第一章 この結婚、大丈夫ですか?
1-1
一カ月後。
馬車に乗ったアルマは、ひとり婚約者の元へと向かっていた。
(今日からお相手の
結婚式の日取りなどはまだ決まっていないが、少しでもお
必要なものはすべてこちらで
がたごとと
(コンラート・エヴァハルト……)
ヴェント領からはるか北方、大山脈を
古くは王族にも
(たしか三年前にお父様が
だが
(……どうしてそんな方が私に?)
念のため父親にも「
するとコンラート本人ではなく、その親族が「
(公爵の
以前パーティーで
改めて手元に視線を
詳細な家系図は記されていたが、コンラート本人の絵姿はどこにもなかった。
(縁談が来なくなって
彼の統治するエヴァハルト領は、
さらに
(なんでも彼に
しかし令嬢たちは「そんな問題のありそうな家に
(とても気難しい人なのかしら? でも
自らを取り巻く
馬車はその後も道中に点在する集落の宿へと立ち寄りながら、がたごとと進んでいった。
日にちをかけ、のんびりと
やがて明るく
(なんだかちょっと、
まだ秋だというのに山々は黒く、冷え冷えとした感じに。
街道沿いの木々も
そうして日が落ちる
(すごい……)
それらをぐるりと取り囲むようにして、長い
当然その先にも立派な並木が続いており、アルマはぽかんと小窓の外を
(家っていうか……森?)
しばらく走っていると木立を
庭園から少し
(……? あれはいったい……)
興味深く観察していたところで、ようやく三階建ての
黒い
四頭立ての馬車が三台は並びそうなだだっ広い車寄せに荷物と
すると
「ようこそお
「は、はい……」
恐る恐る
玄関ホールでまず目に飛び込んできたのは、主階段の踊り場に
黒髪の男性と、ドレスを着た美しい
おそらく三年前に亡くなったという、前エヴァハルト公爵とその妻の若き日の姿だろう。
(
(き、
二階の角部屋に着いたところで執事長が立ち止まり、コンコンとノックをする。
どうぞと導かれるままに、アルマは勇気を出して一歩を踏み入れた。
「し、失礼いたしま――っぐ!?」
「アルマ! よく来てくれたわ! 相変わらず
覚えのあるその
「お、お久しぶりです、クラウディア様……」
「無理と思っていたけど、申し込んでみるものだわあ!」
まさに力いっぱいの
部屋の奥にいた男性がそれを見て、「はあ」と
「クラウディア様、圧死させる気ですかいけない。そうねヘンリー」
すぐに
ふうと
ヘーゼルアイに
やがてクラウディアがうきうきと
「改めまして、わたしはコンラートの伯母のクラウディア。彼は
「そ、そうなんですね……」
クラウディアとヘンリー。
どこか対照的な二人を前に、アルマはこくりと息を
すると後ろに置かれていたテーブルから、一人の男性が顔を上げた。
(じゃあこの人が……)
良く言えば落ち着いた、悪く言えば
そんな中でも、きらきらと光を
世界一美しい蝶と呼ばれるモルフォ蝶の
その美しさに思わず
「―― コンラート・エヴァハルトだ」
初めて目にする公爵閣下はそれはそれは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます