化物Ⅲ:語世継「襲撃」

「突然ですが、問題です!!環楓くんは生きているでしょうか、死んでいるでしょうか!」

 いや、死んでたらまずいだろ!というツッコミが飛び交った。

「物騒なクイズ出すな!!生きてるわ!!」

「正解は生きている、でした!」

 冒頭にこんな問題を出したのは、前回の引きが死んでるやつのそれだったからだ。逆にあれで生きている展開の方が珍しいだろう。

 「え、死んだ!?」と思ってほしかったのである。

 もちろん生徒たちにではなく、だが。

「いやまあ、死にかけてはいたけどさ……」

「死にかけてんじゃん!!」

 驚いた、吸ちゃんが真っ先に叫ぶとは思っていなかったのだから。

 あれだろうか、あの件で楓くんに好意を寄せるようになったのだろうか。

 だったらヒロイン枠だな。吸血鬼ヒロイン、おお、良いじゃないか。

「まあ、言っても化け物に襲われたってだけなんだけどさ……」

「化け物!?」

 今度は蓮くんだ。

「どうした夜坂」

「い、いやぁ……何でもない。」

 何でもなくない顔をして言う。

 心当たりがありそうな顔だ。化物について知っているのだろうか。

「マジでどしたの?」

 1組の視線が夜坂蓮に集中する。とその時……


――どーん。


 いや、どーんじゃないな。


――どかーん。ばこーん。どーん。


 と言った感じか。

 何の音かは分からなかった。が、その音の正体は1秒も経たないうちにこの施設内の全員に知れ渡ることとなる。

 校舎が破壊されたのである。それはもうまっさらになった。


「「「「「「「「「「 な ん で !? 」」」」」」」」」」


 この学校にいた全員が思ったし叫んだだろう。

 まっさらもまっさら、学校もどきのこの校舎が消えたからである。

「死因落下死ってことある――!?」

 ゲームじゃねえんだから――!!というような声が聞こえた。

 が、流石にそんなことはなかったらしい。蓮くんの能力によるものだろうか、全員助かってる。

 とんでもないご都合能力である、そのうち弱体化されそうだ。




「助かった……」

「皆無事か!?」

「いや、無事ではないが……」

 何事もなくはない。しかしまあ、重大な傷を負ったわけでもないのでセーフだろう。

「おいこれどういう状況だ!!」

「知らねえよ!」

 しかし、元凶のような奴はいる。

 それがそう――

「お前ら、手伝ってほしいのだが。」

 化物に乗った少女であった。

 ……いや、誰が手伝うか!!

「おい、お前は誰だ!?」

 化物のサイズはかなり大きく、かなり頭を上げないと姿が見えない。よく見ると角が生えてる……気がする。

「ああ、良いだろう。教えてやる。私の名はペトラ、ペトラ・ルージュだ。」

「名前可愛っ」

「おい渡、確かに可愛居けどそんなこと言っちゃ駄目だろ。めっちゃ強キャラ感醸し出してるんだから。」

 その台詞はその台詞でなかなか喧嘩売ってると思うよ、楓くん。

「ってかあれだよあれ、昨日襲われたっていう化物。」

 あの真っ黒なよく分からない存在に…かぁ。

「え、お前あれに襲われたのかよ!?あ、あれってあの……あれだぜ!?例の化物が出るっていう噂のあの化物だよ!!」

 ほう?

 じゃあ最近有名なあの化物の話って事実だったのか……え、ならこのペトラさんが元凶で確定じゃん。

「………」

「おい蓮、どうした」

「私の話聞いてるか!?」

 ああ、うん。ペトラさんが可哀想になってる。

 まあここに29人いるからな……うん。

「よし、何人か観戦者に回ってくれ。うん。」




 スタートメンバー発表!!

 1番、環楓!2番、夜坂蓮!3番、間四麻!4番、思栖軽香!5番、焔萌歌!6番、凍浜結!7番、僕!

 剣道部率高ッ!!

 それにスタートメンバーなのに7人しかいない!けど逆に言えば7人もいるじゃん!もっとまとめろよ!

「まあいいや……」

「準備はできた、で良いかな?」

「うっす」

 楓くん、ずっと軽いよ。まだ13時だし、もうちょっと何か…あるだろ。

 そして蓮くんはずっと顔を曇らせてるし。

「単刀直入に言おう、私はある人を探している。協力しろ。」

「高圧的だな…」

 思栖先輩が言う。

「あんた、一体何なんだ!?」

「何なんだ、とは?」

「………」

 蓮くんがさらに顔を曇らせる。もはや曇りすぎて雨降っているんじゃないだろうか。

 それに対して楓くんは、

「…お前、本当にどうした?」

「いや、ちょっと、ちょーっと心当たりが……あってだな。いや本当、本当に、先にいうべきだったんだろうが……」

「何だよ、心当たりがあるなら言いなさいよ。」

「ちょっと黙っててくれ四麻」

 少し落ち着きたいから深呼吸を…と、蓮くんは大きく呼吸した。

「で、蓮さんどうしたんですか?」

「蓮でいいよ。夜坂でもいいし。」

「じゃあレンで。」

「変わってねえ!?」

 三年生二人からは『レン』と呼ばれることになったらしい。いや、音全く変わってないじゃん。

「…まあいいや、あいつが捜してるの…多分俺の知ってるのやつだと思うんだわ」

「お前、居場所を知っているんだな。」

「知ってるも何もなぁ……あと俺、お前の天敵も知ってる。」

「お前なんでも知ってるな。」

 じゃあ何でもは知らないのか、知ってることだけなのか。

 大事なところで物語ネタを挟まないでくれ、楓くん。

「……あいつの捜してるやつ、俺の家にいるわ。」

「さっさと連れてこい!!」

 四麻さんが蓮くんをぶん殴った。

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