有明編あらすじと解説文
○あらすじ
災禍で亡くなったとされるティロ・カルディアを探しにセラスとフォルスはエディアを訪れる。その道中でフォルスはシェールの詳しい素性と過去をセラスから聞かされる。その後フォルスは尋ね人が語っていた廃屋を見つける。彼の証言が嘘でないことを確信し、2人は首都へと向かう。
災禍からちょうど20年という年のため、街中では災禍にまつわる催しが多く開かれていた。フォルスは新聞記者という立場を使ってティロ・カルディアの遺族と思われるラティと接触する。彼女はティロの妹で、災禍でティロとその兄を亡くしていた。そして兄たちの死を受け入れられず後を追うように亡くなった母の話をフォルスにする。災禍での多くの悲しみを目の当たりにして、フォルスは衝撃を受けて体調を崩してしまう。
セラスの慰めもあり回復したフォルスは災禍という出来事を調べないといけないと思い、歴史資料館を訪れる。当時王室の女中筆頭を務めていた館長のステラからフォルスとセラスは当時の話を詳しく聞く。その中に「姉と共に行方が知れなくなった王子の従兄弟の少年」が登場する。尋ね人の特徴が一致し、また彼が尋ね人である場合不可解な点の説明がつくと考えたフォルスは王室の家系図を開く。そこで彼の本名はジェイドで、剣聖デイノ・カランの孫かつエディア王家の名前を持ち、ライラという姉がいたことが明らかになる。
ジェイドについて調べることにしたフォルスたちはかつて彼が住んでいたと思われる、デイノ・カランの公開稽古が開かれた闘技場がある区域にやってきた。そこで犬を連れた男性に会い、彼がジェイドの父に師事していたことが明らかになる。彼によれば連れている犬はかつて彼が飼っていた犬の子孫だという。「昔飼っていた犬の名前」を偽名にされたフォルスは当時の犬の名前を尋ねると、男性はスキロスとキオンだと教えてくれた。
ジェイドと上級騎士だったティロが完全に結びついたことで、フォルスとセラスは彼が何を思ってリィアで剣を持っていたのかに思いを馳せる。災禍の際に港の端から端へ走ったという話を思い出し、再興されたエディア港を歩く2人の前に独り言を話す不審な男が現れる。彼こそ尋ね人のティロことジェイドであった。
薬漬けで世捨て人同然になっていたジェイドは2人にティロの母親に会った話をし、フォルスを姉の埋められている場所へ連れて行き、当時の詳細な話を聞かせる。しかしビスキへ渡った経緯やトライト家を全員殺したことについては口を開かなかった。このまま野垂れ死ぬ覚悟であるジェイドをフォルスは説得し、一度首都へ連れて帰る。
その夜、フォルスから逃げようとしたジェイドはセラスに捕まる。セラスはジェイドの中の憎悪が想像以上に強かったことを知る。ジェイドは立ちはだかるセラスから逃れ、姉の埋められている廃屋までやってくる。そして全てから逃れることを決め、空を仰いだ。
〇有明編リンク
https://kakuyomu.jp/works/16817330656813658108/episodes/16817330663557813493
○キャラ動向
フォルス/キオン(16)
元リィア国第二王子にして現在身元不明の彼もようやく主人公を見つけることができました。何故彼がここまで躍起になって彼を探していたのかというのを、セラスは「何か別のことを考えていないと自分が置かれている現状を見つめてしまうからでは」と推測していましたが、彼自身は「どうしても言いたいことがある」「この疑問を解消しなければ死んでも死にきれない」と何かしらものすごく大事な用があるみたいです。彼の本音が聞けるのはしばらく先になりそうです。
セラス(23)
ティロ・カルディアの調査ついでにエディアの剣技について大いに見聞を深めたかったオタク剣士。今回のエディア行きには半分以上邪な理由がありましたが、フォルスの付き添いとして立派に責務を果たしました。どうしても今回はオタクな面がクローズアップされましたが、彼女も亡国の剣士であり、立場としてはティロとかなり近い部分があります。彼女とティロが再度剣を交えることはあるのでしょうか。
ラティ(26)
災禍で亡くなったとされるティロ・カルディアの妹。彼女の話から災禍が直接的な被害だけではなく、多くの悲しみを生んだことがわかりました。彼女も「母をつなぎ止められなかった」という罪悪感の中で生きています。エディアの人は多かれ少なかれそんな思いを抱えているみたいです。
ステラ
歴史資料館の管理人にして元王女付きの女中筆頭。当時のエディア王家の話が詳しく聞けました。彼女が騎士一家というものにあまりよくない感情を持っているのは、当時のエディアでは彼らや軍部へ権力が偏っているために王家がないがしろにされていると彼女が思っていただけで、特に深い理由はありません。
サロス
昔カラン家に付いていたという元上級騎士。そして彼らが飼っていた犬の名前がキオンとスキロスだと教えてくれました。そして彼らを保護して大事に飼い続けていたようです。
ティロ/ジェイド(28)
ようやく身元がわかり、久しぶりにその姿を現しました。
その正体は災禍で行方不明になったとされる、エディアの王族であり剣聖デイノ・カランの孫でもあるジェイド・カラン・エディアでした。彼はその正体をずっと隠して、同じく災禍で亡くなったとされるティロの名前を借りてリィアで生きていました。正体が露見すれば即処刑されるような極限状態で彼は常に生きてきたため、常に警戒心を顕わにしていたようでした。
ちなみに事件編で彼はこのような結末を辿りますが、これはフォルスに正体を突きつけられるまで誰にも心を開くことが出来なかった故の結末です。全容編ではその心境を余すことなく見ていくことで彼が本当は何をしたかったのかが明らかになります。
○名前表記について
今回主人公の本名が発覚し、ついでに姉の名前がライラであることもわかりました。そうすると、もういろいろややこしいことになってるんです。
正直地の文でも彼らの呼称をどうすればいいのか悩むくらいにはこの話は同名だの偽名だのが氾濫しています。地の文では原則「対外的に認知されている名前」を採用しており、例えば正体が発覚してからはフォルスもセラスも主人公をジェイドと認識したために彼は地の文でティロからジェイドになりました。そんな感じの描写がこの話は最後の最後まで続きます。
とりあえずこの解説では以降わかりやすさをメインにしたいため、原則以下の通りに表記していきます。
主人公のティロ・キアン/ジェイド・カラン・エディア→「ティロ」
ティロ・カルディア→「元ティロ」
発起人ライラ→「ライラ」
ジェイドの姉のライラ・カラン・エディア→「姉ライラ」
ちなみにフォルスは「キオン・スキロス」という偽名で通していますが、彼の周囲にいた人物が彼を「フォルス」と認識しているのと彼は本当はフォルスであると読者に覚えてもらいために地の文はずっとフォルスで通してきました。ティロも「レキ・ラブル」という偽名があるため、地の文で2人をレキとキオン呼びする時もそのうち訪れるかも知れません。この名前での大混乱は今後の展開でまだ発覚していきます。
○内容解説
《第1話》
「シェールの過去……」
→セラスがあらすじを語ってくれたのですが、最悪です。要は誰からも真面目に世話をされることもなくシェールは妹を守りながら14歳まで過ごしていたそうです。そのせいで極度の人間不信に自殺未遂を繰り返していたとのことで、セラスがティロに感じた「似ている」の根幹がこの辺りにありそうです。彼の過去に関してはしかるべきタイミングで詳細なことが明らかになる予定です。
「寒いですよ」
→オルドの首都も高地にあるため、コール村ほどでありませんが雪が積もります。そう言えばコールで雪だるまになっている人もいましたね。
「深い深い事情」
→執行編でシェールとセリオンが別れるシーンがありましたが、ここでわかった事情だけを汲むと「捨て子同然で誰にも心を開くことができなかったシェールを一生懸命真人間に戻したセリオン」ということがわかってきます。この2人の関係については後々深く深く掘り下げていきます。
「フラフラいっちゃうんです」
→ティロが重度の薬物依存症をであるという話がありましたが、シェールの場合は女性依存症のようなものがあるとセラスから明かされました。一体彼に何があってどうしてそんなことになったのかのあらすじはセラスの話の通りですが、妹と母親にかなり屈折した感情を抱いてることは確実です。そう言えば外交官時代に彼女がいたと思うのですが、この彼女とどういう関係だったのかというのは後ほど明らかになります。
「アレはあなたの仕業ですか!?」
→つまりやっちまってるんです。実際自分と似たような境遇の子供がいるというわけで、今後この二人をどうしていくかっていうのも実はこの作品の軸だったりします。
「宿場」
→休暇編でも登場しましたが、まだまだ馬がメインの移動手段になっているこの世界では各地に馬の休憩所、つまり宿場があります。厩があって馬の餌や水の補給、ついでに人も休める施設になっています。要はドライブインです。この宿場は昔は首都直前ということでそこそこ賑わっていましたが、鉄道の開設と共に廃れたのと経営者が老後の喫茶店のノリで始めたようなところがあり、しばらく捨て置かれていたのを皆が忘れていったというのがこの建物の設定です。峠道などにある「休憩・うどん・そば」と書いてあるのにシャッターが下りている廃墟をイメージしてもらうとわかりやすいです。高速道路が通る前はそういった休憩所も賑わっていたのでしょうね。
「雑草が何度か踏みしめられた跡」
→最後まで読めばわかると思うのですが、何度もこの廃墟を訪れていたのはティロでした。不審者には変わりないのでセラスが一刻も早く立ち去りたいと思う気持ちはわからないでもないです。
《第2話》
「階段の手すり」
→これは災禍のモデルのひとつである「ハリファックス大爆発」からのエピソードで、港で大爆発が起こった際に窓ガラスが粉々になって窓の側にいた人々にガラスの破片がが降り注いで失明した人が大勢いて、そこから目の治療や目が見えない人の対応などの研究が盛んに行われたという事実が元になっています。他にもこういった大災害の後に医療や福祉などが発展することはたくさんあります。
「快刀剣士レーケンス、ソレルスとキトルス」
→どちらも大人気剣豪小説。剣士にとってはドラゴンボールとかワンピースみたいなものです。この世界の大衆小説は現代日本で言うところの漫画ですので、第二王子だったフォルスは漫画なんか読んでる立場ではなかったということです、一応。
「意外とみんな歴史に冷たいですね」
→この時点でセラスの感覚としては新撰組のお墓参りに来るオタクくらいのノリでした。シェールもそれを知っていたのでセラスにティロ調査ついでにエディアに行かせたという経緯がありました。まさかそのお墓に入っている人が尋ね人だとは思いもしなかったと思います。
「災禍生まれ」
→現代でも大きな災害のあった日が誕生日だと祝いにくい、みたいな話がありますがそれと一緒です。そして彼女は占領下のエディアで育ったため、新政府によって解放されたとしても復興を行ったのはリィアであって、エディア王家は死んだだけで何もしていないじゃないかと思っています。今でもそんなような話はどこにでもありますね。
「災禍はリィアによって引き起こされた!」
→この辺をよく読むと、「リィア軍とエディア軍が国境付近でにらみ合っていた」ということが市民レベルでわかるのは新政権発足後なんですがティロは新政権なんて存在しない時期にレリミアに「エディアとリィアは当時開戦直前であった」というようなことを言っています。何故お前がそれを知っているのだ、ということになればやはりティロの正体はそれを知っていてもおかしくない人間、つまりエディア軍に身内がいたという推測が成り立ちます。どうせ何も知らないだろうレリミア相手に口が滑ったんでしょうか。
「被災者会館」
→当時の状況を記したものや被災者のリスト、復興計画の資料などが収められています。最初は行方不明者の情報交換の場になっていました。エディアの市民はもちろん、外国籍の船員たちの会社関係者も連絡の取れなくなった船を探してここまで探しに来たみたいです。おそらく元ティロのお母さんも足繁く通ったことでしょう。
「ティロ・カルディア」
→結果的に彼は尋ね人と一切関係はありませんでした。彼に関しては戦中戦後に日本で機雷の除去中に爆発が起こり、民間人が多数犠牲になったエピソードが下敷きになっています。不発弾の除去ということでたまに避難の指示が出ますが、真面目に危険なので大人しく従った方がよいでしょう。
「だから大変だって言ったじゃないですか」
→フォルスは明言しませんが、祖父がこれだけの民間人の虐殺行為を指示していたとなればやはり生きた心地はしません。ただ、本当に災禍は陰謀だったのかそれとも事故だったのかは現段階ではよくわからないとしか言いようがない状態です。
《第3話》
「騎士一家の女性」
→要は相撲部屋のおかみさんみたいなことが要求されるわけです。実はこの話はここで終わらず、どこかで再度問題になってきます。
「ティロの正体」
→つまるところ、彼はシェールやフォルスと立場としては全く同じであることをずっと隠していたわけです。フォルス曰く「言わなかったんじゃなくて、言えなかった」に気がつくと「正体を言えない理由がある→言えば死ぬ→処刑対象である」という推測が立てられたかなあと思います。探求編で結構ヒントばら撒いたので……。
彼の家族について序章で「たくさんの正装した人に囲まれて、父と姉と共に母の葬儀を行った記憶がある」ということで、このような家庭環境の場合は例え親が死んでも世話をする人が他にいるため、捨て子のキアン姓になる可能性は非常に低いです。そこで「家名を隠している」可能性が高まります。更にシェールには「身分を明かしても処刑対象にならないためにリィアを滅ぼす」という動機がありました。彼には彼で別の複雑な事情がありますが、これはティロにも全く当てはまることでした。セラスが「似ている」というわけです。
《第4話》
「デイノ・カラン」
→セラスが休暇編でちらっと名前を出していたのですが、これは野球や将棋をやってる奴が大谷翔平や藤井聡太に興味がないくらい不自然なことだったのです。更に「剣豪小説なんか興味ないぜ」という態度だったにも関わらず、予備隊では熱心に剣豪小説を読んでいたという証言もありました。つまりティロは意図的にデイノ・カランも剣豪小説も興味がないふりをしていたわけです。このときの彼の心情は如何ばかりだったのかをセラスが想像して泣いているのですが、実際はどうだったのかというのは後ほど全容編でのお楽しみです。
「災禍の疑惑」
→ティロは完全にリィアの陰謀であると思っていますが、実際のところは何もかもが吹っ飛んでいる上にリィア軍が都合良く調書を作り上げて新しく港も街も造ってしまいました。そのため「災禍はリィア軍が仕組んだものである」と証明するのはかなり難しい状況です。全容編ではその辺についても少し触れる予定です。
ちなみにセラスが「デイノ・カランの弟子がたくさんいたから負けるはずがなかった」というようなことを言っていますが、積怨編でティロ曰く「剣技は最小単位の戦争で剣技が得意な奴が多い方が戦争は有利になる」というようなことを言っています。要は相手の出方を先読みしまくって叩くのが喧嘩のコツということです。
「レグ兄様」
→アルゲイオ家の三男。そしてセラスをここまでオタクにしてしまった張本人。セラスは剣士は皆剣豪小説を自分くらい熱心に読むと思っていますが、もちろんそんなことはありません。ちなみにシャスタやリオは有名なものを話の種に一応読んでいるくらいですが、やはり剣を持つ者として全く剣豪小説に興味が無いのは不自然みたいです。
「この人は歴史の生き証人なんですよ!」
→この時のセラスのテンションは「新撰組の推しのお墓参りに来たらちょうどその子孫がやってきた」くらいの感じだと思ってください。大混乱です。
「カラン家の圧」
→カラン家の人間はデイノ・カランを始め独特の圧を持っていたようです。特に剣を持って立っているだけで威嚇されているような気分になったそうです。ティロが剣を持っているときだけ別人、というのはこの圧があったからみたいです。ハンドル握ると性格が変わるプロドライバーみたいな奴です。
「犬の名前!」
→実はこの話、犬の名前だけじゃなくて「名前をつける」ということそのものが大きなテーマになっていたりします。例えば20年間本名を名乗れなかったジェイドやそもそもが偽名である発起人ライラ、ややこしい事情のあるシャスタや犬の名前を付けられたフォルスなどが既に登場していますが、これ以降もこの「名前をつける」が最重要ポイントになってきます。
「酒瓶抱えて独り言」
→全容編ではこの辺りは全部書かれるのですが「そんなにティロは激しく病んでいたのか?」と不安になっている方もいらっしゃると思います。だからライラさんが執行編で「社会のゴミ」と言っていたんです。
《第5話》
「皆自分のことで精一杯だったから、仕方ないよな」
→予備隊で「いい奴」と言われていましたが、こういうことをさらっと言えるあたり彼は本当に「いい奴」なのです。本来はかなり思いやりがあって、他人を気に掛けているけれども本人は全く意識していない。他人からすれば嫌味に思えるような善意に溢れた奴なんです、本当は。
「ティロは本当に生き埋めから自力で逃げられたの?」
→生き埋めと一言で言っていますが、土に埋められた上に左腕を折られていてどうやってジェイドは生還したのかという謎があります。積怨編では「埋め方が甘かった」とありますが、その辺の事情は全容編で明らかになります。
「これはお前にも言えない」
→何度もフォルスは尋ねますが、ティロはどうしてもトライト家全部を抹殺した理由が言えないようです。言う気分じゃないとか秘密にしたいとか、そういう理由を超えて「言えない」何かが存在しているみたいです。つまりレリミアを誘拐した理由についてはっきりわかるのは全容編です。
「たかだか上級騎士隊筆頭の分際で」
→ティロはザミテスが自身を厄介者扱いしていることを知っていました。もしザミテスがゼノスやラディオ並にティロを扱っていたら、この結末はなかったかもしれません。
「発起人ライラは本当にそれだけで反乱を企てたの?」
→そうとしか言い様がありません。そして事件編で明らかになっているとおり、発起人ライラは自発的に様々なアクションを起こしているのでシェールの考える「黒幕はティロ説」は実は当てはまりません。この反乱自体には事件編だけでは全く見えてこない事情が存在しています。そしてティロもそれを知らないみたいです。
「下手なんだよ、名前付けるの」
→先ほども書いたとおり、この作品のテーマのひとつに「名前」があります。ここに来て素を出してきたティロはこの名前をつけるということを非常に苦手にしているという最大の欠点があります。その名付けのセンスがどのくらい酷いのかは今後明らかになると思われます。
○挿入話について
事件編、全容編、完結編のそれぞれ終章前に「もしもの世界」ということでIF話が挿入されます。今回は「アルセイドとジェイドが共に生き延びたら」という世界の話です。アルセイドが生き延びることでエディアとしてはリィアに対抗する意志が育ち、リィア打倒戦線はアルセイドを中心に組織されることになります。そして実質上死亡したとされるアルセイドとジェイドは地下組織でエディア復興の切り札として大事に育てられます。
大事に育てられたのでジェイドはグレて薬物依存にも不審者にもならず生きてきたのですが、代わりに地下に隠れて暮らす生活を余儀なくされました。この世界では生き埋めにされていないために地下恐怖症も不眠もありません。ジェイドが地下で生活している、ということが本編とこの世界の一番の違いですね。
そして初顔見せになったオルドの重要人物ビュート・アルゲイオ。セラスの兄さんで、作中ジェイドとまともにやり合える貴重な存在です。ただこの世界のジェイドはそれなりに鍛錬していますが本編のように予備隊で爪剥がされながら鍛錬していないため、本編ティロより剣技の腕はありません。その代わり大親友のアルセイドを守り抜いたという達成感からの力強い自信とプライドがあります。ただこの結末だとティロと出会えないシャスタやライラが全く救われず、おそらくフォルスは処刑される運命の世界です。皆が幸せになるのは難しいですね。
○終章について
「残月で突然しゃべり出したティロは一体何?」
→これは全容編への布石です。そしてライラとゼノスが見かけたティロの不審な行為を思い出すと、一言で言えばまともでない精神状態なわけです。全容編はそんなまともでない精神状態に加えて薬物濫用の件と事件編では語られなかった超絶理不尽展開が加わります。
「フォルスを助けた理由」
→これは本心から出た理由です。要は「俺だけが不幸な目に合うのが許せない」という八つ当たりなのですが、その辺は本人しかわからない細かい心情のグラデーションがあるので、全容編以降で彼が本当のところはどう思っているのかを確認する必要があります。
「最後……」
→ごめんなさい、もうこれははっきり言ってバッドエンドです。ティロ/ジェイドの中の憎悪が消えずに全てをフォルスにぶつけようとした結果、自分が心底嫌だった経験をフォルスにもさせてやろうという最悪の結末です。「お前、俺のこと好きなのか」で完全に決意を固めたようですね。本文を読むだけだと暗示程度ですが、はっきり言って自決しています。ただ、本人的にはエディアに帰ってきて姉のそばに来れたことだけでも相当幸せな結末であります。ちなみにこの結末だと、この後セラスは二度と剣を持てなくなって、フォルスは精神的に再起不能になります。ただ、全容編以降で語られる彼に対する理不尽が相当なので、彼なりの最後の八つ当たりがこの結果です。
ただ、これではあんまりなので全容編では事件編と多少展開が異なり、フォルスに語れなかった彼の事情が全て明らかになります。そうすることによって、彼はこの悲惨な結末を回避することができます。
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