第18話 それからこうなった
「ごめんなさい」
ミフナロウのしおらしい謝罪の声とは対照的に、ルルケとファスカを中心とした周囲は怒気に溢れていた。ポーラが金貨ごと攫われた、ミフナロウが遊ばなければ防ぐことが出来たことだ。怒ってどうにかなる問題ではないが、現状他にできることも無し。建設的な意見が立てようがない以上、普段以上に小さい正座する着物の少女を囲う他なし。
もし、単純に攫われただけなら追跡部隊でも編成できたのだが、それはミフナロウが差し止めた。ミフナロウがゲームに負けた以上ミフナロウは勝者を尊重する。祭りが不完全燃焼に終わったことも怒気の一部に含まれていた。
「ミィトボゥル様の誓約書を書かせるべきでした」
ブラックバレットに白鋼を追うことを妨害され、金貨争奪の役目を果たせず、ルルケはため息を吐く。簡単ではないが、黄金卿、聖皇女がいれば可能ではあった。戦魔神がいればどうとでもなるという油断が、まさか当の戦魔神によって打ちのめされるとは。まさに後悔先に立たず。
「これからどうするんですか?」
短期間に2度も主人を危機に晒し、不安も負担もかけた不甲斐なさを飲み込んで、ファスカは対応と対策を問う。即座に追うことこそできなかったが相手はプレイヤー、死の危険はないと信じ先のことを考えた方がいい、震える体を押さえつけた。
「別に何もせんでいいと思うぞ」
「ミフナ様?」
「何を言ってるんですか?」
女性2人の声に周囲がびくりと震えるが、ミフナロウは謝罪のポーズを解く。
「ちょっと派手に派手が過ぎたが、この誘拐劇を大々的なイベントにした。黄金と聖女が絡んどるから大問題に発展しそうになっているだけで、鉄鬼自身は金貨を望んでおらぬ。ならその狙いは何か」
金貨が奪われたのはたまたま。本来の目的はポーラと見て間違いない。
「その方が問題です!」
ファスカの立場からすれば、従者として側にいたにも関わらずむざむざ主人が攫われたことになる。それも既知外達の中でも屈指の怪しい集団にだ。ミフナロウは現状を軽く見ているわけでは無いが、必要以上に重く考えてもいない。安心など欠片も無いし何もせずにはいられない。
「ミェルケト様、クルーエル様はなんとおっしゃっているのですか?」
「クルーエル様からはミフナ様の指示に従うようにとの事でした。あとついでに回復薬を絞れるだけ絞れと」
「余剰分に色つけて渡してやる。黄金からは回収までに時間かかるしそれまでに手に入れば良いとのことじゃ。まぁ今更勝ち負けつけてってのが面倒臭くはなったが白鋼に押し付けるつもりじゃ」
金貨の所有権を主張するものが増えないならば良し、既知外は1000年以上の時を生きる。この程度のアクシデントにうろたえるような心は持ち合わせていなかった。
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