第43話 瑠璃の日記 Ⅱ

 4月△日


 三年生になった。


 やった!!須崎くんと同じクラスになれた!掲示板に張り出されたクラス名簿で須崎くんの名前を見たときは泣き崩れてしまった。


 今日はもう胸がいっぱいでご飯が食べれなかった。お母さんに心配された。




 5月△日


 初めての席替えがあった。


 須崎くんは窓際の後ろから二番目。私は隣の列の一番前だったけど、須崎くんの隣になった男子が視力が良くないの知っていたから、その子に話しかけて席を交換した。


 その子はすごく喜んで感謝してくれてたけど、本当に喜んでいたのは私のほう。


 やっとここに座れた。須崎くんの隣に座るのに三年もかかった。長かったなぁ……。


 須崎くんに向かって「よろしく」って言ったら、ちょっとビックリした顔して、ヒョコっと頭を下げられた。可愛くてもだえ死ぬかと思った。




 5月△日


 須崎くんに授業で解らなかったところを教えてもらった。すごく丁寧に教えてくれた。やっぱり彼は優しい!でも緊張して説明された内容はさっぱり頭の中に入ってこなかった。頭悪い子って思われたかも。。。




 6月△日


 毎日のように須崎くんに勉強を教えてもらっている。それは良いのだけど、それ以外の会話がない!もっとプライベートな話もしたいのだけどなぁ。




 6月△日


 図書室で初めて二人っきりで勉強した。須崎くんが先生、私が生徒。幸せな時間だった。須崎くんは東京の大学に行きたいみたい。家から出たいって言ってた。今度くわしく聞いてみよう。




 6月△日


 須崎くん、両親が上手く行ってないらしい。もう何年も前からぎくしゃくしているらしく、離婚しそうなんだって。時々さみしそうな顔してたのはそのせいだった。噂のことは全く知らないみたい。


 どうしよう、教えない方が良いのかな。悩む。




 7月△日


 私も東京の大学を受けることにした。だってこのままだと、あと半年で離ればなれになってしまうもん、そんなの絶対に嫌。須崎くんに言ったら喜んでくれた。一緒に頑張ろうって!ちょ~頑張る!でも同じ大学は学力が違いすぎるので無理。



 7月△日


 後藤さんに須崎くんと図書室で勉強しているところを見られてしまった。裏切りだって凄く怒ってた。その通りです、私は裏切りました。非難されて当然のことをしました。後藤さんから話を聞いた周りの友達も怒っているらしい。友達が一気に減った。


 でもごめんなさい、須崎くんから離れるつもりはありません。どんなに悪口言われても須崎くんの隣は誰にも譲れない。噂の元が私だっていうのは気付かれなかった。これがバレたら私は終わる。




 8月△日


 両親に東京の大学に行きたいと話す。お父さんは渋い顔してた。お母さんはなぜか嬉しそうで超盛り上がってた。須崎くんと一緒に夏期講習にも通っている。学力が違うから別クラス。ぐすん。


 帰りにクレープ食べた。私はチョコバナナ、須崎くんは小豆クリーム。渋い。講習がない日は二人で図書館に行く。冷房効いてて良き。




 12月△日


 勉強勉強の毎日。でも中学のときと違って、隣には須崎くんがいる!それだけで幸せ♡


 お母さんがまた夜食を作ってくれるようになった。ありがと、お母さん。動機が不純ですみません!




 1月△日


 須崎くんと初詣に行った。二人で東京の大学に受かりますようにってお願いした。合格祈願のお守りも買った。もうひと頑張り!




 2月△日


 きょうはバレンタインデー。もちろん須崎くんに手作りの本命を渡した。実を言うと去年も一昨年も作っていた。でも渡せなかったから自分で食べてたの。それを見たお兄ちゃんにすごく哀れんだ目で見られていた。いつかシメる!


 でも今年は違った!ちゃんと手渡し!須崎くん顔真っ赤にして喜んでくれた。たぶん私も顔真っ赤だった。須崎くん、生まれて初めて渡した本命チョコのお味はどうですか?




 3月△日


 二人とも無事合格~!合格と同時に須崎くんから交際の申し込みをされた!もちろん全力でOK!嬉しすぎて泣いてしまったよぉ。きょうは今まで生きてきた中で一番幸せな日。




 3月△日


 慌ただしく上京の準備。コウくんが住む予定のアパートからなるべく近く、セキュリティのしっかりしている所を借りた。お母さんと一緒に東京に行く。お母さんは昔、東京で暮らしていたから色々アドバイスをくれる。変な勧誘やキャッチ?や怪しげな芸能スカウトに引っかからないこと等々。聞いているうちに私よりコウくんの方が心配になった。私が気を付けてあげないと!




 3月△日


 今日から一人暮らしが始まる!荷物の少ない部屋を眺めながらお茶を飲む。これまでのことを思い出すととても感慨深い。あの日、コウくんに出会わなければ、私は絶対にここには居なかった。


 全ての原動力になったのは間違いなくコウくんへの想い。やり方は狡くて汚かったけど、今は後悔より成し遂げた満足感の方が強いかな。コウくんにも私を選んだことを後悔させたくない。


 明日は引っ越しのお手伝いで、コウくんのアパートに行く。瑠璃専用のクッションを持っていくの。ウフッ♡

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