第5話 翌日

 大学というものは、講義と講義の間の教室移動が多い。ときには、構内を移動するだけなのに自転車に乗らなければ間に合わないこともある。


 だが、今回は徒歩でも間に合う距離だ。隣には、たまたま同じ高校に通っていて、たまたま同じ大学の同じ学部に合格して、たまたま大学生活二年目を迎えても同じ講義を受けることになった、友人Aことあおいが並んでいる。


 高校時代は、葵とは同じクラスになったことがあるくらいで、一切と言って良いほど接点はなかった。だから、今こうして歩いているのは、本当にたまたまだ。当時は確か、肩くらいまであった髪を三つ編みにしていたと思う。それが今は、大学デビューで茶髪に染めているのだから、コイツは誰なんだろうと時々考える。


 それにしても、夜更かしした影響で眠い。早く寝れば良いだけなんだが、深夜に起きるのが許されるのは、もしかしたら今だけかもしれない。せっかく手に入れた自由なんだから、思い切り享受きょうじゅしなければ、もったいない気がする。


「わらいたきゃわらうがいい」

 無意識のうちに眠気を覚まそうとしたのか、思わず口ずさんでいた。昨日知ったばかりの「羞恥心」曲を。


「去年の曲じゃん。古くね?」

 葵は知っていたらしい。

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