ハート-心

 人生は選択の連続だ。

 キャンセルボタンも、

 リセットボタンも効かない、

 非情なゲームを僕はプレイしてきた。

 A、

 A、

 AA、

 AAAA、

 選択を続けているうちに、

 僕は主人公でないことに気がついた。

 どの道を選択しても、

 未来が真っ暗になっていることに、

 気がついた。

 僕の心の中、

 モノクロームなウィンドウに、

 二つの選択肢が現れるようになった。

 生きる

 死ぬ

 いや、これは、選択肢なんかじゃない。

 この質問が出るってことは、

 単純に、死にたいんだ。

 ルートを間違えた。

 僕のシナリオは終わった。


 終わっているシナリオの、

 くそったれのエンディングを見るために、

 僕は選択を続けることを諦めた。

 けれど、世界はそれを許してはくれない。

 人類が続くために、

 歴史のために、

 英雄譚のためだけに、

 ただの一人の人間は、

 働かなければならない。

 僕は「村人」になることにした。


 手術当日。

 僕の体をAIに任せる日。

 僕は、こんなことを聞かれた。

 AIに簡単な命令を与えることができると、

 個性を与えることができると。

 僕は言った。


「いのちをだいじに」

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