第3話 初戦闘
その後お風呂に入ってテレビをなんとなく見て、それから早めに寝ることにした。
・・・中々眠れない。午後10時にベッドに入ったのにもう11時だ。昼寝したのがよくなかったんだろうな。それに色々あったし。こういうときは羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、猫が一匹・・・ん?何で猫が入ってくるんだ。邪魔をするな。うーん。考えれば考えるほど眠れない。考えないようにしないと。でも考えないようにしようとすると余計に考えてしまう。あー眠れない。あえて一回目を開けてみるか。
そう思い開けると、あれ?暗すぎないか。何も見えない真っ暗すぎる。確かに電気をすべて消して寝たけど、暗闇なんてことはないはず。
起き上がり手探りで窓を開けても真っ暗。は、なんだこれ。夢でも見てるのか?
今度は部屋のドアに向かうが開かない。がちゃがちゃ、がちゃがちゃ。ドアノブを何度回しても開かない。そもそもこの部屋に鍵はかかってないのに。
焦ってきた。変な汗も出ている。
それに後ろから何かが迫ってきている気がする。早く開いて!お願い!
「安心して。僕だよ。君がいうところのしゃべる猫だよ。」
「は、え、なに? 今それどころじゃないの!」
「落ち着いてよ。っこれは困ったね。アビスが広がっている。このままだと世界は深淵に飲み込まれるね。」
「・・・。」
「無視してもいいのかな?このままだと本当に世界が終わっちゃうよ。それでもいいの?」
「・・・いや、それは困る。」
「そうだよね! じゃあ僕を信じてよ。そうすれば世界を救えるよ。さあどうするの。」
猫は初めこそ明るい声だったが段々と低い声になっていき最後にはほぼ脅しだった。
私は様々なことを一瞬で天秤にかけた結果ぎぎぎとゆっくり頷いた。
「やったね! そうこなくっちゃ!じゃあこのネックレスをつけてね。」
そう言って首に何か巻かれた。感触的に本当にネックレスのようだ。
「じゃあ一緒に叫んでみよう。レッツ、コメット・チェンジ!」
「こ、コメット・・・チェンジ。」
戸惑いながらそう言うと私の身体が光に包まれた。白いワンピースに白いリボンで結ばれたポニーテール。髪色は白くなった。
そして両腕には金色の龍の頭を象った籠手がはめられていた。
「うまくいったね。これで敵の姿が見えるようになったはずだよ。」
そう言われて前を見ると黒い人影があった。それは次第に輪郭を帯びていった。見た目は目がない真っ黒な人間。頭頂部には白い二十丸の模様がある。
あれは何なんだろう。人の姿をしているけれど明らかに普通の人ではない。私が困っていると猫が答えた。
「あれはね、魔人だよ。人を襲って食べちゃう悪いやつだ。しかも放っておくととんでもないことになるからね。」
魔人か・・・。それに放っておくとよくないらしい。やるしかないのか。
「そうそう。いい調子だね。ここはアビスっていう特殊な空間だから何しても現実の空間には影響はないよ。だから思いっきり暴れてオッケーだよ! さあやっちゃおう!」
私は覚悟を決めて目の前の敵を捉える。敵もこちらの動きをうかがっているようだ。間合いを測る。戦闘の経験は武道等を含めないはずだが体が勝手に動く。
魔人が右足をほんの少し前に出したのを見計らってこちらから仕掛ける。まずは右脚を私の左脚で薙ぎ払う。魔人が吹き飛ばされ家の窓を突き破って外へ飛んで行った。
一瞬家が壊れて焦ったが、猫が笑顔で「大丈夫だよ。言ったでしょ、ここは特殊な空間だって。」と言ったため落ち着きを取り戻す。
窓から外を見ると魔人が受け身を取って立ち上がっているところだった。私は窓のサッシに右足をかけ飛び降りる。それを見て魔人は距離を取って構える。飛び降り様に蹴りを入れよとするが外れ地面が衝撃でひび割れる。
ちっ外したか。気が付かないうちにどんどん気分が高揚してきていた。その様子を猫は怪しげな笑みで眺めていた。
魔人が右手を突き出したので何かを放つのかと思ったら、そのまま背を向けて走り出した。
私は追いかけるために地面を思い切り蹴る。一瞬で魔人に追いつくとそのままの勢いで左廻し蹴りを顔面の横からきめる。魔人は再び吹き飛び家々を貫通していく。
追いかけなければ。
「このままだとまずいね。時間が経つほどアビスは広がっていくんだよ。時間を稼がれると君の負けだ。」
猫が囁いてくる。時間が経つと私の負けらしい。ふう。私は一息つく。高ぶる精神を整えていく。この空間では何をしてもいい。それはまさに夢の空間だ。なら私にはなんだってできるはずだ。吹き飛んだ穴の先に見える魔人を捉える。
そして私は両腕を突き出すと龍の頭が前にスライドし手の位置に龍の喉元がくる。その状態で手のひらを魔人に向け力を籠める。すると手のひらの先に光が集まり龍が咆哮した。
二筋の熱光線が魔人を貫き消滅させる。それと同時にアビスは解除され、元通りの世界になった。
「やったね! 君の勝ちだよ。」
はあ、はあ。急に疲れてきた。先ほどまではアドレナリンで高ぶっていたがそれが急に切れたらしい。私は変身を解除し重い足取りで自分の部屋に帰った。
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