第5話 違和感の正体

 セトラ・アカ・グランロッサはこっそりと消灯後の病室へ帰還し、病床の上で寝転がっていた。真っ暗な天井を見て考えるのは、これまでの会話から感じていた違和感の正体についてである。


(キリルの親父さんはウスタリーの近くの町で野盗に襲われて、キリルたちもウスタリーの外で野盗に襲われた。おかしい……流石に野盗が多過ぎやしねえか?騎士団は何してる?)


 かつて彼もグランロッサ領辺境に潜んでいた強盗団を摘発するため、騎士団と協力して問題に対処した経験がある。


 強盗、野盗の類は都市部より田舎の方が目撃証言が集まりやすく、居場所や正体が突き止めやすい。尚且つこの手の輩の拠点は大体襲撃地点からあまり離れていない場所にあるものだ。ウスタリー周辺で活動している件の野盗も拠点は近隣にあると考えられるため、騎士団のマンパワーを活かせば発見はそこまで難しくないはずである。


(こうなると野盗側に余程頭の切れるヤツがいるか、騎士団の動きを知ってるヤツがいるって考えるのが自然だよな。想像してたよりきな臭いな、この町。キリルが言ってた通り、身分証の問題に対処したら早いとこ出た方がよさそうだ。)


 少なくとも明日は検査があるため、実行は早くても明後日からとなる。そこからの行動を色々と考えていると、不意に病室の外から何者かの気配を感じた。かなり微弱ではあるが辛うじて魔力もある。


(こんな夜更けに誰だ?)


 音を立てないようにそっとベッドを降り、病室の入り口にほど近い壁際へ移動した。そこで意識を集中させ、向こう側にいる相手の正体を探る。


(マズイな。詳細は掴めねえけど、こんな魔力の感覚はウスタリーに来てから初めてだ。どうする。いっそのこと、今ドアを開けて直接確認するか。)


 気配はまだドアの向こう側にある。


 彼は意を決し、即座に迎撃できるように身構えながらスライドドアを開いた。


 そこには懐中魔灯を携えた看護師が立っていた。


「ひゃっ……」


 彼女は驚いて身を竦めた。


「あっ、すみません……!」


 慌ててセトラは一歩退き謝罪した。


「ど、どうされました?こんな夜更けに。」


「いや、その……ちょっと催してしまって。」


 看護師からの問いに対し、咄嗟にセトラはもっともな嘘で返した。同時に一応魔力を探ってみたが、既に看護師からもこの場からも先ほどの特異な魔力反応は消失していた。


(霊でもいたのか?別に必ず降霊魔術を使わなきゃ霊が出てこれないわけじゃねえし、夜で病院なら出やすい環境は整ってるか。)


「あの、変な質問をするようで悪いですが、ずっとこの病室の前に立っていましたか?」


「私はたった今通りかかったばかりですが、何かあったんですか?」


「……いえ、何でもありませんよ。すいません。ちょっとトイレに行ってきますね。」


 そう言ってトイレへ向かう道すがら、廊下や他の病室などを検めた。だが目視できる範囲内でも、魔力を探知できる範囲内でも異常は確認できなかった。


(それか気のせいだったりするのかもな。今日は今日で色々あったし、明日も検査で立て込んでるし、今更だけどさっさと寝るか。)


 それからすぐに病室へ戻り、床に就いた。翌朝、目が覚めた時も特に異常はなかった。


「おはようございます。」


「おはようございまぁす。」


 朝食を食べ終えて手持ち無沙汰になりつつあったところ、最早見慣れた地方騎士の二人が訪ねてきた。眼鏡を掛けている男がジョレス・アルダーノフで、金髪をボブカットにしているギャル風の女がノンナ・トマシェフスキーである。


 セトラにとっては昨日の午前中まではあまり好印象を持てない人たちだったが、少しずつでも流れが好転した今では大して悪印象は抱いていない。


「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」


 そんな二人に続き、背の高いスーツ姿の中年男性が現れた。男は強めのスパイラルパーマが当てられている黒い長髪を七三に分け、真っ黒なレンズが特徴的なモノクルのサングラスを左眼に掛けていた。右手には黒い革手袋を嵌めており、少し変わった雰囲気がある。


「そちらの方は?」


「お初にお目に掛かります。この度検査に立ち会わせていただく運びとなりました。ウスタリー支部と協力関係を結んでおります、魔術師のイヤロス・ドルガノフと申します。よろしくお願いいたします。」


 イヤロスは人好きのする爽やか笑顔で、丁寧に頭を下げた。


「あなたがイヤロスさんですか。お名前は伺っていました。セトラ・アカ・グランロッサです。」


 対してセトラも会釈で応じた。


「イヤロスさんはウスタリー支部以外の支部の騎士団にも協力してもらってるんですよぉ。」


「それはすごいですね。どのような系統の魔術をお使いになるんですか?」


「基礎的なものは一通り使えますが、最も得意な魔術はやはり水属性魔術になりますね。」


 セトラなら闇属性、アディプトなら土属性の魔術をメインで使用するように、一般的に魔術師は自身で生成できる魔力の属性と一致した魔術を得意としている場合が多い。得意分野を伸ばしながら苦手分野もある程度克服するというのは魔術師としては至極真っ当なスキルアップの方針でもある。


 セトラとて過去に無数の討伐作戦へアサインされているほどの実力者だが、純粋な魔術師としての技術を認られているわけではなく、空中を高速で飛び回りながら大威力の攻撃を連発するお手軽移動砲台としての役割を求められているように感じていた。故に魔術の専門家である魔術師として生計を立てている相手には誰でも興味を示す節があった。


 こうしてにこやかに会話を交わしている最中、マキシム医師が看護師数名を連れて現れた。


「準備が整いました。皆さん、検査室へどうぞ。」


 病室にいた数人に未だ意識の戻らないアディプト・アカ・グランロッサを足した面子は三階の病室から二階の検査室へ移動した。


 検査室には大型の検査用魔道具が並んでいた。


「それでは最初に検査内容について説明します。」 


 二人が受ける検査は四種類あった。一種類目は、透視魔術を応用した魔道具を用いて二人の体内にある空白アルズウェック器官を直接確認する検査。二種類目は、体内にエーテルを除く六属性の魔力をそれぞれ流し、この時の抵抗値から体内にある術式の属性を調べる検査だ。三種類目は、一種類目の検査で判明した術式の属性に対応した魔力を流し、術式の性質を調べる検査である。四種類目は、血中に含まれる魔力神ソトノに連なる因子を確かめるための血液検査となっている。


「皆さんが誤解されるのは、空白アルズウェック器官は単なる術式ではなく、胃や腸と同じ器官の一種だということです。我々が手を開き、足で一歩を踏み出せるように空白アルズウェック器官もまた意志に応じて形状を変化させることが可能です。この特性を利用して体内で術式を自在に組み換えておき、後は器官へ魔力を流すだけで任意の魔術を使用できます。」


 一般的な魔術師であれば生まれ持った術式は一つ、多い者で二つであることを考慮すると、術式を自在に組み替えられる空白アルズウェック器官が如何に破格の機能を有しているかが分かるだろう。


「検査時、こちらからの指示でセトラさんには器官を動かしてもらいます。よろしいですか?」 


「構いません。でも姉はどうするんですか?まだ昏睡中なんですが……」


「あくまでもリアルタイムでの変化は、空白アルズウェック器官は本物であるという事実を補強するために行なっていただきます。器官の有無自体は血液検査ではっきり分かりますので安心してください。」


 そこからすぐにセトラたちの検査が始まった。


 一連の様子をイヤロスたちは別室でモニタリングしていた。


「まさか……」


 別室の壁面モニターに表示されたそれぞれの空白アルズウェック器官を見て、イヤロスは開いた口が塞がらなかった。


 アディプトのそれは全身に隈なく張り巡らされており、さながら人型の等身大ワイヤーフレームの如き形状を取っている。器官を極限まで拡張し、ただでさえ多い魔力回路から更に派生させて全身のどこへでも魔力を流せるようにしている。


 セトラの場合も追加の魔力回路として運用している点は変わらない。彼は器官を本来の魔力回路に沿わせる形で展開しており、一度に出力できる魔力量の上限を上げるという純粋に魔力回路を増設する形で用いていた。


「センパイ。これって魔道具の故障とかじゃないですよねぇ……?」


「……今後の検査結果も待たなければ断定はできませんが、あの二名はグランロッサ家に連なる方々である可能性が高いのは間違いないでしょうね。」


「で、でもおかしくないですかぁ?聴取で言ってましたよねぇ。セトラさんが次期頭首で、その前はお姉さんが継承権を持ってたって。あのグランロッサ家でそういう立場なら、あたしたちのところにその話が聞こえてこないのは変ですよぉ。イヤロスさんは知ってましたぁ?」


「…...自分も存じ上げませんでした。セトラもアディプトという名も、一度も聞いた覚えがありません。しかしこれほどの術式を見せられたら認めない余地はありませんね。」


 モニタリングルームでこのような一幕があった間も検査は順調に行われ、昼過ぎ頃には全ての行程が終了した。


「お疲れ様でした。それでは検査で得られたデータを分析し、最終的に空白アルズウェック器官を保有しているか否かの判断を行いたいと思います。全てのデータ分析が終わるまで数時間掛かり、大体夕方頃には終わると思います。それまでもう暫くお待ちください。」


 検査台から起き上がり、セトラは大きく伸びをした。


 対照的に隣の検査台にいたアディプトは眠ったままだ。


 彼は黙っていれば美人な姉の顔へ無意識に手を伸ばした。こうして直接触れるのは実に三日ぶりで、指先から彼女の体温と魔力がじんわりと伝わってきた。血色も初日に見た時よりよくなっている。


「……ったく、いつまで眠り呆けてるんだか。」


 それにも関わらず一向に起きない彼女からはどうしても不安を掻き立てられる。


 セトラは不安を振り払うべく、アディプトの膝裏と背中で腕を回して抱き上げた。未だ本調子ではないせいか、久しぶりの彼女は見かけ以上に重く感じた。


「私どもで病室まで運びますよ。」


「……いえ、ここは俺に運ばせてください。」


 姉の匂いが微かに香る。彼女は確かに生きている。


「……」


 ガラス張りの病室へ運び込み、ベッドにそっと寝かしつける。いつもならむにゃむにゃと何か言うところ、沈黙を保っている。


「またな、姉ちゃん。」


 そう言い残してアディプトの病室を出た。


 彼らの後にはジョレスたちが付いてきていた。


「……で、どうですか?正式な結果が出るのはまだ先ですが、試験の過程は見ていましたよね。」


「グランロッサ家に連なると主張する方々が実際にグランロッサ家の血族にしかない器官を持っていたなら、無礼な対応は控えるのが無難ですね。」


 答えたのはジョレスだ。


「だったら今まで隠していた諸々の事柄について教えていただけませんか?それとも今尚、部外者だから教えられないなんて言います?」


「センパイ。勿体ぶらないでもう全部言っちゃいましょうよぉ。あたしぃずっと権力者っぽい人に職務上の正しさを優先して抵抗するとか嫌ですよぉ。」


「ノンナさん。一応あなたも正規雇用の地方騎士なのですから滅多な発言は慎んでください。……ですが、ここまで証拠が出揃うとデータベース側にも疑う余地が出てきます。暫定的にセトラさんたちをグランロッサ家の方々として、判明している範囲の情報を開示します。部外秘の情報ですので、場所を変えましょう。」


 そして一向は騎士団の公用車に乗り込んだ。面子は「自分は検査に関するより詳細な資料を貰いたいので病院に留まります。」と断りを入れたイヤロスを除く、セトラ、ジョレス、ノンナの三人である。一行は道中で定食屋に入り舌鼓を打った後、ジョレスの奢りで会計を済ませてから騎士団の詰所に移動した。詰所には談話室があり、三人はその部屋で現在判明している情報の共有や今後についての話をすることになった。


 談話室はテーブルを挟んで対面で座るように一対の椅子が置いてある部屋だ。窓に内側から鉄格子が嵌っているわけでもなく、白を基調としており開放感がある。


「どうぞ、お掛けください。」


 セトラは上座に座り、向かい合うようにしてノンナが下座に座った。ジョレスは資料を取りに行くため、談話室へ案内してから席を外していた。


「……」


「……」


 セトラとノンナとでは若干の気まずさが間に挟まっていた。振り返ってみれば、職務上仕方がないとは言え、そもそも二人はセトラにあまり好印象を与えていないところから関係性がスタートしている。先の昼食を経てセトラのジョレスに対する好感が若干高まったことも相まって、ノンナはバツの悪さを感じていた。


「……あの、一ついいですかぁ?」


「何です?」


「本当にグランロッサ家の人なら、初日に言ってたことも嘘じゃないんですよねぇ。」


「最初から俺は嘘を付いてませんよ。あなたなら魔眼で分かるんじゃないですか。」


 彼は真正面からノンナの紺碧の瞳を見た。


「そうですけどぉ……あたしの魔眼も絶対じゃないんですよぉ。嘘付いてるってわけじゃなく、事実じゃないことを本当のことだと思い込んじゃってる人とかは魔眼で視ても分からないんですぅ。……でもグランロッサ家の人なら、最初から事実を話してたってことですよねぇ。」


「はい。俺はロンドレイツを襲撃され、力及ばずにウスタリーまで逃げてきました。嘘は一つもありません。」


「グランロッサ家ではセトラさんが次期後継者の立場で、お姉さんが元々は後継者の立場だったのも言葉通りの意味なんですよねぇ。貴族の方々同士の会合、王都帯ゼレハフトで以前あったような大規模な会合には参加していましたかぁ?」


「よほどのトラブルがない限りは基本的に家族で参加していましたよ。」


「そうですかぁ……」


「尤も……分からないのも無理ないですけど。」


「おや、二人で何の話ですか?」


 資料の入ったファイルを携えたジョレスが帰ってきた。


「ちょうどよかった。昨日までは単なる世迷言で済まされるだろうか言いませんでしたが、二人に予め話しておきたいことがあるんです。」


 そこでセトラはアディプト共々存在を抹消されている可能性について打ち明けた。発言が持つ説得力が増した現在でも彼の言葉は当初、すんなりと受け入れられるものではなかった。だが繰り返して丁寧に説明していく内、不理解の風向きが段々と変わっていった。


「とどのつまりロンドレイツを襲撃した輩が使う異能の影響を受け、セトラさんたちは最初からこの世界にいない者として扱われることになった……という理解でよろしいですか。」


「その通りです。敵の能力の詳細については不明ですが、何らかの方法で記憶と記録に干渉していることは間違いないと考えています。」


「……筋は通っていますが、あまりに荒唐無稽過ぎる話です。」


「ロマンフォルクス王国では個人情報は全て、王都帯ゼレハフトにあるセントラルデータベース“アレス”に記録されます。アレスには極めて強固なセキュリティが敷かれており、原理上不正アクセスはできませんし、況してや改竄なんてできるわけがありません。地方騎士団だって参照したデータベースもアレスそのものではなく、アレスに記録されたデータを閲覧しかできない形に変換した別のデータベースですよね。そしてアレスの影とでも呼ぶべき別のデータベースでさえ、公的機関であっても易々とはアクセスできません。何よりデータを削除したからといって、人々の記憶からも消える現象に説明が付きません。……けれど、それは魔術の常識に基づいた場合の話です。敵の使う力は魔術ではありませんでしたから、魔術の範疇では想定できない事象が起こったとしても不思議じゃないありません。」


 ジョレスたちは沈黙していた。「ありえない。」と一言で切って捨てられたらどれほど楽だろうか。しかし通常起こるはずのない不可解な事象が現に起きてしまっている。やがて開口したのはジョレスだった。


「あなたの話を完全に信じたわけではありません。……ですが、何か大きな力が当方の与り知らぬところで動いているのは間違いなさそうですね。」


 彼はファイルから取り出した資料を手渡した。


「これは……地方騎士団本部同士の通信ログですか。」


 地方騎士団の本部同士は有事の事態に備え、隣接する本部間に直通回線を繋げている。回線に異常があった場合に速やかに発見し対処するため、併せて日常業務の中で通信を行い習熟度を上げて非常事態でも円滑に通信が行えるようにするため、本部間では日に二度、朝と夜に通信を行っている。


「見てもらいたいのはあなたたちがウスタリーに来た日から今日まで、ウォーノン本部からの定時連絡がずっと途絶えているところです。」


 紙面を指差したところに視線を落とす。


 どうやら直近三日間の定時連絡がコミュニカッツア領内のドゥラ本部から行っているだけであり、グランロッサ領内にあるウォーノン本部からの返信は一切なかった。


「どうやらウォーノン本部からの連絡は他の本部にも届いていないとのことです。もちろん回線の異常を最初に疑いましたが、異常は確認できていません、そこで昨日、ウスタリー支部からもグランロッサ領へ騎士数名を派遣しました。昨日、ロンドレイツの現状について調査中と答えたのは、そうとしか答えられなかったからなんです。」


「時々朝や夜の連絡が来ない時もあるにはあるんですけどぉ、そういうのは大体担当の騎士のミスなんですよぉ。だから次の日になったら普通に連絡が届きますしぃ、三日も連絡がないのはどう考えても変なんですぅ。」


「よって当方でもウォーノンで何らかの異常事態が発生している可能性が高いと睨んでいます。あのグランロッサ家の本拠地で早々大規模な問題が起こるとも思えませんけど、グランロッサ家の人間である可能性が極めて高いあなたの発言ならある程度の信憑性はありますから。」


「少しは信じてくれてるって……そう思っていいんですか?」


「ええ。あなたの言葉の全てを鵜呑みにするわけにいきませんが、何もかもを疑うことはいたしません。身分証は現在も調査中ですが、昨日言われていた物品はお返しします。」


 こうして黒のディメンスィオ鉱石から削り出された片刃の長い直剣と、アディプトに一応餞別としてプレゼントしたティエレヂーノ鉱石製の指輪がそれぞれビニール袋に入って戻ってきた。


 セトラは指輪をポケットに仕舞い、剣については鞘と一緒にベルトで背中側に固定した。薄緑色の病衣との組み合わせはいまいち締まらないものの、慣れ親しんだスタイルは収まりがいい。


「あなたたちの身分についてですが、明日からは役所とも連携して改めて戸籍を取得してもらう予定でいます。流石にその際にグランロッサ姓を始めとする貴族姓の使用はできないとのことでしたので、それは了承願います。」


「まあ……仕方ないですね。」


 多少不服なところもあるが、事態は確実に好転していっている。初日とは比べるまでもない進歩だ。続いてセトラは二人から明日以降の流れに関して更に詳細な説明を受けた。説明は合間合間で彼が質問してこともあり、検査結果が出ると言われていた夕方まで行われた。


「さて、そろそろ病院に戻りますか。」


 そんなジョレスの一言と非常事態を報せるサイレンがけたたましく鳴り響いたのは、全くの同時だった。サイレンのすぐ後から詰所内の音響用魔道具から慌ただしい口調で放送があった。


『現在、ウスタリー全域で野盗集団の襲撃が行われている模様。出撃可能な騎士は直ちに現場へ急行せよ!繰り返す――』


 一行は立ち上がり、談話室を飛び出した。

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