第4話 田中先生

次の日起き上がりたいけど体が重い。いや肉体そのものに筋肉痛などがあるわけではないのだが、精神的に起きたくない。昨日魔人と戦ったせいでよく休めなかった。

はあ。でも学校に行って色々訊きたいことがあるからなー。仕方がない。

私は仰向けのまま脚を上にあげて膝を曲げ思い切りぴーんと脚を伸ばした勢いで起き上がった。カーテンを開けて日光補充。日差しを浴びると気持ちがいい。ちょっと目も覚めてきた。ふああ、あくびが出る。その勢いであくびが連鎖する。何度かあくびを繰り返すと今日の持ち物を確認してから一階に下りた。

「おはよう。」

「おはよう。よく眠れたか?」

「え、うん。まあ。多分。」

リビングにはお父さんがいて朝食の準備をしてくれていた。私はまずお手洗いに行ったあと洗面所に行きうがいと洗顔をする。

今日の朝食はトーストに目玉焼きとウインナーだ。いただきます。おいしい。

あ、そうだ。一応訊いておこうかな。

「お父さんは昨日よく眠れた?」

「うん、眠れたけどどうかしたか?」

「ううん、なんでもない。」

お父さんは昨日の夜のこと知らないということだよね。というかあの猫はどこに行ったんだろうか。神出鬼没なところも不思議の国の猫にそっくりだ。もしかして私、まだ夢の中だったりするのかな。ぎゅー。ほっぺをつねったらちゃんと痛かった。

ごちそうさまでした。いつもありがとう。

二階に行って着替えたらカバンを持って階段を下りる。そうだ、また雨が降っても困るから折り畳み傘を入れておこう。ハンカチも持ったしこれで大丈夫。

「じゃあ行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

お父さんが玄関先であいさつしてくれる。その顔に安心感を得てから学校へ向かった。学校までの道のりに特に変なところはなかった。陸橋の下も見たがあの猫はいなかった。会いたくなったら来てねって言ってたくせに。いないんかい。本当に不思議な気分だ。現実なんだよね、本当に。もう一回つねっとく?

今度は両手でつねったら倍痛かった。ううう。それにしても昨日教室で目覚めた時よりかはこの世界になじんできた気がする。気がするというかそもそもこの世界で生きていたんだと思うんだけど。それでもそんな気分になってしまう。


学校について教室まで行って先生が来るのを待った。あの先生は絶対に何か知っているはずなんだ。ホームルームの時間になって先生がやってきた。昨日の先生で間違いない。どんな話をするんだろうか。・・・。

普通にホームルームは終了した。え、何もないの。説明してほしいことが山ほどあるんですけど。このまま先生を捕まえて話を訊きたいけど、すぐ一時間目の授業が始まってしまう。

仕方がない。昼休みか放課後に職員室に行くしかない。


授業は当たり前だが普通の授業だった。こんなの習ったっけ。と思うこともたくさんあったけど、なんとかついていけた。特に面白かったのは物理の先生が雑談で話していた、ラプラスの悪魔だった。過去も未来も全部知っている悪魔。未来は初めからすでに決まっている。すごく興味深い。もしそんな悪魔がいるなら未来がどうなるか教えてほしい。

それが覆ったとき悪魔がどんな顔をするのかが、想像するだけでわくわくする。


お昼ご飯の時間になった。ご飯を食べるのは楽しみだ。今日はどんな弁当かな。

蓋を開けると昨日のハンバーグの残りが入っていた。うん、ちょっとだけがっかりしたけど。まあおいしい。ちょっとぱさついていているけど。

こうして一人で食事をしていると周りが良く見えるし聞こえる。ほとんどの人がグループを作っている。談笑したりゲームで遊んだり。ああいうのもいいなとは思うけど。一人の方が気楽だ。

よし、今日もごちそうさま。あ、そうだ先生のところ行かないと。

私は席を立ちあがり職員室に向かった。扉の前に立つと心臓がどきどきしてきた。何かこの扉に威圧感を感じる。ノックしておそるおそる扉を開けると担任の先生はいなかった。田中先生だったよね。

私がきょろきょろしていると近くの先生がどうかしたかと声を掛けてきたので、田中先生がどこにいるか尋ねた。

「田中先生・・・あ、世界史の田中先生か。お昼の時間は確か外で食べてるんだよ。」

「そうですか。ありがとうございました。」

外にいるのか。それに田中先生って同じ名前の先生が多分他にもいるんだろうな。うーん、こうなると放課後しかないか。でも部活に行ってるかもしれないし。帰りのホームルームが終わったら声をかけるか。

あと昨日連絡をとった四人もおそらくこの学校にいるから探してみないと。

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