第3章  Les Enfants terribles(アンファンツ テリボー)

第1話 Bon appétit ! ボナペチー!

 前回のあらすじ。


 宿屋で案内人コンシェルジュを務めていた、シンゴ・イカリ氏。 はれてツバキのパーティーに加わった。

 彼は152年前に日本から来た召喚人。 こちらの世界に来てからも壮絶な人生を送っていたようだ。

 ギルドに行きパーティー登録をするツバキ。

 パーティー名は ウカノミタマ。 日本では有名な、豊穣の女神の名を畏れ多くも使うツバキ。

 器がでかいのか、常識知らずなのか…。




      *




 ギルドでの登録も終わり、ツバキは早速、依頼を受ける事にした。 できればアニエスとの婚姻届も出したい。 この世界に役所のようなものがあるのだろうか。

 とりあえず、依頼の事から聞いてみよう。

 


「そこの依頼書にあった、ダンジョン内の討伐依頼 とは何を討伐するの?」

 先ほどのパーティー登録に携わってくれた男性に聞く。

「討伐依頼ですね。 それでは説明をさせて頂きます。 まず、この周辺には2か所のダンジョンがあります。 一つは洞窟タイプのダンジョン、名をスリムダンクと言います。」

「バスケきたー! 桜木 ○道かーい!」

「ど、どうしました! ツバキさん?」


「マスターどったの?」

「ツバキどうしました?」

「ツバキ、私を抱きしめて落ち着いて!」


 とりあえずアニエスを抱きしめた。


「ふぅ。 ありがとうアニエス、落ち着いたよ。」


「そんなんで落ち着くんかーい!」

 イリスに突っ込まれた。 


「えーっと、ごめんね。 話を続けてもらってもいいかな?」

 ギルド職員は俺を生温かい目で見ている。


「ダンジョン内の魔物を倒すと、魔物たちは魔石へと変化します。 その魔石をこちらの受付に持ち帰って下さい。」

「魔石って大きいんですか?」

「スリムダンクの低階層は最大でも2センチ程度です。 魔物自体が小さいですからね。 ただ群れで襲ってくる魔物もいるので、気をつけて下さい。」


 2センチか。 それでもたくさん狩ったら持てない…、あっ俺ったらストレージがあったんだ。 えへへ。


「えっと、スリムダンクは何階層まであるんですか?」

「現在、5階層まで攻略済みです。 5階層より下は未だ不明です。」


 5階層? ずいぶん狭いな。


「フロアボスは居るんですか?」

「フロアボス? 聞いたことがないですね。」

「そうですか。 それではもう一方は?」

「もう一方は、森のダンジョン マキバーノアサー です。」

「確定ー! 名付けは日本人だったんかーい!」


「マスター? どったの? ニホンジンって何?」

「ツバキ? どうしました?」

「はーいツバキ。 私を抱きしめて落ち着いてー。」


 とりあえずアニエスを抱きしめる俺。 ウェーヘッヘッ。


「えっと。 森だと階層って訳ではないんですよね。」

「そ、そうですね。 こちらは標高で1500mとなっております。 今は700mまで攻略済みです。 えっと…。その…。 250m付近にエリアボスがいます。 エリアボスはストーンゴーレムです…。で…あの…話しづらいので、アニエスさんと抱き合いながら僕とお話しするのは、やめてもらってもいいですか?」

「これは失礼しました。 それで、話は変わりますが、アニエスを妻にしたいのですが、婚姻届って制度はあるんですか?」

「おおー! ご結婚ですね! ギルド婚をされれば、このペアリングを名前付きでさしあげております。ギルド婚は諸経費無料! 金貨2枚のサブプランで、聖歌隊による祝宴の儀とウエディングケーキ。 さらに金貨5枚でエールをはじめ、各種ドリンク飲み放題と金貨5枚相当のフルコースの食事が付きます! いかがですかー!? ですかー!?」


「ツバキよ。 まずはダンジョンより、アニエスとの祝宴をあげた方が良いかと思う。」

「マスター、イリスだよ。」

「うん、知っているよ。」

「私の人化が定着したら、私とも結婚してね。」

「イリス、それはちょっと…。」

「ツバキ、アニエスです。」

「はい知ってます。」

「イリスまでなら構いません。 だって、しょせん側室ですもん。 おーほっほっほっほっ!」


 ドカッ!


 イリスはアニエスの腰骨あたりに飛び蹴りをした。

 くの字で消え去るアニエス。


「あーもーイリス。 本気で蹴ったらダメじゃん。 アニエスがまた気絶しちゃったよ?」

「このマウント女、ムカつくんだもん!」


 イリスはそう言って、床ダンをしていた。


 *床ダン=ウサギの行為。 後ろ足で床をダンダンと蹴る行為。

      ストレスを感じると行うようだ。


 俺はアニエスを抱き上げ、みんなの元へと戻った。


「それじゃシンゴさん、イリス。恥ずかしながら今日は宴にしても良いですか?」

「そうですな。アニエスも喜ぶと思う。 今夜は盛大にお祝いをしようではないか!」

「マスター! 今夜はウハウハだね! 私は今夜はシンゴちゃんと一緒の部屋に行くよー! えらいー? マスター、イリスえらいー?」


「ありがとうみんな!」



 こうして俺はアニエスと夫婦になる事となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る