犯罪者

身ノ程知ラズ

犯罪者

時刻は午前2時


不意に目が覚めると横には同じ牢屋の中にいる男がニヤニヤしながらこちらを見下ろしていた


「何見てんだよ」


「お?喋っていいのか?今は就寝時間だろ?」


「うるせぇ、お前だって喋ってるだろうが」


「でも看守に見つかるのはいつもお前だよな?俺はバレたことがねぇ」


何も言い返せなかった、実際そうなのだ


「というかこんな時間に目が覚めるなんて珍しいな、悪夢でもみたか?」


「夢なら覚めないで欲しかったよ、俺今日があの日な気がするんだ」


「お、ようやくか楽しみだな。やっぱ怖いもんなのか?」


「ここまで来ると恐怖心も何もない、あるのは後悔だけだ」


「カッコつけてるけどよぉ、お前犯罪者だぜ?」


「遺族の方には申し訳ないと思っている、と言っても信じちゃくれないんだろうがな」


「当たり前だろ、お前がやったことは許されるようなことじゃあねぇ」


「そうだよな…」


彼らは黙りこくってしまった、そして布団の中で眠っていた犯罪者は先程の反省が嘘のように大きないびきをかきながら眠りについた


気がつくと朝だった、何故か察しがついていたが刑務官が中に入ってきて


「出ろ」


とだけ言われた


「おいおい、お前の予想当たってたじゃねえか!」


そんな彼を俺は無視して何も言わず最後に自分の牢屋に一礼してその場を去った


遺族に手紙を書く機会が与えられた


「きったねぇ字だな」


そいつは何故か横にいたが気にせず書き続けた


薄っぺらい反省の意を書き綴っても何にもならないが本当に後悔している、衝動的に人を殺すのは人としてどうかしている


「そんな御託を並べてどうにかなるわけないだろ」


彼は珍しく真面目なトーンで言った


「俺はお前を許さないからな」


あの時お前を殺したのは俺だ、頼むから成仏してくれ


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい


「まぁお前もすぐこっちに来るか、とは行っても地獄だろうがな」


そう言い残し彼は現れなくなった


もうすぐ死ぬせいか、はたまた彼を殺した後悔から来る恐怖のせいか


死刑執行室からは嗚咽する声が聞こえてきたという



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犯罪者 身ノ程知ラズ @mizoken

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