第7話 悪評

ナラ「レド様…!私、男性貴族の方と話をしているときにサヤ様から酷いことを…」




サヤ「…私はあなたのマナーを注意しただけにすぎません。あなたの行動で誰かが悲しむことは許されるのですか?」




ナラ「私はただ仲良くなろうと…怖いです…!」




ナラはレドの腕に抱きつく。




寛容なレドもこれには驚いている。




サヤはナラの腕を引き離し…




サヤ「ナラさん、私は婚約者様がいる殿方に触れることは許されないと言ったはずです。今あなたがしたことは王族への不敬に当たりますよ。」




ナラ「レド様…ごめんなさい…何もわからなくて…助けを求めることしか…」




レド「ナラさん、無知なことは悪くありませんがここは社交の場です。サヤさんの言う通り、マナーを少しずつでも知りながら過ごした方がいいと思いますよ。」




ナラ「わかりました…少し頭を冷やして参ります…」




そう言うと、急いでその場を去っていった…




レド「サヤ、もう誰もいないよ。話がしたい…」




サヤ「レ…レド…わかりましたわ。何の用でしょう?」




レド「約束…忘れないでいてくれたんだな…」




サヤ「と、当然ですの!私は地獄耳で物覚えがいい悪役令嬢ですから!」




レド「この二年の間、ずっとあなたを想って過ごしていた…婚約の件は…」




サヤ「私はまだ完璧な悪役令嬢ではありませんの!しばしお待ちをと言ったはずです!」




レド「ふふ…君は悪役に向いていないんじゃないかな?君は人が良すぎるんだよ…」




サヤの髪を撫でながら言う。




サヤ「レド、私はあなたを幸せにはできません!失礼いたします!」




急いでその場を離れるサヤにレドは微笑む。




レド「小さい時からだけど…急にいなくなるところ…変わってないね…よかった…」




少し嬉しそうに言って、レドは自分の教室へと向かった。




それを遠くからナラが見ていた。




ナラ「キーッ!あの女、どこまでも邪魔してくれる…でも懐柔は成功したわね。いいイメージを男性貴族には与えられたわ…」




ナラも自分の教室へと向かっていった。




サヤはというと…




サヤ「レド様人が良すぎるんですの!あんなのズルいです…全女性が落ちますわ…」




文句を言いながら廊下を歩いていた。




すると…




「あの、サヤ様…」




サヤ「はい、なんですの?」




振り返るとそこには先程の令嬢たちがいた。




「サヤ様、先程はありがとうございました!私たち、思ってはいても言う勇気がなくて…とても晴れやかな気持ちになりましたわ!」




サヤ「いいえ、私はマナーを注意しただけにすぎません。あなた方の婚約者様だとは知りませんでした…」




輝かしい笑顔を向け、サヤは去っていった。




「サヤ様…本当にお優しい方ですわ…レド様の婚約者なだけありますわね!」




貴族の令嬢の間ではレドとサヤのカップルを推す令嬢が絶えなくなったという…




しかし男性貴族の間では…




「サヤ・ラシュール様いるだろ?同じクラスのナラさんのこといじめてるとか…なにかと突っかかったり俺たちに話してかけただけで怒ったとかも聞いたぜ…」




ナラの印象操作により悪い噂ばかりになってしまい、次期王妃であることを反対するものもいたほどだった。




その噂はレドまで広がり…




レド「それは勘違いです。ナラさんのマナー違反を指摘していただけでした。」




と誤解を解こうとしたものの、婚約者を庇う器の広い王太子。ということにされてしまった…






数日後…




サヤが教室へ入ると…




レイモンド「サヤ・ラシュール、ナラ・リナーラとのことで話がある。ついてきてくれ。」




サヤ「はい、承知いたしました。」




素直に応じ、後をついていく。




しばらく歩き…




レイモンド「ナラ・リナーラにいじめをしているということについてなんだが…なにか心当たりはないか?」




サヤ「私はマナー違反を注意しただけですわ…おそらくナラさんと周りの方々の勘違いかと…」




レイモンド「しかし令息のほとんどからそういった声があってな…反対に令嬢からはサヤは悪くないという声がする。どちらかわからないんだ。」




サヤ「それで私に…と?」




レイモンドは頷く。




サヤ「ナラさんがなにを考えているかはわかりませんが、私は何もしておりません。事実を言っているだけです。」




レイモンド「そうか…今後調査に発展するかもしれない…気を付けることだな。」




サヤ「ご忠告感謝いたします…」




一礼してからサヤはその場を去った。




サヤ「いい感じに悪役令嬢になれていますが…ナラさんはレド様を奪うつもりでしょうか?ナラさんに幸せにできる相手ではない…ここは一つ、忠告をしましょうか。」




カツカツと靴を鳴らし、サヤは自分の教室へと向かった…

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