4 現場にて

 現場のトイレに着く。

 トイレにはテープが張られ、見張りの警官も立っていて、一般人が入れないようになっていた。トイレの周りにはYoutuberらしき人物がおり、何か動画を撮っていた。訪れた私にカメラを向けようとしたが無視した。私は見張りに警察手帳を見せ、トイレの中に入れてもらった。トイレの外から何か不満を漏らすような声が聞こえたが、そんなことより、調査がまず重要だ。狭い女子トイレの中には漂白剤の匂いと少し鉄のような生臭い匂いが漂っていた。検死や現場検証はすでに終わっており、清掃済みのはずだが、余程、死体の匂いが強烈だったのだろう。まだ残り香がする。

 私はトイレ内を見回す。トイレには最低限の設備しかなかった。石鹸も置かれていない質素な陶器でできた洗面台、奥の方にある小さな窓、窓の半分と隣接して壁際にあるトイレの個室、薄暗い電灯、これだけだ。こんな狭いトイレで一体何が起こったのだろうか。

 窓を開ける。窓を開けるとすぐ側に木が生えているのが見えた。木とトイレの間の幅はとても小さく、窓を全体的に覆うように枝と葉っぱが生えているので、小さな子供1人でも通れるような隙間はない。通れても犬か猫とかネズミとかそういった小動物くらいであろう。とは言っても、窓は少し高い位置にあるので、動物でも自力で上ることは難しそうだ。

 うーん、全然わからん。

 私は頭を指でかきながら、トイレをまた、見回す。今度は天井の方を見た。すると、男子トイレと女子トイレの間に人が1人程はぎりぎり通れそうな空洞があるのが見えた。このトイレには換気扇が無い。換気のために通気孔が開いているのだろう。

 私はこれを見て、ある実験をすることを思い立った。

「おい!」

 外の見張りを大声で呼ぶ。

「はい??」

 突然大きな声で呼ばれ、ひどく狼狽ろうばいしている様子の見張りだったが渋々のっそりと歩いて私のもとに来た。彼がトイレの出入口から、退しりぞくと奥にまだYoutuberたちがいるのが見えた。私は占めたと思い、Youtuberたちにこう声をかけた。

「おい!!お前らも来い!!」

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る