帝王の首塚ドットコム

伴美砂都

11/1 むかしばなし

「帝王の首塚ドットコム」を初めて見たのは、小学校五年生のときだった。自分専用のパソコンなんてまだなくて、小学校のコンピューター室の隅。真っ黒な画面に赤い文字が浮かび、右から左に流れた。


<☆彡帝王の首塚ドットコムへようこそ! 

 嫌いなアイツも、強くて歯が立たないやつも、生首にできるよ。☆彡>


 土日に調べ学習の宿題をすると嘘をついて、父親のノートパソコンとスキャナーを一晩借りた。夜、一度寝たふりをしたあと、そうっと起き上がって電源を入れる。パソコンとスキャナーをつなげた上から、毛布をひっかぶった。

 遠足のときの写真を何度も失敗しながらスキャンして、いつも私のことをばかにしてくる、同じクラスの真美ちゃんの生首を作った。満足感があったのは、一瞬だ。<生首が完成しました。>の文字と同時に黒い画面に浮かび上がった真美ちゃんの顔を見るなり、私は怖くなって「×」で画面を閉じてしまった。顔はたしかに真美ちゃんなのにすごく土気色で、首の切れたところには血らしき赤黒い色が滲んでいた。心臓がばくばくして、しばらく冷や汗が止まらなかった。たいへんなことをしてしまった、と思った。

 もう一度ブラウザを開いて、今度は「履歴の消し方」を一生懸命検索して、閲覧履歴をぜんぶ消した。パソコンとスキャナーの電源を震える指で落とすと、ベッドに戻って毛布にくるまった。暗闇に生首がいるような気がして、ぐるぐるにくるまった。眠れないと思っていたが、いつしか眠った。翌朝、父に、なんか夜中ごそごそしてなかったか?、と訊かれ、眠っていたよと嘘をついた。

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