第6話 本当の悪役令嬢
ナラは泣きながらそう言った。
レド(本当か?でもサヤさんはそんなことしないよな…でも悪役令嬢になるって…)
サヤは何もしていない。なんならナラを庇ったぐらいだ。
ナラ・リナーラは伯爵家の一人娘。
親に溺愛されすぎて、自分が一番でないとすまない性格になってしまった。
ナラ「私が一番なのよ!勉学も…なにもかも…でも地位が足りない。次期王妃にならなければ…そうだ。レド様の婚約者を悪役にして、婚約破棄させれば私は王妃になれる…!」
いつしかそんな歪んだ考えを持つようになってしまった。
ナラ「私は顔もいいし、勉学も得意…マナーがなってないフリをしてレド様に近づき、奪い取る…うふふ、我ながらいい作戦だわ!」
そして今に至る…
ナラ(さあ!サヤの評価を落とすのよ…レド様、私はいじめられたんです…!)
レド「ナラさんの勘違いでは?サヤさんはそんな女性ではない。強く言われたのなら僕が言っておきます。それでは失礼いたします…」
ナラ「でも…本当なんです…!私はマナーが悪いと…」
レド「それなら勉強すれば改善できます。申し訳ございません、用事があるので…」
そう言ってレドは去っていった…
ナラ「なによ…!私に振り向かない男なんていなかったのに…流石は王太子ね、壁は高いわ…やるのよナラ・リナーラ!王妃になるために!」
一方、サヤはというと…
サヤ「お話できて光栄でしたわ…それではまた明日…」
「サヤ様とのお話はとても有意義な時間でしたわ!またお話いたしましょう。」
サヤ「ええ、必ず…」
クラスの女性貴族たちと交流を深めていた。
明日の約束を取り決め、帰ろうとしていたとき…
レド「サヤさん、少しお時間ございませんか?」
サヤ「レ…レド様!?どうして…?あ…私に会いに来たのかしら!婚約者だから当然よね?それより女性たちに取り囲まれたと聞いておりますが…」
レド「僕の前では悪役令嬢じゃなくていい。素が見たいんだ…」
そう言い、サヤの手を握る。
久々にレドと話したサヤの顔はもう真っ赤である。
サヤ「いきなり手を握るなんてマナーがなっていませんわよ!ここは学園でございます。婚約者と言えどもそれは…」
レド「そうだね…じゃあ場所を変えようか?」
サヤ「わ、私は帰りますの!さようならレド様!」
慌ててその場を去った。
心臓はまだドキドキしている。
サヤ「レド様…やはりお綺麗ですわ…不相応とはいえ、あの笑みには勝てません…」
とぼとぼと自分の部屋へと戻る。
王立学園は寮制で、一人一部屋の構造になっている。
ベッドに倒れこみ深く息を吸う。
サヤ「楽しかったけれど疲れましたわ…明日の話の話題を考えなければ…どの本を持っていきましょう…」
サヤが明日の準備をしているとき、ナラは…
ナラ「どうにか私に振り向いてもらえる方法を…まず周りの男性貴族を懐柔し…味方につけ…それから女性貴族にも噂を広めていく…そうしましょう…!」
ナラは不敵な笑みを浮かべ、明日へと備えた。
翌朝…
サヤ「よく寝ましたわ…予習をしておきましょう!」
今は朝の五時。学園の門が開くのは七時だ。
早起きして予習をする。サヤの子供のときからの習慣である。
努力家な一面もあるサヤをレドは知っており、人一倍努力しその知恵で周りを助ける彼女を好いていた。
しばらく予習していると…
サヤ「あら、もう六時半…そろそろ仕度をしなくては…」
仕度を済ませた頃には七時近くになっていたので、サヤは寮を出る。
すると…
「ああ…私のシエル様が…うう…」
何人かの女性貴族たちが集まっており、皆顔を暗くしていた…
視線の先にはナラと女性貴族の婚約者たちが。
本来であれば婚約者がいる異性に触れることはマナー違反だがナラは守っていない。
それを見た女性貴族たちが肩を落とし、泣いている者もというわけだ。
サヤ「私がナラさんに注意してきますわ。少々お待ちください。」
ナラ「そうなんですか!私もあの本が好きで…」
サヤ「ナラさん、婚約者がいる異性に触れることはマナー違反ですよ?控えた方がよろしいかと。」
ナラ「え、ごめんなさい。でも私たち、何もやましいことはしておりません。話しているだけですわ…」
「そうだ。俺たちは話しているだけだ。なぜ空気を乱すようなことを…」
サヤ「ではあちらをご覧くださいませ。あなた方の婚約者様たちが泣いております。何故でしょうか?あなた方が婚約者がいるのに他の女性と親しくしていると心を痛めているのです。」
「ぐ…直接言えばいいことを…おい、行くぞお前ら。」
そう言って男性貴族たちは去っていった。
サヤ「ナラさん、昨日の今日でまた学園を乱すようなことを…失礼かもしれませんがマナーを知らなすぎでございます。勉学もよろしいですが、マナーの勉強もした方が…」
ナラ「ご…ごめんなさい…うぅ…」
ナラは泣き出した。
するとそこへ…
レド「サヤさん、お話が…っと…ナラさん、どうされたのですか?」
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