第11話 採用試験

「ど、どうかな」




「いいんじゃない。ぎり不審者って感じ」



「不審者じゃだめじゃん!!」



タハラのおふざけに、すかさず突っ込みを入れる。

なにをしているのかというと、仕事の試験に行くための

コーディネイトをタハラとやっている真っ最中だ。



他人に顔を見られてしまうとギルバートさん達に発見されてしまう

可能性が高くなるので、できるだけ顔を隠せる服装に

しようといろいろ試したのだが、どうやっても不審者みたいな

格好になってしまうのだ。



最初など特にひどく、マスクに黒いサングラスそして頭をすっぽり覆う

フードをかぶった格好だったため、さすがにそれはやめろとタハラに止められてしまった。



で、いろいろ試行錯誤をへて、なんとかギリギリ不審者かな?

くらいの服装に行き着いたというわけだ。



どこかのお店に売っていそうな猫?狐?

みたいな白い仮面と頭をすっぽり覆うフード

で完全防備。



これで安心して外に出れるわけだ。



「試験、うかるかなぁ

緊張してきた」



「難易度は高くない。優等生なら簡単すぎるくらいだろ」



タハラはそう言ってくれるが、勉強漬けだった頃とはだいぶ期間があいているので

忘れていることも多い。張り切って受けて、不合格ですと突きつけられたらショックだ。



「ほら、そろそろ時間だ。行くぞ」



「は~い」



ニャーンとなく猫ちゃんにいってきますと伝えて

家を出た。



心臓がドクドクと鳴り始める。

屋敷から逃げてきた後はずうっとタハラの家に籠もっていたから、

外というもの自体に少し恐怖を感じている。



わたしを探している人がすぐ近くにいるのではないのかと

不安にかられて辺りをキョロキョロ見回してしまった。



「余計目立ってるって。その姿ならば見られてもばれないから

平常心だ。平常心」



「へ、へいじょうしん」



いつも通り、いつも通り。

あれ、いつも通りの歩き方ってどんなのだっけ?

意識すると分からなくなることってありますよね。



どうみても普通ではない歩き方をしてしまっているわたしを

タハラはあきれた目で見ながら、トボトボと歩いた。



30分後。

無事にわたしたちは仕事場に着くことができた。

特に声をかけられることもなかった。



「じゃあ、頑張ってこいよ。

左の部屋が試験場だ。

落ち着いてやれば問題ないから」



「おう、まかせて」


わたしは力づよく大地を踏みしてて部屋に向かった。

落ち着け、大丈夫だ。きっと合格できる。



「・・・・・・・・そっちは右だぞ」



ごめん。やっぱダメかも。




「おお、おおおお」



わたしは思わず声が漏れてしまった。

貰った紙には合格の二文字が書かれていた。

無事試験はとうれたようだ。



試験の内容は筆記と実技の2つだった。

どちらも一般問題とそれより少し高度な問題くらいだったので

特に苦戦はしなくてすんだ。



学生時代に必死になって覚えたことは

いまだに体に刻み込まれているのだと思うと頑張ったかいがあるものだ。



これで仕事を仕事をすることができる。

ここまですべてタハラのおかげだった。

はやくその恩を返さなければ。



はやる気持ちを抑えながら

わたしはその場で盛大にジャンプするのだった。




タハラ視点


「いやはや、筆記と実技共に満点なんて。

ほんとうにバケモノ連れてきたね、タハラ」



「だから言ったでしょ、無理矢理でも入れる

価値はあるやつだって」



本来、新しい人材を採用する時期は決まっており、

それ以外では試験は行われていない。



加えて試験に合格をしてもその後にいくつかの訓練を

受けてもらうためすぐ仕事というわけにはならない。



だがタハラはそれらの過程をすべて飛ばしてほしいと

要求したのだ。



かなり無理な要求なため、通常より厳しい

試験内容に変更されていたのだが、それをいとも

簡単に突破し

てしまった。


まさに化けもという言葉がふさわしい。




「あいつ、おれのチームに入るって事でいいですよね

一人少ないんだからいいでしょ」



「ああ、それでいいよ

君がちゃんと管理してくれるなら中身も気にしない」




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