第3話 一時的な幸せ

半年後、わたしはギルバートさんと一緒にくらすことになった。



たった半年に、ギルバートさんの家族との交流、魔法学校の卒業、結婚式などといった

とても濃いイベントのみ詰まっていたため、時間としてはあっという間だった気がする。



やっと落ち着いてきてきたところだ。

ギルバートさんとは問題なく生活を送れている。



・・・・・・いや、問題がないわけではないのだ。

家族以外との生活に緊張し、わたしは何度かミスをしてしまっている。



だけどそれをギルバートさんが笑って許してくれているおかげで

とくに問題になっていないだけだ。



婚姻をしたのがギルバートさんで良かったと何度もおもった。

別の人だったらもっと関係はギスギスしていただろう。



そんなエピソードから分かるとおり

ギルバートさんはとても優しい人だった。

そしておとなしい人だ。



感情をあまり表にださないし、動きはいつもマイペース。

非常に大人びているというのが一緒にすごしての感想だった。



そんな彼は、宮廷魔道師として宮廷に使えている。

なかなか仕事は忙しそうだった。



結婚して最初のころは、よく家にいてくれたのだが

だんだん仕事で外出する日が多くなってきている。



しかも仕事は突然舞い込んでくるものが多いため

休める日が決まっていない。



だから意図的に時間を合わせるのが難しくて、

だんだん一緒にいえう時間が少なくなっているのが現状だ。



けれどそんな状況にそこまで不満は沸かなかった。



もともと宮廷魔道師は、目指していた職業だということもあるけど

ギルバートさんのことをわたしは尊敬していたからだ。



頑張っている人には、不満ではなく

応援をしてあげたい。



わたしはというと、魔法学校の同級生の所へ仕事のお手伝いにいっている。



同級生のお仕事もかなり忙しいらしく、基本的に人手不足。

猫の手も借りたいという状況だ。



そのためか、もしよかったら手伝ってくれないかという話が

わたしに舞い込んできたので、すぐに二つ返事で了承したのだ。



内容としては、ケガをしてしまった人の治療や、

壊れてしまったモノの修復、その他もろもろといった

困ったことを何でも引き受け解決する何でも屋だ。



「すまん、エマ。こっちもお願い」



「わかった、これが終わったらいくね」



魔法学校時代、好き嫌いなくならった魔法すべてを使えるように

頑張ったため、どんなお願いがきても対応することができるのだ。



同級生も、わたしのそんなところを見て、お願いをしたらしい。



「お姉さんのおかげで痛くなくなったよ」



「壊してしまって困ってたんだ、すまんね」



「傷が治った。ありがとね、お姉ちゃん!!」



「いつもすまんな、たすかる」



お手伝いはとても楽しかった。



やればやるほど、自分が学生時代頑張ってきた成果が出たし、

多くの人に感謝もしてもらえたから。

同級生もよかったらこのままうちに就職してくれない?

とさそってくれた。



同級生はお手伝いに対しての報酬もだしてくれている。

でも、それよりも

自分は認められているんだという実感がここちよかった。

こんなに嬉しいことはない。



もちろん、お手伝いだけ頑張っているわけではない。



わたしはギルバートさんという旦那さんがいるのだ。

お手伝いに熱中して、ギルバートさんをないがしろにしてしまうのは

本末転倒もいいところだ。



だから家でも、ギルバートさんの家の恥にならないように

気を緩めてはいない。



大変だけど充実した日々だった。



両親にいきなり婚姻をしろと言われた時は

不安で仕方なかった。



でも、ふたをあけてみれば悪くない生活だ。

この生活がずうっと続いていくのだろうと

わたしは信じて疑わなかった。



あの日が来るまでの間は。






















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