第8話 友達

自分の教室へ入り、ナラを呼ぶ。




サヤ「ナラ・リナーラさん、お話がありますの…レド様についてで…」




ナラ「は…はい、わかりました…」




わざと恐れているかのような演技をし、ナラは廊下へと出る。




少し教室から離れ…




サヤ「ナラさん、レド様を奪おうなんて考えは捨てなさい。あなたにも、私にも幸せにできる相手ではございません。」




ナラ「何のことで…」




サヤ「私の評判を落とすのはよろしいですが…レド様まで巻き込まないでくれ。ということですわ。心当たりはおありで?」




するとナラは笑い、




ナラ「へぇ…もうバレましたか。じゃあもう取り繕わなくていいですね!サヤ・ラシュール。あなたの婚約者、レド・ナーリア様を渡しなさい?王妃になるのは私よ。」




サヤ「あら、本性を出すのが早いこと…あなたはレド様を幸せにできない。渡すわけにはいかない。国も、レド様も、なにもかも。」




ナラ「そんなの周りがそうだと思えば成立するのよ。王太子の婚約者がいじめ…王太子も呆れて婚約破棄…王太子に泣きつきそのまま…といきたいところでしたがそうはいかない…」




サヤ「レド様は人を見抜く力がおありですわ。私の婚約者をけなさないでもらってもよろしくて?」




ナラ「ずいぶん煽ってくれるじゃないの。じゃあこうすればどうかしら?婚約者が同級生を殺人未遂…これなら破棄しますわよねぇ。」




そういって階段に近づく。




サヤ「馬鹿なマネはおやめになって!命に関わりますよ!」




サヤはナラを止めようとするも…




ナラ「じゃあさようなら…!」




そういって階段から落ちようとした…が…




サヤ「させない!」




ナラの腕を引っ張り自分と位置を入れ替える。




ナラ「なっ!!想定外…!」




サヤ「私がなんとでも言える状況ですわねぇ。」




そう微笑んでサヤは階段から落ちた。




強く頭をうち出血する。




ナラ「くそ…こいつが死んだら私のせいに…!誰か!助けてください!」




そこへ…




レド「!?サヤ、どうしたんだ…目を開けてくれ!」




意識がもうろうとするなか…




サヤ「レド様…私は自分で落ちましたの…ナラさんは悪くないですわ…」




そういって、意識を失った…




ナラ「!?なぜそんな嘘を…」




ナラが言葉を失うなか、レドは冷静だった。




レド「救急だ!頭から出血!誰か医者を呼べ!」




その後すぐに救急隊が到着し、サヤは運ばれていった。




その間、レドはずっとサヤのそばで祈っていた。




レド(頼む…何があったのかはわからないがこの女性の命だけは…!)




その祈りが届いたのか、サヤは一命をとりとめた。






サヤ「…?ここは…」




レド「サヤ!目を覚ましたか!無事でよかった…!」




サヤ「レド様…何が…何があったんですか?」




レド「君が階段から落ちて…生死の境をさまよっていたんだ…あれから二日はたつ。本当によかった…!」




サヤを固く抱きしめ、涙を流す。




サヤ「レド様!?私のために涙など流さないでください!その美しい肌がカサカサになってしまいます!」




レド「今はそんなことどうでもいい…君が無事なことだけで…」




そこへ…




ナラ「サヤ様!」




ナラが扉を開ける。




それと同時に、レドが警戒する。




サヤ「ナラさん…?なにしにここへ来たのですか…?」




ナラ「あの…その…本当に申し訳ございませんでした…あなたの評判を落としたことも…レド様のことも…全てです…」




レド「謝れば済むとでも?ナラ・リナーラ。」




サヤ「……あなたは伯爵家で、身分によるいじめを受けていた…それで王妃になろうとしたのですか?」




ナラは頷く。




サヤ「はぁ…そんな貴族がいたのなら…私を頼ってくれればいくらでも追い払いましたのに…」




ナラは驚く。




ナラ「サヤ様…あなたは優しすぎるんです…それ故に怪我まで負った…」




サヤ「私のせいで誰かが怪我をするのは見ていられないから…」




レド「サヤ、君を陥れようとした人間だぞ。情けをかける価値などない。」




サヤ「そんなことありませんわ。ナラさんはとても苦しんだのです。私が自分のことばかりで気づかなかったから…」




ナラ「サヤ様…」




サヤ「ではナラさん、私から少しだけいじわるをします。私と友達になってくださいませんか?断ったら首が跳びますよ。ふふ…」




クスリと笑いながらサヤは言った。




ナラ「やはりサヤ様は優しすぎます。…はい、友達になってください…本当に申し訳ございませんでした。」




サヤ「もうお友達ですから!あんなこと気にしませんわ。ね?ナラ…」




ナラ「わかりました…サヤ…さん!」




ナラはサヤに抱きつく。




レド「女性というのはよくわからないよ…サヤ、許していいのかい?」




サヤ「もちろんです!私がいいというのだからいいのです。」




ナラ「うぅ…サヤ様ぁ…尊いです…!」




サヤ「…はい?」




ナラ「サヤ様とレド様のカップルが尊いです…!推させてくださいませ!」




サヤは顔を赤くして、




サヤ「わ、私たちはカップルではございません!婚約者(仮)ですわ!」




レド「認めてくれたかな?サヤ。」




サヤ「ちーがーいーまーす!ですから!」




騒がしい保健室…三人に…何者かの影が近づいてきているのだった…

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