第5話 Abondance ウカノミタマ


 前回のあらすじ。

 シンゴ氏が仲間になり、ピコンさんの最終形態と名付けも無事終了したツバキ一行。

 ピコンさんの最終形態がアルミラージだが、なぜか人化ひとかができる。 これなら普通に人になっていても良かったのでは? と思うツバキ君。

 そしてツバキのステータスにある ♀ に弱いがここにきて本領発揮になるのだろうか?

 これは今回こそチョメチョメっちゃうのか?




     *




 一夜明けた朝。

 

 コンコン。

 ドアをノックする音がした。


 目を覚ましていたアニエスが応答する。

「はい。」

「シンゴ・イカリです。」


 シンゴ氏からは昨夜、連絡があり、一緒にギルドに行くこととなっていた。


「おや? ツバキ様は未だ就寝ですか?」

「すみません。 昨夜は色々と面倒ごとがあり、深夜の就寝となりまして。 少しこちらでお待ちください。」


 アニエスはシンゴ氏をテーブルに案内し、イリスがツバキを起こしに向かう。


「マスター、起きてー!」

 ツバキのかけていた毛布をイリスがバサっとめくった。


「ワオ!」

 イリスはそう言って急いでアニエスを呼びに行く。


「大変アニエス!」

「イリス、どうしたの?」

「マスターのマスターが!」

「は?」


 アニエスとイリスは急いで寝ているツバキの元へと向かった。


 何事かと思い、シンゴ氏も向かう。


「見てアニエス! マスターのマスターがマスタっているの!」

「こ、これは!? 確かに、ツバキのツバキがツバキっている!」

「これが噂に聞く、朝マスタってるってことだね!」

「すごい! 朝ツバキってる!」


「あー。 君たち。 私は今日からこのパーティーのメンバーだ。 君たちの発言は一般的な婦女子のそれではない。 ツバキ様は私が起こすので、君たちは向こうへ行っていなさい。」


 渋々、リビングへと向かう一般的ではない婦女子たち。


「ツバキ様、朝でございます。 今日は一緒にギルドへ行くはずでは?」

「ふぁ!? すみません! 今用意をします!」


 しまった、寝過ごしちゃった! 初日からこれじゃシンゴさんに申し訳ないな…。


「ツバキ様。 いや、今日からは私も同じパーティーメンバーなので、ツバキとお呼びしても宜しいかな?」

「はい。 もちろんです。」

「それでは一つ助言を致しましょう。」


 あぁ。 寝坊助さんの事かな? 


「寝る時はナイトウエアを着て寝ること。 今しがた、女性陣がツバキの で大変盛り上がっておりましたぞ?」

「モーニング…って? うぉふ…。」


 そうかパンイチは危険だな…。

 恥ずかしいっす…。



 俺は急いで着替え、寝室を後にした…。

 



      * *




 俺たち一同は高級ホテルのような宿屋を出て、ギルドへと向かった。

 その道中、俺は疑問に思っていた事をシンゴさんに聞く事にした。


「あの、シンゴさん。 聞きたいことがあります。」

「何でしょうか?」

「この世界の名称なんですけど、何だか変と言うか、ふざけていると言うか。」

「どう言ったところでしょうか?」

「え?」

「ん?」


 シンゴさん?


「いや、その。 フットケア王国とか? フィラリア侯爵とか?」

「何がでしょうか?」


 ん?


「いや、だってフィラリアって寄生虫の名前ですよ? フットケアもかかとツルツル的な?」

「うぅん。 ツバキの言っている意味がよくわかりませんね。」


 は? ああ、もしかして…。


「シンゴさん、152年前の日本って、英語ってありました?」

「えいご? とは何でしょうか?」

「えーっと。 そう、舶来語? オーケーとか、グッバイとかかな?」

「舶来語と言うとガスランプですかな?」


 そう言うことか。


「そうですね、わかってきました。 この件は後ほど落ち着いてからお話をします。」



 ギルドに到着。


「こんにちは。」


 俺の顔を見て、驚いた顔をするギルド職員。

「おお、ツバキさん! その節はありがとうございました!」

「いえいえ。」

「今日はどのようなご用件で?」

「パーティーの登録に参りました。」

「了解いたしました。」


 以前の悪い空気はなく、明るい職場になったように見える。

 だが、飲食ブースの方は相変わらず、昼間から酒を飲んでいる連中がいる。


「スカルラッツの方はどうですか? 残党からの嫌がらせとか。」

「無いです。 フィラリア侯爵様の執事バトラー、タチバナ様が粛清したとの事です。」

「粛清? なぜ早くにされなかったんですか?」


 俺の質問に、職員は小声で返した。

「スカルラッツはキミヒトリー侯爵と関係があったようです。」


「ブフォ!」


「ど、どうしました?」

「ケミストリーじゃ無いんかーい! 発音も一緒かーい!」

「ツバキさん?」

 驚くギルド職員。

「どったのマスター?」

「ツバキ、どうしました? 私を抱きしめて落ち着いてください!」

「私をナデナデした方が落ち着くよー!」


「いや、それらは後でね。」

 久しぶりに盛大に突っ込んでしまった。


「ところでパーティー名を教えていただけますか?」


 ふっふっふっ。パーティー名はもう決めてあるのだよ!

「ウカノミタマでお願いっ、します!」


「おお、ツバキ! 最高な名です! 我らが豊穣の神となりましょうぞ!」


 シンゴさん、テンションマックスだな…。


 


 


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