第12話 チームメンバー

「と、いうわけで新しくうちのメンバーになるエーマ君です。

はい拍手~」



パチパチパチという乾いた拍手が鳴り響く。

こんな雑な紹介があるものかと困惑したけれど、

メンバーのみなさんの表情をみるに、これが普通らしい。



うん、なかなかたのしそうな所みたいだ。

そう思おう。きっとそうだ。





試験に合格した後、タハラと合流して

少しだけ喜びを共有し、すぐに別の部屋に移動させられた。



移動させられた部屋にいたのは、これから一緒に仕事をしていく

メンバーの人達だ。



メンバーはわたしを含めて4人。一人はタハラで彼がリーダーらしい。

それで残りの二人とはわたしは初対面であったため、みんな自己紹介を

しようと話になって冒頭の雑な紹介に繋がるのだ。



ちなみにだがエーマ君はわたしの偽名だ。

もはや偽名なのかと疑いたくなるようなほど本名がかくれてないのだが

タハラがこれでいいと決めてしまった。



わたしはセリヌンティウスの方がいいと思ったのだが、



「そんな変な偽名つけるほうが目立つだろ、馬鹿」



と瞬時に却下された。

ひどくない?ひどいよね。

いい名前なのに、どこが変だというのだろう。



おっと、それよりもメンバーの紹介に移ろう。

残りの二人は1人は男性、もう1人は女性だった。



男性の方は私たちとおなじ年齢くらいの人だ。

メガネをかけて、ひょろっとしているインテリ系の印象だ。



女性の方は、女性というより少女という表現が正確のような

ひとまわり年下の子のようだ。両手を前に組んでおり、とてもかわいいけれど

可憐というよりは活発的な印象だった。



「レインです。よろしく」



「フン!! ルーナ!! 」


男性の方がレインさんで女性の方がルーナさんと言うようだ。

レインさんとは握手をしてすこし会話をし、

特に問題もなく最初のあいさつをおえることができた。



でもルーナさんには最初から嫌われているみたいだった。

握手どころか、会話も目すらも合わせてもらえない。



フン!!と横に顔を背けて

ムスッとした顔をされてしまう。



なにか気に障ったのだろうか?

といっても会ってまだ数分、そんな短時間でここまで

警戒されるとは。



仮面を付けていることが原因だろうか?

確かに1人だけ素顔を見せないのは、不快に思われてもしかたがないか。



「ルーナ、今日はいつになく機嫌がわるいね」



「そうだぞ、いつもは静かにって注意しても

静かにならないくらい元気なのに。どうした?」



「知らない、知らない!!」



ルーナさんは駄々をこねるように叫ぶ。

会話の内容から察するに、やはりいつもと様子が違うらしい。



うまくいっていたはずのチームの雰囲気を悪くしてしまったようだ。



「まあ、いきなり仲良くっていう風にもいかないもんだ。

だから親睦会もかねて、このメンバーで依頼に行こう」



タハラがこちらを気にするなという顔で見てくる。

・・・申し訳ない気持ちはある。

もしこのままの関係が続くようならわたしは別の所に行こうと思う。

無理矢理チームに入って居場所を作るのはイヤだから。


でもまだ仲良くなれるチャンスはあるはずだ。

だから諦めずにいこうと心に誓った。









ちなにみだが、私たちの仕事の内容は前にお手伝いにいっていた所と

似通っていて、なんでも屋のようなものだ。



ただこちらのほうが魔獣などといった人を害する

獣を討伐する戦闘の面が濃いみたい。



親睦会と称して私たちが受けた依頼も、魔獣に関する

ものだった。村が魔獣に襲われてしまい、けが人がでているから

助けてほしいという内容だ。




わたしたちがやることは村を襲った魔獣の討伐と

ケガをしてしまった村人の治療らしい。



幸いなことにケガ人の中には命にかかわる

ほど重体な人はいないらしい。



でも魔獣が再び村を襲うかもしれないから

急がなければいけない依頼だった。



そのためわたしたちは自己紹介を終えた後、

すぐにその村にむけて出発した。




「で、到着したわけだが」



数時間後、依頼の村に到着した。

さすがというべきか、かなり距離がはなれているのにも関わらず

たった数時間で来てしまった。

タハラはともかくレインさんもルーナさんも相当な実力者らしい。

足を引っ張らないようにしないと。



「ひどいですね」



「ああ。でも魔獣が襲ってきたときに数人が追い払おうと

戦ってくれたおかげでまだましな状況らしい。

ケガもそのときのだってさ」



村の家屋の多くが半分なかったり、

何かによってえぐりとられたようになっていた。



地面には大きな足跡があり、

魔獣の恐ろしさが伝わってくる。



「二チームに分かれよう。俺とレインが魔獣の追跡。

ゆうと・・・ウン!!エーマとルーナが村の救援だ」



間違えて優等生と呼ぼうとしたのをわざとらしい咳でごまかしながら

タハラは命令をした。



そのままタハラとレインさんは魔獣が残した足跡を

追って森の中へと消えていった。



「やるよ。警戒は、わたしがする。

あんたは村人の治療をやって」



ルーナさんは必要な情報だけ伝えると、

華麗な身のこなしでまだ残っている建物の上に登っていった。

高いところから辺りを警戒する気らしい。



よし、わたしもできることをやろう。





















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