実は奥の深いカテゴリ

 こうした「儀式」の間に路面は完全に乾き、Motoグループの中では1番手のクラスとなる「Moto3」決勝のスタートです。このクラスでは運営側より使用タイヤの指定があり、全車前輪ハード、後輪ソフトを履いてのスタート。全17周のレースとなります。

 とりあえず私の注目はこのレースも予選2番手に付けた佐々木歩夢選手。スタートで少々出遅れ4番手に下がったものの、Moto3ならではの抜きつ抜かれつの集団走行の中でポジションを回復し、前半3番手に付けます。そのまましばらくは、トップグループ、中団グループ、下位グループの三つくらいに大雑把に分かれての、Moto3ならではの集団走行が続きます。

 11周目、2番手に付けていたオンジュ選手がヘアピンで転倒し、トップと2位以下の間にわずかな隙ができました。このチャンスに1位のマシアがスパートをかけます。2番手となった佐々木選手は3位オルガドとのポジション争いでちょっと前を追う余裕がない模様。マシアが独走態勢を築き上げることに成功します。

 14周目、日本人ライダー鈴木竜生選手が転倒。再スタートはしましたが絶望的なポジションにまで落ちてしまいます。上位の方は1位マシア~2位佐々木~3位オルガドがそれぞれ単独走行でポジションを固めつつある展開。ちょっとこれはMoto3では珍しいですね。何台かの集団でもみ合いながらのレースというのがMoto3の定石なのですが。

 これはこのまま決まるか……と呑気に構えていたら、最終ラップ、最後のビクトリーコーナーでドラマが。オルガドが佐々木選手に仕掛けます。しかし佐々木選手は辛くもポジション死守に成功し、そのまま2位でチェッカー。この粘りは地元の声援をパワーに変えてのものか。

 これまでテレビでダイジェストを見た経験も踏まえての感想ですが……「スポーツ」としてとらえるとMoto3が一番面白く奥が深いように思います。それは例えるならば、競馬や競輪の魅力にも通じるでしょう。ゴール前、最終局面で勝負できる「末脚(この場合はタイヤとかですね)」を残していて、なおかつ位置取りも「勝てる」ところにいないと最後に競り負けてしまいます。このへんが日本人には……分かってはいるのでしょうが、どうにも我慢しきれずに前が空いたといって飛び出してしまうから、最後にズブズブと沈んでしまう。そんな風に感じました。


 そしてぐずぐずと観戦記を書けないでいる間にニュースが飛びこんできました。佐々木歩夢選手、来シーズンはMoto2にステップアップです!


 Moto2がスタートするまでの間に、コースを順にたどってS字コーナーに移動です。モーターバイクの左右への切り返しを一度見ておきたい。

 しかしスプリントレースが多数開催される今回のようなタイムスケジュールだと、場内移動がちとタイトですな。このへん耐久レースだともっとのんびり巡れそうです。やはり一度は鈴鹿8耐も観ておきたい。

 S字に着いて、芝生に座って……ワタクシ、ここではたとこれまでの経験と今回との違いに気づきました。

「そうか、金網がないんだ」。

 事故でクルマが宙を舞った際、観客席に飛びこんで惨事が起きることを防ぐための金網は、およそどこのサーキットにも常設されているもの。このもてぎでも、グランドスタンドにはしっかり金網があります。しかし130R、S字と見てきた限りではそれがない。写真を撮るには、ヘンなところにピントが合ってしまう障害物がなくてストレスがないのですが、そのぶんコース脇のサンドトラップはたっぷりとした幅を取ってあります。

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