第41話 それから
瑠璃がいなくなって半年が過ぎた。
琴美はこの春から小学生になり、毎日元気に通っている。義両親に買ってもらったランドセルの似合うことと言ったら、ランドセルCMの出演依頼が来てもおかしくはないだろう。
友達もたくさん出来たようだ。保育園の先生が大人しすぎると心配していたのが嘘のように、社交的で活発な子になった。お義母さんが、瑠璃の小さい頃を見ているようだと、懐かしむような心配しているような目で見ていた。
親の欲目かもしれないが、最近増々瑠璃に似て可愛くなって来た。間違いなく将来美人になるだろう……変な虫がつかないか心配だ。虫は潰す!
義兄の竜二さんと京香さんが結婚式を挙げた。式には俺と琴美も出席したんだ。神前結婚式で二人とも凄く和装が似合っていたなぁ。まあ竜二さんは緊張でガチガチだったけど。
お義母さんがとても嬉しそうだった。京香さんとも上手く行っているようで、実の娘のように可愛がっているらしい。竜二さんが「自分と居るより、母さんと一緒に居る方が京香が楽しそうなのが納得いかない」と愚痴ってて面白かった。
しかもなんと京香さんはオメデタらしく、来年初頭には出産予定とのことだ。本当にめでたい。産まれたら琴美と一緒に絶対見に行こう。お義父さんは、誰にも頼まれていないのに孫の名前を考えていて、『龍三』『龍美』はどうだ?ってお義母さんに聞いて、即却下されてた。このオッサン、本気か?って俺も思った。
俺は相変わらず営業企画課で働いている。保育園の頃と違って琴美が早く帰ってくるので、残業しないために毎日ハードワークしている。
料理のレパートリーもかなり増えたんだ。スパルタ料理教室で瑠璃に基礎的なことは教わっていたから、少しずつ新しい料理に挑戦している。琴美からの反応もかなり良い、と思う。
瑠璃がいなくなった寂しさは当然あるよ。でもそれは瑠璃が戻って来る前の寂しさとは全く違うものだ。前は
二年前の瑠璃が死んだときにこう考えられたら良かったのだろうけどね。まあまだ遅くはないと思っている。
この間、久しぶりに総務の石野さんと食事会をしたんだ。旦那が浮気をしていたらしく、プリプリ怒っていた。女帝にも色々あるんだなと思ったよ。
石野さんといえば、騒動を引き起こした相嶺さん、彼女は総務に移って二か月で自主退社した。移ってひと月くらいの頃、やつれた顔でゾンビのように社内を歩いていたという目撃情報があったけど、営業部で誰一人同情する者はいなかった。まあ、彼女に関しては俺も自業自得だと思う。
今日は日曜日、時川さんとの初デートの日だ。琴美は友達の家にお呼ばれしているので夕方まで大丈夫。
実は先週、時川さんをデートに誘ったんだ。以前誘われてから半年以上経っちゃったから断られるかもと思ったけど、喜んで!とOKをもらえて正直ホッとした。「半年は待たせすぎじゃない?」と石野さんに呆れられた。なぜ石野さんが知っていたのか、女帝ネットワーク恐るべし。
デートに誘うまで半年もかかったのは……まああれだ、俺にも色々葛藤とかがあった訳だよ。ヘタレた訳じゃないよ?
初デートの場所は時川さんの提案で水族館だ。琴美と一緒に行くときの下見も兼ねてだそうだ。ありがたい。
「よし、準備オッケー」
忘れ物がないか確認をして靴を履く。すると突然後ろからポンっと背中を叩かれた感覚があって驚いた。慌てて振り返ったけど誰もいない。まあ当たり前だよね、部屋には俺しかいないのだから。でも何となく瑠璃に「行ってらっしゃい!」と背中を押された気がしたんだ。だから俺は――
「行ってきます」
そう
◇◇◇◇◇
一ノ瀬六葉です。
一応、これで本編は終了です。エピローグ的にあと数話ありますが、キリの良い所でご挨拶致します。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
どうにか最後まで書き上げることが出来そうです。
一日一話投稿を目標に始めて約一カ月、完走できたのは読んでくれた皆さまのお陰です。
特に早い時期から毎日応援してくれた、まさぽんたさん。あなたの応援があったからモチベーションが保てました。
兎のしっぽさんも、おすすめレビューありがとうございました。初めてのことだったので本当に嬉しかったです。
まだまだ初心者なので、♡や☆に一喜一憂する毎日でした。
あと数話続きますので、最後までお楽しみください。
明日からは瑠璃さんの日記を掲載します。
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