第6話 去年の曲

 それにしても、去年流行った曲に対して「古くね?」とは。ニコニコ動画の「演奏してみた」ならある程度昔の曲、場合によっては昭和時代の曲でもランキングに載ることがあるのに。

 どうやら、葵と俺の間に流れる時間には差があるようだ。


「俺は昨日知った」

「えー、マジか。情報おっそ」

 悪かったな。

「ヘキサゴン見たことないん? 信じられん。どうやって生きてるの?」

「失礼だし。アニメとボカロさえあれば生きていけるし」

 なんで俺は、こんな奴と友達やってるんだろう。

 ああ。友達付き合いをしてくれる奴が、他にいないからか。悲しくなるから考えるのを放棄しよう。


――ラーララ ラーララ ラーシドラー ラーララ ラーララ ラーシドラー


 葵の鞄の中から音楽が流れる。おい。着信メロディー「羞恥心」じゃねえか。

「何が古くね? だよ。自分だって聴いてるじゃん」

「えー。それとこれとは別」

「なんでだよ」


 ストラップのたくさん付いた携帯電話を取り出し、誰かと通話を始めた葵の指を見る。ギャルっぽい、ラメの入ったマニキュアが塗られた長い爪は、折れたら痛いんじゃないんだろうかと心配になる。


 ああ。あの動画を投稿していたmiyuさんは、葵と違って清楚なんだろうな。多分。

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