11/29 答え

 部屋を片付けた。安物のプロジェクターはカーペットに受け止められていて、部品がひとつ割れただけで無事だった。起こして、コードを抜いて部屋の隅に戻す。

 パソコンは閉じようとするとどうやら画面とキーボードの間の蝶番のような部分が壊れたようで、ノート型なのに閉じないパソコンになっていた。もう一度、電源を入れる。まだ真っ白な「帝王の首塚ドットコム」のアドレスバーに、googleと入れてエンターを押す。帝王の首塚、まで打ったところで、帝王の首塚ドットコム サ終、という文字がサジェストで浮かび上がった。


<“遊びにしても悪趣味”はコンプライアンス過剰か?

 突然サービス終了したウェブサイト「帝王の首塚ドットコム」とは>


 記事の中身は読まなかった。パソコンをシャットダウンして、閉じないまま机の上に置いた。画面の端も少し割れていた。


 あのあと、ゼミは何もなく終わった。帰って、気づいたら眠っていた。夢の中に、未美ちゃんが出てきた。大きな目をカッと開けて、すこし歯茎の出た口だ、大きな声で、ねえねえ、うちの首もあったもんね、と皆のいる前で言った。私はギャアアアと叫び声をあげながら未美ちゃんに飛びかかり一生懸命に首をしめた。すると、未美ちゃんの首はコロリと落ちて、生首になる。はっとして周りを見ると、引いたような顔をした橘さんや佐久間くんや久米さんたちの首が、コロンコロンと地面に落ちて行って、そして辺りは首塚になった。生首に囲まれた私は、いやあああ、とまた悲鳴をあげ、目が覚めると、誰もいない夕方の自分の部屋だった。ベッドに転がっていたタブレットを開くと、カメラロールの中に、スクリーンショットが一枚だけ残っていた。あの日、たくさんの生首を作ったあとのマイ生首のページだ。パソコンで開きながら、タブレットでも見ていたのだろうか。どおりでうるさかったはずだ、けれど、その音声の感じも、もうあまり思い出せない。

 あんなに鮮明だと思っていた生首の画像は、一昔前どころじゃなくザギザギの低画質だった。顔色も青ざめたというよりもう暗緑色に近く、何度見ても、どれだけ拡大して見ても、部屋の電気を点けて見ても消して見ても、どうしても、どの生首が誰の顔なのか、判別することができなかった。

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