　生首には、ごはんをあげることができる。選べるメニューは、カレーライス、ラーメン、白米、お肉。アニメーションは単純で、生首が口を開けたり閉じたりするのに合わせて、皿ごと均等に三口で齧られて消える。

　生首に口を開けたり閉じたりさせるためには、生首を生成するときに、口を開けている写真と閉じている写真を用意しなければならない。でも、それさえあれば簡単だ。生首らしい土気色に自動で加工されるから、画質は多少悪くてもいい。

　生首は、べつに食事しなくても死ぬわけではない。というか、概念上はもう死んでるし。たまごっちみたいにバーチャルに死ぬとか、何か弱っていくとか文句を言うとかもない。けれど、帰宅すると毎日、まずノートパソコンを立ち上げ、「帝王の首塚ドットコム」のマイ生首のページを開いて、橘さんの生首にごはんをあげるのが日課になっていた。

　大学に入って一人暮らしを始めてから、夕飯はテレビよりパソコンを眺めながら食べることが多い。Ｙｏｕｔｕｂｅやネットフリックスを見るときもあるし、お行儀悪い気もするけど、ＳＮＳのタイムラインや、ネットサーフィンしながらのときもある。どんなときも、「帝王の首塚ドットコム」はだいたい別窓で開いておく。

　今日の夕飯のメニューは、ゆうべ多めに作った煮込みハンバーグと、ごはん、味噌汁、サラダ。なんとなく、生首のごはんもお肉にした。生首用のお肉は「まんが肉」みたいな両側に骨が突き出たワイルドな形で、ハンバーグはない。今後メニューが増えるのかはわからない。橘さんの生首はカクカクと口を開けたり閉じたりして、それを骨ごと三口で平らげる。