19 俳優(北斗&流星)
とある小説を原作とした映画の主演に決まった。
とうとうこの日がきたか、と思うと、込み上げてくるものがある。子役から始めて十五年。長かった。両親は泣いて喜んでくれた。
一人暮らしをしている兄にも、それを報告しに行った。もう知ってるよ、と彼は言い、オレに優しくキスをした。
「良かったな
「でも、オレを一番推してくれているのは兄ちゃんだっていうの、ちゃんとわかってるから……」
「いい子だ。今日はお祝いに尽くしてやるよ」
オレはベッドに仰向けになった。兄はゆっくりと楽しみながらオレのシャツのボタンを外していった。ベルトもするりと取られ、半裸の状態で、兄はオレをくわえた。
「んんっ……あっ……」
オレはどんどん有名になるだろう。今でさえ、SNSでは投稿が相次ぎ、まとめの記事もあがっている。恋人はいるのか調べてみました。そんなやつだ。
「兄ちゃん、もっと、もっとぉ……」
そんなオレが、実の兄しか愛せないと世間が知ったらどうなるだろうか。普通のゴシップでは済まないだろう。しかし、相手が兄だからこそ、こうして家で行為に及んでいれば、絶対にバレないだろうという自信もあった。
「いっちゃう……いっちゃうよぉ……」
主演の映画は恋愛ものだ。キスシーンもある。相手はもちろん女優。兄に散々身体をいじくり回されたオレが、女優にキスするだなんておかしな話だ。
「あっ……」
オレは兄の口の中に注ぎ込んだ。最近忙しくてご無沙汰だったせいか、長く続いた。
「ふぅ……流星、次はどうしてほしい?」
「ぐちゃぐちゃにしてぇ……」
兄はオレの服を全て剥ぎ取った。そして、兄も裸になった。あらわになった腹同士をくっつけて、ねちっこいキスをした。
「兄ちゃん、あったかい」
「流星もな。いくら映画に出ようと、ファンが増えようと、お前の熱を知っているのは兄ちゃんだけだよ」
バレたくない。でも、バレたとしたら。それを思うとぞくぞくする。見出しには何と書かれるのだろうか。どんなコメントがつくのだろうか。そうなれば、オレの役者生命はおしまいだ。
「やらしい流星。兄ちゃんだけが知ってる、秘密の弟」
「もっと言って……」
「兄ちゃんでしか満足できないド淫乱。お前の情けない喘ぎ声を世界中に撒き散らしてやりたいよ」
「ふぁっ……」
兄の指が肌を伝った。腰が浮き、オレはシーツを掴んだ。今夜はどんな悦楽を与えてくれるのだろうか。台本のない情事が始まろうとしている。
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