09 骨折(和志&志郎)

 転んだ拍子に右腕を骨折した。利き腕が使えないと何もできやしない。一人暮らしの俺の家に、二つ下の弟の志郎がやってきてくれて、あれこれ世話を焼いてくれた。

 洗濯物を干したり、皿洗いをしたり。非常に助かった。ところが、三日目の夜になって、その世話というのがエスカレートした。


「兄ちゃん、骨折れてから抜いてないでしょ」

「まあ抜く気にもならんだけだが……左手は使えるし……」

「僕がやったげる」

「いや、いいよ」

「いいから」


 俺はベッドに押し倒された。左手で志郎を押し退けようとしたが、右手で身体を支えられないので上手くいかなかった。


「溜まってるんでしょ? 遠慮せずにさぁ」

「きょ、兄弟でおかしいだろ……そんなこと……」

「どうして? 兄弟は助け合うものじゃない。兄ちゃんが困ってるんなら僕が手伝うのは当然のことだよ」


 するりと下着ごとジャージをおろされた。志郎は何のためらいもなく奥までくわえこんだ。


「ちょっ……志郎……」


 ぴちゃぴちゃと音をたてて志郎が食らいついてくる。左手で頭を掴むが彼は気にしちゃいない。


「ほら、いい感じになってきた」


 経験のない俺の身体は敏感に反応してしまっていた。弟が相手なのに。志郎は手と舌を巧みに使って俺を攻めてきた。

 一体どこで覚えてきたんだ、こんなの。俺が知る限り、志郎はとても純朴な弟だった。猥談なんかもしたことがない。

 志郎は唾液をからめ、さらに強く吸ってきた。


「ダメ、出るってば」


 俺は志郎の髪を引っ張った。彼は唇を離さなかった。我慢できない。俺は弟の口内に全てを注ぎ込んだ。


「あっ……はぁ、はぁ……」

「ふふっ、ごちそうさま」

「志郎、お前なぁ」

「こういうことできる機会、ずっと伺ってた。兄ちゃん、大好きだよ」


 そして、俺の身体に抱きついてきた。俺はおずおずと尋ねた。


「なあ志郎、好きっていうのは……」

「男としてだよ? 僕、兄ちゃんのことずっとやらしー目で見てたもん」

「マジか」


 とんでもないことになった。俺は志郎の顔をまじまじと見た。どうやら冗談ではないらしい。


「兄ちゃんのお世話、これからもしてあげるね。骨折治っても、ずっと」

「いや、そういうわけには……」

「だって好きなんだもん」

「そうか」


 とりあえず俺は問題を先送りにした。今は志郎が居てくれないと困るのは事実だった。

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