18 ホイップ(睦月&葉月)

 弟の葉月はお菓子作りが好きだ。今日は誰の誕生日でもないのにホールケーキを作っていた。スポンジからしっかり焼く本格派だ。


「兄さん、どうかな?」

「綺麗にできてるな。前よりホイップクリーム使うの上手くなったんじゃないか?」

「だよね。ささっ、食べよう!」


 どうせ俺たち兄弟二人だけで食べるのだ。切り分けることはせず、そのままグサグサとフォークを刺していった。


「うん、このイチゴ美味しいな葉月」

「そうでしょ兄さん。奮発した甲斐があったよ」


 葉月が作るものをどんどん食べさせられるので慣れてはきたが、そこまで甘いものは得意じゃない。ほとんどは葉月に食べさせ、俺はブラックコーヒーで口の中を中和した。


「ねえ兄さん。ホイップ、けっこう余ってるんだよね」

「そうか」

「……脱いでよ」

「はっ?」


 葉月のしたいことがすぐにはわからなかった。彼のニヤニヤとした口元を見ながら考え、ようやく思い当たった。


「おいまさか」

「えへへ。いいでしょ?」

「まあ……うん……」


 俺は裸になってベッドに仰向けに寝転がった。葉月が俺にまたがってきて、ホイップクリームを次々とつけていった。部屋中にふんわりとした香りが漂った。


「ケーキを作るのも楽しいけど、兄さんを飾りつけるのもいいね」

「変態だなぁお前」


 全て使いきり、葉月が舌を伸ばした。


「くふっ……」

「あっ、くすぐったい?」

「うん」


 ちろちろとした舌の動きに、俺は身体をくねらせてしまった。しかし、シーツにつけたくない。すんでのところで我慢した。


「ふっ……あふぅ……」

「あはっ、さすがにここはキツい?」

「ちょっと、しつこいっ……」

「ちゃんと綺麗にしないとね。はぁ、甘いなぁ」


 全部舐め取られる頃には、俺は葉月を欲していた。


「なぁ……もう、我慢できないっ……」

「ふふっ、こんなに大きくしてるもんね。わかってるよ。でも、もうちょっとだけ」


 ホイップクリームをつけていなかったところまで、葉月は舌を押し付けてきた。それは反則じゃないのか。


「おい、葉月っ……」

「兄さんはすぐがっつくから。たまには焦らさせてよ」


 敏感になりきっているところを、指の先でひっかかれた。


「あっ……んっ……!」

「可愛いね。もっと見せて。もっと聞かせて。おれだけの兄さん」


 それからも、葉月は散々俺をいたぶった。ようやく俺の望みが叶えられる頃には、俺は息も絶え絶えで、余裕なんてあるはずもなく、情けない嬌声を葉月に浴びせかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る