第44話 瑠璃の日記 Ⅲ
5月△日
大学生活にも慣れてきたかな。大学生になって分かったことは、コンパのお誘いが異常に多いということ。毎週のようにコンパが開催されている。もちろん全部断る。そんなものにコウくんとの時間を邪魔されたくないもん。
アルバイトも始めた。ルブランというオシャレなケーキ屋さん。コウくんと一度行って、二人ともすごく気に入ったお店で、ヤバいくらい美味しい。オーナーはダンディー三上さん。
コウくんは家庭教師のアルバイトを始めた。生徒は高校一年の男の子。あと何人か教える予定らしい。女子は嫌だな、絶対コウくんに恋しちゃうだろうから。
8月△日
夏休みで岡山に帰省。コウくんは帰らなかった。両親が離婚して、もう帰る家がないらしい。本人は平気って言ってたけど、少し寂しそうだった。東京に戻ったら癒してあげないと。
毎日コウくんと一緒にいたから会えないと寂しい。実家が嫌いなわけじゃないけど早く東京に戻りたい。
10月△日
コウくんの通う大学に遊びに行った。みんな賢そうに見えるぞ。軽い感じの女子大生が馴れ馴れしくコウくんに話しかけていた。これからは時々パトロールに来ようと思う。コウくんを狙うハゲタカどもを牽制しなければ……。
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4月△日
大学三年生になった。コウくんとは相変わらずラブラブ。
夕ご飯もほとんど私が作っている。胃袋もガッチリ握った。コウくんは最近、知り合いの紹介で商社でアルバイトを始めた。インターンシップと言うらしい。よく知らん。コウくんは早くも将来を見据えて動いているって言ってた。それって私との将来ってこと?キャッ♡
6月△日
コウくんと同じゼミの子、奴は敵だ!私を値踏みするようにじっくり見つめてきた。そして最後にニヤリと笑いやがった、なんか悔しい。気を付けねば!
そのことをコウくんに話したら、思い過ごしだって笑われた。本人にモテる自覚がないから困る。でもそんな所も好き。
12月△日
コウくんにプロポーズされました!
結婚は卒業後だけど、とりあえず婚約ってことらしい。いきなりだったからびっくりした。商社でのアルバイトは指輪を買うためだったらしい。はぁぁ~っ、嬉しすぎる~っ!私は今、世界で一番幸せな女の子です!
4月△日
大学四年生。楽しかった大学生活もあと一年。就職かぁ、私にできるのかな。まあ永久就職先は決まっているから、その辺は余裕なんですけどね。
でもコウくんにおんぶにだっこの人生は嫌。ちゃんと隣を歩いて行きたいから就活も頑張る!
7月△日
就活たいへん!就職できる自信がない。コウくんはインターンをしていた商社にそのまま就職することになった。先方から是非にと誘われたらしい。さすがコウくん!
12月△日
私の実家にコウくんと一緒に帰る。コウくんが両親に挨拶してくれた。何となく察していたお母さんは大喜びだったが、お父さんは私にそんな人がいるとは思ってもみなかったようで凄く驚いていた。
コウくんの両親への挨拶は不要らしい。二人とも自分には興味がないからって言っていたコウくんを思いっきり抱きしめた。これからは私がいるよ!
卒業したらすぐ結婚することになった。挙式、披露宴はしないことにしている。呼ぶ人いなくて困るってコウくん言ってたし、私も別になくても平気だから。お父さんは少し残念がってた。
ただ、東京で知り合った人達と簡単なパーティーをすることにした。お母さんたちも参加してくれる。今から楽しみだな。
3月△日
大学の卒業式だった。正門前でコウくんと待ち合わせて、そのまま結婚パーティー会場に行った。両親や大学の友人、ダンディー夫妻、家庭教師をしていたコウくんの教え子なんかも来てくれて、本当に楽しいパーティーだった。みんなに祝福されて幸せだった。明日は婚姻届を提出する予定。コウくんに恋をして約八年、ついに私は須崎瑠璃になる。
4月△日
社会人生活が始まった!同時に新婚生活も♡
私も医療機器メーカーの事務として働き始めた。医療機器の知識?チンプンカンプンです!
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1月△日
妊娠していることが判明!コウくんの子供を産めるなんて最高!コウくんも喜んでくれている。お母さんに電話したら狂喜乱舞していた。
2月△日
9月△日
無事出産!琴美にやっと会えた。コウくんも出産に立ち会ってくれてずっと手を握ってくれていた。「お疲れさま、ありがとう」と言ってもらえて、嬉しくて嬉しくて涙がでた。
今日から二人で琴美を大切に育てていく。
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5月△日
ついに来るべき時が来たのかもしれない。
病院で検査したら、白血病で直ぐに治療が必要だって診断された。先生から話を聞いたときに最初に思ったことは、「ズルしてコウくんを奪ったツケを払う時が来たのかもしれない」ということだった。
ずっと心に引っかかっていたんだ、私がコウくんと後藤さんの幸せな未来を奪ったんじゃないかって。いつかその罰を受けるのかもしれないって思っていた。でもこのタイミング……一番幸せな時に来るのね。
神さま、私が罰を受けるのは当然です。でももう少しだけ時間をください。せめて琴美が小学生になるまで。
6月△日
明日から治療のため入院する。たぶんもう、この家に帰って来ることは出来ないだろうと覚悟している。
今まで楽しかったな。コウくんと出会って約13年、私なりに精一杯生きて来たと思う。後悔がないって言ったらウソになるけど、まあ私だからね。
コウくんには本当に感謝しています。琴美を任せることになってしまうのが申し訳ないです。琴美は私のこと覚えていてくれるかなぁ。
二人から離れたくないな……死にたくないな。
この日記は明日の朝、燃えるゴミと一緒に捨てるつもり。死んでからコウくんに読まれるのは恥ずかしいからね。何より自分の汚い部分をコウくんに見られたくない。
それに噂の件は、ちゃんと自分の口から言いたい。そして死ぬ前にきちんと謝りたい。でも怖い。コウくんに呆れられ、軽蔑され、嫌われたらって考えると体が震えてしまう。コウくんに見捨てられたらどうしよう。一人っきりで死ぬのは嫌だな。ちゃんと言えるかな。今はそれが一番心配。
◇◇◇◇◇
ここまで読んでいただきありがとうございます。
瑠璃の日記は今日で終わりです。
元々この物語は、『ズルをして好きな男の子と一緒になった女の子』というのが最初の設定でした。
まあ色々こねくり回した結果、こういう感じの話になりました。
明日は最終話として瑠璃視点の話になります。
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