AAAA

あめはしつつじ

ダイヤ-欲

 あなたは、

 アバターで、

 数多の、

 アナザーに、

 AAAAは究極の人生ゲームです。




 僕は死んだ。

 いやー、今回も良い人生だった。

 クリアした回数は、

 一万回を悠に超えているが、

 ちっとも飽きない。

 どんな未来も思いのまま。

 一人一人の求める理想の世界を、

 AAAAでは生きることができる。

 さて、次はどうするか、

 最近はAIにおすすめされた、

 アナザーばかりプレイしているからな。

 選択肢が多い、というか、無限にある、

 というのも困りものだ。

 まだ、やったことのない人生って、

 どんなのがあるっけ?


 しばらく考えて、出た結論は、

 AAAAではプレイできないものだった。

 理由は単純明快で、

 僕は現実で、脳を肉体から切り離ログアウトし、

 文字通り、ゲームに没頭ログインしているからだ。

 まだ、肉体が残っていて、

 本来ならプレイするはずだった、

 現実の未来ってやつを知りたくなった。


 プレイできないなら、

 プレイしたことがあるやつに、

 話を聞けばいい。

 そう思ったけれど、このゲームは、

 他のプレイヤーに干渉することが、

 禁じられている。

 当たり前の話で、

 一人の欲望と一人の欲望が、

 両方とも成立する世界は存在しないからだ。

 諦めて、とも思ったが、一つだけ、

 このゲームで、他のプレイヤーが存在し、

 話を聞くことのできる場所があることに、

 僕は気づいた。

 ずいぶんと昔なので、

 中々思い出すことができなかった。

 それは、僕が、初めてAAAAをプレイした、

 現実と理想を結ぶ、道半ば、

 チュートリアルの村、

 はじまりの村。


 村は大都市になっていた。

 僕がプレイを始めた頃よりも、

 多くの人をこの世界に案内するために、

 ここまで、大きくなったのだろう。

 村の入り口には、一人の男が立っていた。

 うわー、懐かしい。

 この世界で僕が初めて会った人だ。

「ようこそ、はじまりの村へ」

「こんにちは、お久しぶりです」

 僕は挨拶をする。

「ようこそ、はじまりの村へ」

 彼は、それ以外の言葉を発さない。

 僕は、久しぶりの村へと帰った。


 おかしい、

 誰もいない。

 都市となった村の雑踏の中で、

 僕は、プレイヤーがいないことに気づいた。

 頭の上に表示されるプレイヤーネームを、

 設定でオフにしているわけでもない。

 ここにいる、キャラクターは、

 どうやら全員、NPCらしい。

 こんなに面白いゲームなんだから、

 新規プレイヤーは絶対いるはず。

 僕は待つことにした。

 村の入り口に戻り、

 はじまりの男の横に寝っ転がる。

 プレイヤーネームを、

『新規さん、起こして下さい』

 に設定し直して、

 僕はスリープを設定した。


「あのー、もしもし、起きて下さい」

 僕は目を覚ました。

 変な髪型をした、外国人が立っていた。

『ヨシュア』

 とプレイヤーネームがポップアップ。

「あっ、あっ、どっどうも」

 本当の人だ、と一瞬思ったせい。

 緊張でたどたどしい舌。

 名前、あれ? 名前?

 いくつもの人生をクリアして来たためか、

 自分の名前が分からなくなっていた。

「あっ、どっ、僕は、『起こして下さい』、です」

 仕方なく、記憶の一番上にある名前で、

 僕は自己紹介をした。

「ヨシュアです」

 と彼女?は返す。

「あの、ヨシュアさん、

 聞きたいことがあるんです」

 初対面の人にいきなり、不躾な質問だ、

 と僕はすぐに思ったが、続けて、

「今、現実は、どっ、どうなってますか?」

 ヨシュアさんは、ゆっくりと、答える。

「AAAAは究極の人生ゲームです。

 世界中の誰もがプレイしています。

 多分、私が最後なんです」

 ヨシュアさんは、指をさす。

 僕? じゃなく、隣の男。

「現実に人はもう、いません。

 AAAAの運営のため、

 定められた、アルゴリズム通りに働く、

 アンドロイド。


 『村人』しかいません。」

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