第14話
「いつまでそこでいじけてんだ?」
「……」
「まあ、いいや。お前らが選んだからな」
何も話さない。ソーは「はあ」とため息を漏らす。
「前に俺が言ったことが理解できたか。誰も昔のままじゃないって。まあ、昔も何もなかったけどさ」
ソーはただ一人で喋るのみだった。
「真相が解明されれば事象は全て逆転する。しかしな。その真相だって定かではない。人の耳から入った情報と口から出た情報が必ずしも正しいとは限らないだろう? 真実はその場で起きたことにしか現れない。それ以降はただの真相だ。その真相という中には人の情動がある。そうやって作られていくんだよ。場合によってはそれが真実になりうるかもしれないな。……まあ、確かに、イオルがやったことは許されるものではない。騙して隠していたのだからな。しかし、その中にも、お前の中にも、正しいイオルがいたのは忘れるな。それだけだ」
「……」
「まあ、しっかり家に帰れよ。いつまでもそんな所で座っていると風邪ひくぞ」
ソーは踵を返した。そして、紙を一つ投げ渡す。ソーは背中で話す。
「まあ、何か依頼があればご贔屓に。初回の相談料はタダにしておくぞ。ただし電話代や交通費はそっちで持ってくれ。じゃあな」
それだけ言うとソーはどこかへ消えていってしまった。
オレは独りぼっちになった。静寂がただよう倉庫の中心でポツンと座っているだけだった。
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