*中編②
「はあー、楽しかった!!」
卒業パーティーは無事に終わった。
おいしい料理に舌鼓を打ちながら、クラスメイトや先生方と話をすることができた。そして今は無事にエミリアの家へ到着し、客間で寛いでいるところだ。
「ふふ、本当に楽しかったわね。」エミリアは微笑みながら私に同意してくれた。
エミリア・エクエスは侯爵家の令嬢で、学院に入って最初にできた友人だ。
「お隣の席、よろしいかしら。」金色でゆるくウェーブのかかった髪、青色の瞳。息を飲むようなその容姿は、絵画から出てきたようだと思ってしまった。
「ふえ、あ、ど、どうぞ!」と何とも間抜けな返事をしてしまったのは、恥ずかしくて今でも覚えている。
そしてクラスメイトで唯一、私が家を出ることを知っているのが彼女だ。
「それにしても、無事にこちらへ来られて良かったわ。アンナから聞いたわよ。危うく縁談相手と顔合わせさせられそうになったって。」
「そうなのよ。しかも卒業パーティー後は、しばらくエミリアの家にお世話になると伝えていたのに『わがまま言わず断りなさい』って言うのよ。全く、困った父親だわ。」
「こちらが先に約束していたのに、断りなさいなんてあんまりよね。」
「本当です。だから言ったではありませんか。油断してはいけないと。」エミリアの隣に座っているアンナも頷きながらそう言った。
なぜアンナがここにいるかというと、アンナとエミリアが従姉妹同士だからだ。父親同士が兄弟で、アンナの父は次男だそうだ。アンナの父が、商会を生家に持つアンナの母と結婚するために貴族籍を抜けたことは、当時かなり話題になったらしい。
本来なら、従姉妹と言えどもこうして一緒の席に着くことはない。だが、貴族御用達の商会という事もあり、こうして交流が続いているのだ。
「卒業してすぐに顔合わせを入れてくるとは思わなかったのよ。」私は思わずため息をつきながら、そうぼやいてしまった。
「よほど良い方からの縁談なのかしらね。」
「仮にそうだとしても父にとって良い縁談なのでしょうね。まあ、基本縁談ってそういうものなんでしょうけど。」
「ちなみにお相手はどなたでしたの?」
「聞いてないから知らないわ。」
「あら、絵姿も見てないの?」
「そういえば特に何も無かったわね。」
私とエミリアの会話を聞いて、アンナは少し考えるような素振りを見せた。
「それってなんか少し変じゃありませんか?」
「え、何で?」私は思わずアンナにそう聞き返してしまった。
「普通、顔合わせの前にお名前を伝えたり絵姿を見せてくるものではありませんか?」
「アンナの言うとおりですわね。顔合わせを延期するにしろ、お相手の基本情報は事前に知っていて当たり前ですもの。」エミリアもアンナの意見にそう付け加えた。
「もしかして、とんでもない人からの縁談だったのかな……。」
「可能性はあります、ですがもう確かめようはありませんね。」
「それもそうね。さあ、今日はもう休みましょう。明日のお出掛けが楽しみだわ!」そのエミリアの一言により私たちは解散した。
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