第19話 軋轢
レンゲから映像が、唐突に途切れた。
「レ、レンゲ……? ――どうしたの、レンゲ!?」
Dチューブの真っ黒な画面にいくら叫んでも、返事はない。
必死にコメントを打ち込んでも、返信はない。
妹は……また迷宮のどこかに消えてしまった。
と、
《いったい何があったのですか? レンゲさんたちは今どこに?》
再び映像が流れ、戸惑うエバ・ライスライトの声が流れた。
『エバさん、キタ━(・∀・)━!!!!』
『エバさん戻った!』
『エバさん、マキオたちが大変!』
『マキオたち消えた!』
そういった混乱したコメントも含めて、すべてが気に入らなかった。
すべてが腹立たしかった。
『あんた、なにやってるのよ! あんたがいない間に、妹は魔物に襲われたのよ! 依頼を受けたなら、まずなによりレンゲの安全を最優先にしなさいよ!』
怒りにまかせて、コメントを打ちむ。
依頼を受けたくせに!
助けると言ったくせに!
約束したくせに!
なんでレンゲを連れ帰る前に、そんな女を助けにいくのよ!
『……申しわけありません』
エバが沈鬱な表情で謝る。
そんな女――ケイコは唇を噛みしめて激情に耐えていた。
『レンゲさんのお姉さん、それくらいにしてください。妹さんが心配なのはわかりますが、エバさんもケイコさんも命懸けで救出に当たってくれているのですから』
メンターのひとりが、わたしを諫めた。
『ここであなたが感情のままに発言して反感を買えば、視聴者の協力を得られなくなってしまいます。それはレンゲさんにとってマイナスです』
反感ってなによ!
苦しむレンゲを見て散々楽しんでたくせに、今さらなに良い人ぶってるのよ!
嫌い!
こいつら全員、大嫌い!
こいつらこそ迷宮に閉じ込められて、のたうち回ればいいんだ!
《今は言い争っているときではありません。レンゲさんたちに何があったのか詳しく教えてください》
エバがやるせない表情で顔を振り、視聴者に訊ねた。
『理由はわからない。でもLIVEが再開されたときにはもうキャンプが解かれてて、マキオたちは “
『エバさんの言ったとおりだった。飛び回れる “翼竜” はすげー強敵だった』
『リオとホーイチが魔法を使ってどうにか切り抜けたと思ったんだけど、その直後にカメラがブラックアウトして、以後は状況不明』
《今は天井が見えています。時空の歪みは治まっているので “翼竜” が再び現れても脅威にはならないでしょう》
コメントを確認したエバはそういうと、
この韻律には覚えがある。
出会ったときに、エバがレンゲの安否を確認するために嘆願した加護。
迷宮で行方不明になった人間を念視する、“
異変はその時に起こった!
念視のための瞑想に入ったはずのエバが、不意に走り出したのだ!
ヘッドカメラからの映像が激しくブレる!
《ちょ!? エバ、どうしたのよ!?》
ケイコの慌てる声をマイクが拾うが、エバは構わずに壁に向かって走る!
「なに、どうしたの!? レンゲになにかあったの!?」
『エバさん、どうした!?』
『エバさん、発狂!?』
『壁に激突するぞ!?』
『No,Eva!』
コメント欄に混乱が拡がるが、もちろんエバには届かない!
ブレブレの
「ほ、本当に気が狂ったの!?」
(頭を打ち付けて死ぬ気!?)
だがエバが壁に打ち付けたのは、自分の頭ではなかった!
打ち付けるように――叩き付けるように、
直後に画面に割り込んでくる、もうひとつ
《みんな、逃げて! 地上に出たら入口をすぐに封鎖して! この迷宮はもう駄目! 速くしないとみんな――みんな “
酷く不安定な、ブロックノイズだらけレンゲが、カメラに向かって泣きながら訴えた!
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ご視聴、ありがとうございました
第一回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817139558675399757
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エバさんが大活躍する本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742
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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!
エバさんの生の声を聞いてみよう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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