11/15 猫

 昨日「デスノートを読んでる」と言ったのは半分はウケ狙いだけど、嘘ではない。そういえば「デスノート」は私が「帝王の首塚ドットコム」に出会ったのと、そう遠くない時期に連載していたことになる。

 あのころは、可愛かったといったらいいのか、とにかく怖がりで、クラスメイトが怖い話を始めると聞こえない場所まで逃げていた。デスノートの話題も少しは出ていたけど、それも、なんだか怖そうだなと思っていた。だって、名前を書いたら死ぬノートなんて。


「橘さんもデスノートを読んでたの?」

「たち なさんもデスノートを読んでいました」

「ちがうよ、あなたも読んでいたの?」

「はい、私も読んでいました」

「敬語じゃなくてもいいよ」

「もう一度言ってく さい」


 生首の自動応答モードは、なかなか成長しない。やっぱり生成AIなんて高度なものじゃないっぽい。橘さんは意外と声が小さくてなかなか拾えない。


「もしデスノートがあったら、誰かの名前を書く?」

「もう一度言ってく さい」


 SNSで少し炎上した生首があった。嫌いな人の飼ってる猫の生首を作った人がいる、という噂だ。


 <さすがにありえない、気持ち悪すぎる>

 <nmkbやってない人に見られたとしたら界隈ぜんぶ叩かれるじゃん>

 <そう、頼むから変なことしないでほしい、ただでさえ肩身せまいのに>


 ワンクッションありで画像も流れていたけど、結局見なかった。こわい、と思った。でも、人の生首を作るのと、なにが違うだろう? そして、「帝王の首塚ドットコム」でいくら人間の生首を作ったとして本当の殺人を犯すわけではないように、猫の生首を作ったとして、猫の首を実際に切るわけじゃない。そこを混同する自体がおかしい、という書き込みもあった。デスノートも、フィクションだから楽しめる。


 <まあ、でも、どっちにしてもさ、異常者なんだよ、私たち、そこ自覚しよう?>


 猫には人間とちがって悪意がない。だからこそ、傷つけることにより嫌悪感が生じるんだろうと思いついた。そのときにはもうSNSのトレンドはほかに移っていて、べつに書き込むわけでもなくパソコンをスリープにして、お風呂に入ることにした。

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