」
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