第3話 転生して転性!?
次に気が付いた時、俺は穏やかな木漏れ日の下で佇んでいた。
咄嗟に辺りを警戒するものの、森の中の開けた場所の様で、近くには小さな滝と川も見え、周りに敵意のある存在はいない様に思える。
安全な場所に転生させてくれたのかと、神様のサービスに感謝していると、頭の中に様々な知識が流れ込んでくる。
経験のない感覚に戸惑ったものの、【異世界の基礎知識】が本格的に習得されたらしく、この世界の事が徐々に分かり始めていた。
魔法がある世界なのは事前説明の通りだけど、RPGの様に魔物が跋扈する危険な世界でもあるらしい。
また、人は人間の他に魔族等色々な種族がいる半面、他種族との交流は余り活発ではなく、互いに生活範囲が被らない様に暮らしている様だった。
……と、こんな感じで余裕を持って現状把握をしているのは、この場所が〈聖域〉と呼ばれる、魔物が近付けない領域と気付いたからだった。
この世界には他にも結構な数の〈聖域〉があって、古来から都市として栄えているところも多いらしい。
そんな訳で、安全が確保出来ているうちに、現状把握をどんどん進めていく。
まず自分自身の格好を見てみると、この世界の一般的な旅装をしており、日本の服装ではなかった。
慣れないせいか違和感を感じるものの、悪目立ちしない事を考えると、これも神様の配慮だと思う。
但し武器の類は何もなく、予想してはいたものの、もう少しサービスが欲しかったところかもしれない。
その他には、簡易的な荷袋と財布も持っていて、財布の中には青金貨(金と銀の合金の貨幣)が3枚と銀貨が5枚入っていた。
標準的な宿なら7泊は出来る位の金額で、無一文のスタートにならなかった事にまずはほっとする。
金額が中途半端なのは、スキルポイント同様に、日本での所持金をこちらの世界用に変換した……みたいな理由があるのかもしれない。
気候については、少々の肌寒さはあるものの、穏やかな暖かさを感じるから、季節は恐らく春だろうか。
日の高さを見るとまだ午前中の様で、これから活動するには好都合だ。
それならと、神様から与えられたスキルについて改めて確認する事にした。
「メニュー、オープン。ステータス、オープン。ウィンドウ、オープン」
喉の調子が悪いのか聞き慣れない声で、ゲームのメニューを呼び出す感じで唱えてみるけれど、何も起こらない。
「……やっぱり、ゲームの様な便利機能は無いか。それなら、時空魔法[
ならばと、今度は魔法を唱える。
すると、まずは目の前に空間投影された画面が表示された。
時空魔法[
続いて、[
時空魔法[
高レベルの魔法ではないが故に、その機能は制限版なところもあるけれど、自分自身に掛けるならさほど問題は無いらしい。
それと、俺の場合は転生時に自分の習得スキルを把握している事も影響しているのかもしれない。
[アイテムボックス]目当てで時空魔法を習得したけれど、低レベル帯の魔法ながら、[
そうこうしているうちに、スキル一覧の表示が完了したので確認する。
高清水 文尚
〔種族〕
【人間】
〔クラス〕
【魔女】
〔強化耐性〕
【頑健 LV2】
【精神耐性 LV5】
【魔力出力 LV4】
【魔力容量 LV4】
【魔力制御 LV4】
〔魔法〕
【火魔法 LV4】
【水魔法 LV4】
【土魔法 LV5】
【風魔法 LV4】
【光魔法 LV6】
【錬金魔法 LV4】
【時空魔法 LV7】
〔スキル〕
【世界の基礎知識】
【体術 LV3】
【解体 LV1】
【魔女の知識】
【使い魔召喚】
……うん?
何かスキルが増えたり
基本的に『最初が肝要』と考え、リスク回避も考慮して『一芸より多芸』な方針でスキルを取った。
但し、例外的に重点スキルを3点ほど取得したので、それについて再確認する。
一つ目は〔魔法〕で、時空・光・土の各魔法は
まず、時空魔法は[アイテムボックス]が使える
覚えたての
続いて、光魔法は[
安全を重視するなら、これも必須の魔法になると思う。
最後の土魔法は、野営の際の[
[
二つ目は〔強化耐性〕で、頑健・精神耐性を優先して取得している。
これも単純に、安全重視で気持ち堅く設定した感じだ。
三つ目は体術で、様々な武術の中から敢えてこれのみに特化させた。
一人旅を考えると、完全な後衛タイプは危険とみての取得になる。
とは言え、戦闘時は魔法をメインとして、体術は回避・防御用という想定になるだろう。
全体的なスキル設定としては、戦闘よりも回避・逃走に重きを置き、安全と手札の数を重視している。
後は、街に辿り着き仕事が見つかれば何とかなるだろう……とまで確認できたところで、さっきから気になっていた事を確かめる事にした。
まずは自分の掌を目の前にかざしてみる。
……やけに小さく、そして指が細く見えるのは、気のせいだろうか?
次に、転生後から邪魔になっていた、髪の毛らしきものを手で触ってみる。
……確かに俺の髪の毛だった。どうやら随分と長髪になってしまったらしい。
そう言えば、声も随分と高く可愛らしかった気がするし、何かがおかしい。
転生前と全く異なる身体的要素に、えも言われぬ不安を感じ、今の自分の姿を確認すべく辺りを見渡す。
確か、近くに緩やかな感じの川があった様な……。
そう気付くのが早いか、俺は思わず川へ向かって駆け出していた。
そして川の畔に着くと、流れの無い水面を見つけて、緊張感を持って覗き込む。
すると、そこには黒髪の美少女がいた。
「――――――――え……」
数舜の間呆けた後、はっと気が付いて周りを見渡すものの、俺以外の人影は見えない。
「そんな、まさか……。でもそんな事って……」
焦る気持ちを何とか抑え、今度は覚悟を持って再度水面を覗き込んだ。
そこにはやはり、先ほどの美少女が映っている。
続いて、俺は自分の頬をつねってみた。
「……痛い」
夢ではないと主張する様に強い痛みを感じ、俺は思わず頬を抑える。
すると、水面の少女も自身の頬をつねった後、俺と同じ様に頬を抑えていた。
それを見て、俺は恐怖感からか、長く伸びた自身の黒髪を思わず掴む。
それに合わせて、鏡合わせの様に、水面の少女も艶やかな黒髪を掴みつつ、引き攣った表情を浮かべていた。
……どうやら、この美少女が今の俺の姿らしい。
あまりの事に理解が追い付かなかったが、理不尽なこの状況に、やがて言いようのない感情が湧き出してきた。
「なんじゃそらーーーー!!!!」
異世界に転生した結果、どうやら俺は女の子になってしまったらしい。
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