化物Ⅳ:夜坂蓮「うちの馬鹿がご迷惑をおかけしました」

「おいバカ魔王」

「え!?」

 突然の馬鹿呼ばわりに驚く魔王――いや、ヴァルク・ディアボロ。

「お前ん所のペトラさんが迎えに来たぞ。」

「え、マジで!?来たの!?」

 魔王は歓喜した。

 ぶん殴ってやろうか。

「だからさっさと説得してくれ、お前を捜すために馬鹿みたいに暴れてるんだよ。」

 まだ、被害は出てないがな。

「え?あ、ああ……」

 何で困惑してんだよ。

 魔王だったときとは違うキャラクターなのか?

「とりあえずさっさと来い」




 おいおいおいおい。

 何で飼い慣らされてるんだよ、魔獣使い。

「なにこれ楽しい!!」

「だろ、あやとりって言うんだがな」

 しかもあやとりに釣られてんのかよ。

「おい魔王、あいつがお前の右腕だった魔獣使いのペトラ・ルージュさんでいいんだよな?あやとりに夢中になってるあの少女がだよな。間違ってないよな?」

「……間違いはないよ。間違っていて欲しいけど。」

 あっちの世界の魔王軍には馬鹿しかいないのか?さぞ勇者は倒しやすかっただろう。まあ、その勇者というのは俺の妹なのだが。

「あ!魔王様――!!」

 ついに気づかれちまった。

 というか格好変わってるんだろ?なんで分かるんだよ。

「魔王様の魔力を感じました、どこですか!?」

 溢れ出る魔力を持っておきながら俺の妹にすら敵わないのかよ。

 夜坂転が最強なのかヴァルク・ディアボロが最弱なのか、もうわかんねえな。

「ペトラー!ここだよー!」

「は!?」

 何で位置を明かしやがった。

「魔王様――!!」

「ガルゥ――!!!」

 とんでもない真っ黒の化物が先に魔王を轢いた。

 えーと、多分犬か?




 結局、あのあと全員解散し、俺と魔王軍二人だけが学校に残っている状態となった。

 さてと、この魔王軍どもと何を話すべきか。

 例えばこんな話か?

「…あの、ペトラさん?」

「はい?」

「夜坂転、って知ってます?」

「テン……ああ、勇者か。ってか、何で知ってるんの?」

「あいつの兄、俺。」

 因縁の相手の兄に連れて来られた魔王。

 うん、この会話は死ぬな。

 ならこんな話か?

「実は聖女ちゃんが家に居ましてですね。」

 いや、一言で死ぬだろ。

 かといって何も話さないのも気まずいよな。


「あの」

「じゃあ私も住みます!!」

 話がすっ飛んだ!!

「勇者と住むことになるが、いいのか?」

「私と魔王様でぶっ飛ばすために私も住むんですよ!!」

 ………。

 勝てないと思うぞ。

 まず5人対2人、人数差で負けている。三倍弱の差がついてる。

 そして元勇者パーティが二人もいるんだ、勇者と聖女。加えて勇者の弟子、獣少女、機械少女も付いてくるのだから、まあ負けが確定している。

 諦めるのが賢明だと思うぜ。

「まあ、家を壊さないなら何でもいいよ。」

 よって、俺の広ーい家にまた一人、新しい同居人が増えたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る