07 ピロートーク(大和&俊哉)
アルコールとタバコの充満するワンルーム。俺と兄貴は服を着ることもせず、並んでベッドに横たわっていた。
「
「えっマジで? まあ俺が三十八になったもんな」
「いよいよ四十代だよ、やだよー」
ぐねぐねと兄貴が身体を揺さぶる度、ベッドがきしんだ。下の階に響くからやめてほしいのだが、それ以上のことをさっきまでしていた。兄貴は言った。
「兄弟二人いるから、どっちかだけでも孫の顔見せられると思ってたんだけどな」
「あっ、そういえば、西脇さんとこの長男。俺と同い年。結婚したらしいよ」
「マジで? 初婚?」
「うん。母さんから聞かされてさ。まだ夢持ってるんじゃない? 孫の顔」
「そんなこと言われてもなぁ」
俺は兄貴の無精ヒゲをさすった。ごわごわしていて気持ちいい。口元をぺしぺしと指で叩いてみると、鬱陶しそうに払いのけられた。
「兄貴は出会いとか多いんじゃないの。いい人いないの」
「出会いはあるけど。やっぱり男同士でこうしてグダグダしてる方が楽じゃね?」
「男同士っていうか、兄弟なんだけどね」
最初は酔った勢いだった。口でいかせられるかどうか勝負して、俺が勝ったのだ。もう十年以上前になる。
あれから兄貴のワンルームは何一つ変わらない。変わっていったのは、俺たちの関係だ。次第に快感を追い求めるようになり、兄弟の一線を越えた。
「やっぱり血が繋がってるからかな? 俊哉とするの安心するんだよな。他の男とか恐くて無理」
「うん、俺も。兄貴だからここまでやれるって感じ」
兄貴は俺を抱き寄せた。まだ汗ばんだ肉体がくっつき合い、熱を帯びた。ただ、今日はここまで。俺は言った。
「兄貴、タバコ吸おう」
「おう」
一旦ベッドをおりて、ローテーブルに置いてあるタバコを掴んだ。同じ銘柄だから、どちらの物なのかよくわからないが、別にそれでよかった。紫煙を吐き出して、兄貴は叫んだ。
「あー、セックスの後のタバコ旨い!」
「確かに。仕事終わりとどっちが旨い?」
「断然こっち」
俺たちはまたベッドに戻り、互いにヤニくさい息でキスをした。
「俊哉、オレたちいつまでこうしてるのかな?」
「さあ。どっちかが介護が必要になるまでじゃね?」
「結婚とかいうのはないのかよ」
「そっちこそ」
俺はこれでいい。兄貴を、大和のことを愛しているから。でも、それは決して口に出さない。ただ肉体に溺れてくれていればそれで満足だ。
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